【Art】一瞬の光の表情、風の動き、時間の移り変わりを写し取る。巨匠モネの「連作」の数々で、世界の美しさにひたる

60点以上に及ぶ展示作品のすべてがモネ作品という必見の展覧会。一点でも魅了される名品が国内外から集結し、ずらりと並びます。有名すぎて知っているつもりの巨匠の、真のスゴさにひれ伏すこと間違いなし!

今回は2023年10月20日(金)より「上野の森美術館」で開催される、クロード・モネの展覧会『モネ 連作の情景』にフィーチャーし、美術ライターの浦島茂世さんに見どころをナビゲートいただきました。

浦島茂世さん
美術ライター、All About「美術館」ガイド
古今東西のアートに幅広い見識をもつ。最新刊は街角アートの歴史と魅力を紹介した『パブリックアート入門 タダで観られるけど、タダならぬアートの世界』(イースト・プレス)。

【今月のおススメ】クロード・モネ 《ウォータールー橋、曇り》

クロード・モネ 《ウォータールー橋、曇り》
クロード・モネ 《ウォータールー橋、曇り》1900年 油彩・カンヴァス 65.0×100.0cm ヒュー・レイン・ギャラリー Collection & image (C)Hugh Lane Gallery, Dublin

クロード・モネ 《ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ》

クロード・モネ 《ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ》1904年 油彩・カンヴァス 65.7×101.6cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー(C)National Gallery of Art, Washington. Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon. 1983.1.27
クロード・モネ 《ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ》1904年 油彩・カンヴァス 65.7×101.6cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー(C)National Gallery of Art, Washington. Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellon. 1983.1.27

ロンドンのテムズ川にかかるウォータールー橋を描いたふたつの作品。上は1900年の曇りのある日、下は1904年の夕暮れどきです。このほかにも日没時、霧や朝靄の中など、モネはこの橋のさまざまな表情を描いています。代表作としてよく知られる《積みわら》や《睡蓮》など、同じ場所やテーマを異なる天候、時間、季節を通して描き留めた「連作」は、モネならではの表現手法。こうして並べてみると、その偏執的ともいえる(失礼!)粘り強さに驚嘆します。普通の人なら見過ごしてしまうような、ほんの少しの光や影の変化をもカンヴァスにすべて写し取ろうとする…。それを生涯続けたのですから、本当にすごい。今回の展覧会では、そんなモネの連作絵画に焦点を当てていきます。

加えて、展示される作品が全部モネ、というのも見どころです。印象派以前の人物画や風景画は日本国内ではあまり観る機会がありませんし、晩年、眼を患ってからの、激しい筆致による抽象画を思わせる表現も刺激的です。有名すぎてなんとなく知っているつもりになっているモネですが、改めてその魅力を知ることができるはず。

印象派とか連作といった美術のキーワードで語られがちなモネ。しかし、その作品はどれも単純に「きれい」なんですよね。西洋絵画を鑑賞する際に求められる歴史的、宗教的な知識がなくても、ただ一枚の絵を観て、「きれいだな」と思える。それが、特に日本での人気の大きな理由だと思います。わかりやすく、どこまでも深い。モネの世界を素直に堪能したいですね(談)。


【Information】モネ 連作の情景

上野の森美術館
2023年10月20日(金)〜2024年1月28日(日)
問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト:www.monet2023.jp

1874年の第1回印象派展開催から150年の節目を迎えることを記念して開催。海外30館以上を含む、国内外40館以上から代表作が集結。日本初公開となる人物画の大作《昼食》や、明るい風景画など印象派以前の作品から、《積みわら》《ウォータールー橋》《睡蓮》などの連作まで、モネの生涯を60点以上の作品と共にたどる。2024年2月10日〜5月6日には大阪中之島美術館(大阪)へ巡回予定。東京と大阪では一部展示内容が異なる。

取材・文 :
剣持亜弥(HATSU)
構成 :
正木 爽・宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)
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