「晩節を汚す」という言葉をご存じですか? 「人生の終盤、自らの過ちによって過去の偉業を台無しにすること」という意味の言葉です。「老害」と混同されがちですが、少々意味は違います。今回は「晩節を汚す」について、正確な意味や使い方、対義語や英語表現まで解説します。
【目次】
【「晩節を汚す」を正しく理解するための「基礎知識」】
■読み方
「晩節を汚す」は「ばんせつをけがす」と読みます。
■意味
「晩節を汚す」の「晩節」は「人生の終わりのころ」「晩年」という意味の言葉です。「汚(けが)す」には「大切なもの、清らかなものを汚す」「恥ずべき行為などをして名誉・誇りを傷つける」といった意味があります。「晩節を汚す」とは「晩年になって、それまで築いてきた名誉や誇りなど、大切なものを傷つけてしまうこと」、つまり「人生の終盤で、過去の偉業を台無しにすること」を意味する言葉です。
【「老害」との違いは?】
「晩節を汚す」と「老害」の違いはなんでしょうか。「老害」とは「老齢による弊害」を指す言葉です。もともとは、企業や政治の中心人物たちが高齢化しても実権を握り続ける状態を指し、若返りの必要性を込めて用いられました。現在では単に「老年期に問題を起こしてしまう人」を揶揄する際に「老害」と言います。
「晩節を汚す」の「晩節」は「晩年」という意味のほかに「季節の終わりの時期」という意味もあり、老年期含め年齢に関係なく「キャリアの終わりの時期」や「物事の終わりの時期」という意味もあります。そのため、若くして引退するアスリートについても、引退間際の時期を「晩節」というのです。また、「晩節を汚す」は「過去の偉業を台無しにする言動で評判を落とすこと」ですから、過去に偉業がない人、地位や名誉をももたない人については「晩節を汚す」とは言いません。この場合は「老害」が用いられます。
【「使い方」がわかる「例文」5選】
■1:「不幸にも晩節を汚してしまう成功者が増えたように感じるのは、寿命が延びたこととも関係しているのだろう」
■2:「一流のアスリートが早くに引退してしまうのは、自らの晩節を汚すような戦歴を残したくないという気持ちもあるからだろう」
■3:「晩節を汚した常務は、退職後は寂しい人生を送ったと聞く」
■4:「絶大な支持を得て当選した知事は、贈収賄によって晩節を汚した」
■5:「彼が晩節を汚してしまった要因は、時代の変化についていけなかったことも大きかったと思われる」
【「類語」「言い換え」表現】
「晩節を汚す」は人生をはじめ、「キャリアやものごとの終わりの時期に評判を落とすこと」です。「類語」をいくつかご紹介しましょう。
■凋落(ちょうらく)
■没落
「凋落」は「落ちぶれ衰えること」。「没落」は「衰えて滅びること」。
■地に落ちる
「衰え果てる」こと「盛んだった権威や評判が衰えること」を意味し、「名声が地に落ちる」のように使われます。
■落ちぶれる
「落ちぶれる」は、地位や財産を失った状態についていう言葉です。
【「対義語」は?】
「晩節を汚す」と反対の意味の言葉にはどんなものがあるでしょうか。
■晩節を持す/晩節を全うする
年老いてからも身を正しく持して、節操を守ることを言います。ここでの節操とは、自分の信念や主義などのことです。
■有終の美を飾る
物事をやり通し、最後まで立派に仕上げることを「有終の美」と言います。
■終わりを全うする
「最後までやり遂げる」ことを「終わりを全うする」と言います。
【「英語」で言うと?】
英語で「晩節」は[one's later years][one's twilight years]。「汚す」は「名声・名誉などを汚す、傷つける」という意味をもつ[tarnish]で表現できます。つまり「晩節を汚す」は[tarnish a one's later years]です。
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自分の人生の幕引きについて、晩節を汚し失望のなかで迎える最期…というストーリーを望む人はいないのでは? とはいえ、「晩節を汚す」ことができるのは、それなりの成功を収めた証と言うこともできるのですから、単なる「老害」と非難されるよりはマシなのかもしれません。手にした地位や名誉の有無はともかく、「終わり良ければすべてよし」な人生にしたいものです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『故事成語を知る辞典』(小学館)/『角川類語新辞典』(角川書店) :