最近ではあまり耳にすることがありませんが、「対人関係の義理を大切にして、おろそかにしない人」のことを「義理堅い人」と表現します。誠実な人柄を評価した「ほめ言葉」と言っていいでしょう。今回は「義理堅い」の意味や使い方のわかる例文、「義理堅い人」の特徴について解説します。

【目次】

「義理と人情」と対で用いられることも。
「義理と人情」と対で用いられることも。

【「義理堅い」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「義理堅い」は「(ぎりがた)い」と読みます。

■意味

「義理堅い」は「対人関係の義理を大切にして、おろそかにしない」こと。では「対人関係の義理」とはなんでしょう?『デジタル大辞泉』によれば、「義理」とは「人として守るべき正しい道」や「社会生活を営む上で、立場上、また道義として、他人に対して務めたり報いたりしなければならないこと」を表す言葉です。つまり「対人関係の義理」とは、「社会的、道義的に、他人に対して果たさなくてはいけない役割やルール」を意味しています。少しわかりにくいですね! 理解を深めるために、「義理堅い人」とはどんな人なのか、具体的な特徴を見ていきましょう。


【「義理堅い人」の特徴とデメリット】

■「特徴」は?

・約束は必ず守る 

・お礼や季節の挨拶を欠かさない

・礼儀正しい

・正直である

・なにごとに対しても真摯に取り組む

「義理堅い人」をひと言で表現すると、「まじめな人」と言うことができそうです。例えば、「約束を守る」「何かをしてもらったらお礼を言う」「挨拶をする」といった社会的な慣習には罰則などありません。あくまで道義的な観点から、人は人に対して誠実であろうとするものです。つまり、「社会的、道義的に、自分が人に対して果たさなくてはいけない役割やルール」を誠実に果たそうとする気持ちが強い人のことを「義理堅い人」と言うのです。

■「デメリット」

義理堅くまじめなのはよいことですが、度がすぎると「デメリット」も生じるようです。

・融通が利かない

・口うるさい

・自分に厳しいぶん、人にも厳しい

・人の目に自分がどう映っているのかが気になる

・ストレスをためやすい


【「人情深い」「律儀」との違い】

では、「義理堅い」と混同されることもある「人情深い」と「律儀」についてご説明します。

■「人情深い」との違い  

「義理と人情の板挟み」という言葉をご存じですか? 「義理」が私たちを拘束する「一種の社会規範」であるのに対し、「人情」は「人間の情欲や人間らしい思いやりの情」を表します。少々乱暴に言えば、「義理は社会的なルール(建前)」であり、「人情」は「個人的な感情(本音)」です。例えば、複数の会社に要請したコンペがあったとしましょう。クライアントは提案内容や予算などを踏まえていちばん優れた発注先を選ぶのが筋(建前)ですが、長い付き合いのある取引先に任せたい気持ち(本音)もあるのが世の常。「建前」と「本音」は対立や葛藤を生むものです。人形浄瑠璃や歌舞伎で演じられる「心中物(しんじゅうもの)」の多くは「義理と人情の板挟み」がテーマです。

つまり、「義理堅い」が「道義的にすべきことをする」ことであるのに対し、「人情深い」は「思いやりの心や人間的な感情から大切な人や物のためになるようにする」ことです。このように「義理」と「人情」は対義語のようにも使われますが、「義理人情」というひとつの言葉として用いられた場合は「思いやりの心や人間らしい感情から情けをかけること」「道義的な立場から相手を思いやること」といった意味で使われますよ。

■「律儀」との違い

「律儀(りちぎ)」は「非常に義理堅いこと。実直なこと」「馬鹿正直なこと」を表す言葉です。「義理堅い」とほぼ同じ意味合いの言葉ですが、義理堅さの程度では「律儀」が上と言えます。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「彼は熟練した職人らしく、義理堅い昔気質の人だった」

■2:「直筆の礼状を送るなど、義理堅い彼女は、役員たちからの信頼も厚かった」

■3:「義理堅い人と付き合うには、こちらも相応の気配りが欠かせない」

■4:「義理堅いということは、彼の長所のひとつと言っていいだろう」


【「類語」「言い換え」表現】

■律儀

■謹厳(きんげん) 

■実直(じっちょく) 

■実体(じってい)

「律儀」も「謹厳」「実直」も「正直でまじめなこと」という意味の言葉です。使い分けとしては、「律儀」は、「義理堅い点でまじめ」。「謹厳」は、非常にまじめで軽い浮わついたことは好まないこと。「実直」は、「誠実でまじめ」。「実体」は「正直でまじめなこと」という意味ですが、今ではあまり使われていませんね。


【「対義語」は?】

■不義理

■不真面目

■恩知らず

「不義理」とは「義理を欠くこと」。「不まじめ」は「まじめでないこと」。どちらも「するべきことをする」まじめな「義理堅い」とは正反対の意味の言葉です。ただし、「不義理」は日常会話で用いられることは少なく、主に書き言葉です。また「恩知らず」は「受けた恩に感謝せず、報いようともしないこと。また、そのような人」を意味する言葉です。

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「義理堅い」を「昔気質」な美徳と捉えることは簡単ですが、自分の役割やルールを誠実に守ろうとする姿勢は、いつの時代にも周囲からの信頼を集めるものです。日本の文化や習慣から生まれた言葉でもありますから、“大人の語彙力”として、しっかり押さえておきたいものですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :