「恩恵を享受する」というフレーズを見聞きすることがあると思いますが、詳細な意味をご存知ですか? 自分で使ったことはありますか? 今回はこの「享受」という言葉について確認していきましょう。
【目次】
【「享受」とは?「読み方」や「意味」など基礎知識 】
■読み方
「享受」は「きょうじゅ」と読みます。
■意味
「享受」は、「受け入れて自分のものとすること。受け入れて、味わい楽しむ」という意味です。
■由来
「享」という漢字には、「献上する/備える/祀る/もてなす」を示す「すすめる」と、「受け取る」という意味があります。「享」という漢字はそもそも「亯(きょう)」から派生したものといわれています。「亯」には「神に供え物を差し上げる、献上する」などの意味があります。したがって「享受」には、「ありがたく受け取る」「ありがたく楽しむ」というニュアンスが含まれるため、スピーチやかしこまった文書などで使用されることが多いのでしょう。
■使い方
「享受」は名詞なので、「自由を享受する」や「恩恵を享受している」というように使います。
【使い方がよくわかる「例文」6選】
■1:「インターネットの最大の功績は、誰もが情報を享受できることだ」
■2:「作家が表現したかったことを享受できる、素晴らしい展覧会だった」
■3:「学校、病院、公園や運動施設に加え、複合商業施設を備えたニュータウンでは、快適な社会生活を享受することができます」
■4:「安全・安心な生活を享受するのは国民の権利だ」
■5:「田舎暮らしは自然の恩恵を享受できるが、近所づきあいや地域社会とのかかわりなどを苦手と感じる人も少なくない」
■6:「特権を享受することに慣れてしまうと、一般市民との意識に格差が生じるてしまう」
【「享受させていただく」「ご享受ください」は誤用です!】
「本日はさまざまな催しを享受させていただきました」や「ご享受いただけますと幸いです」は、一見とても丁寧な文章に見えますが、どちらも大間違い!
「享受」という言葉自体かしこまったニュアンスがあるので、つい「享受させていただきます」と言いたくなりますよね。しかし、「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語です。「させてもらう」とは相手の許可を得て行う言葉なので、「自分の意思で受け取り楽しむ」ことを表す「享受」 とは不適合なのです。丁寧に言いたいのなら「享受いたします」が正解です。また、「どうぞ楽しんでください」という思いを、丁寧に表すつもりで「ご享受ください」や「ご享受いただけますと~」とするのも誤用なので気をつけて。
【「享受」の「類語」「対義語」】
「享受」はただ受け取るだけではなく、それを楽しんだり役立てたりすること。類語や対義語にも、そのようなニュアンスが含まれています。
■類語
・拝受(はいじゅ):受けることをへりくだっていう語。つつしんで受けること。ありがたく頂戴すること。「お手紙拝受いたしました」
・享楽(きょうらく):楽しみを受ける。楽しむ。「人生を享楽する」「享楽主義」
・逸楽(いつらく):気持ちよく楽しいこと、また楽しみを味わうこと。「青春を謳歌する」
■対義語
・提供(ていきょう):金品や技能などを相手に役立ててもらうために差し出すこと。「場所を提供する」「アイディアを提供する」
【「英語」で言うとどうなる?】
「享楽」に当たる英単語は[enjoyment]、「享楽する」は[enjoy]となります。
また、感覚的な快楽、特に美食を享楽することは[epicureanism]と言います。「グルメ」は和製英語なので、[epicureanism]を覚えておくといいですよ。
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今回の「享受」は、「精神的や物質的な利益を受けて、それを味わい楽しむこと」を表す際に使う言葉でした。このように日常会話ではあまり使うことがない言葉も、しっかり身に着けておきたいですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『新選漢和辞典 Web版』(小学館)/『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書)/ 『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :