ビジネスシーンでは、挨拶状や案内状など特別なお知らせを除き、手紙を出す機会は少なくなりました。日常の連絡も電話でのやり取りが減り、連絡ツールの主役はメールになりつつあります。そして、ビジネスメールの文章は「簡潔にわかりやすく」が基本。しかし、メールにも「手紙の基本」を取り入れることで、味気ないビジネスメールを知的で印象的なものにすることが可能です。今回は日常のメールやフォーマルなシーンまで、「12月」にふさわしい「時候の挨拶」や「結びの挨拶」の例文やポイントを解説します。
【目次】
- 「時候の挨拶」を正しく理解するための「基礎知識」
- 「カジュアル」に使える12月の挨拶「例文」5選
- フォーマルな文章では「時候の挨拶」の「基本」を押さえて
- 「フォーマル」な文章で使える12月の挨拶「例文」5選
- 12月の「結びの挨拶(末文)」ポイントと「例文」7選
- 12月の「季語」一覧
【「時候の挨拶」を正しく理解するための「基礎知識」】
日本の手紙には、文頭に「時候の挨拶」を添える習慣があります。季節感を共有することで、自分と相手の「距離」を縮めたいという気持ちが込められていたのでしょう。ビジネスメールの文章は、簡潔にわかりやすく、が基本ですが、メールにも季節の言葉を取り入れることで、事務的になりがちなビジネスメールを知的で印象的なものにすることが可能です。まずは手紙の基本をおさらいしておきましょう。
■手紙の基本構成は「前文」+「主文」+「末文」+「後付」
手紙の基本的な構成には、先人たちが完成させたコミュニケーションの極意が詰まっています。
まず「前文」では「頭語」→「時候の挨拶」で季節の移ろいに思いを馳せつつ相手の近況を伺い 、「主文」で要件を伝え 、「末文」で相手の健康を願って心地よい読後感へ導く、というのが基本の流れ。末尾に「日付や差出人などの「後付」をつけたら完成です。
■「時候の挨拶」とは
「時候」とは「四季折々の気候」や「その時々の陽気」を表す言葉です。つまり「時候の挨拶」は、手紙やメールを出す季節や天候に合わせたフレーズのこと。1月から12月まで、それぞれの季節や天候を表すのにふさわしい言葉を選ぶことで、相手と季節感を共有し、一方的になりがちなメールの文章に温かみを添えることができるのです。
【「カジュアル」に使える12月の挨拶「例文」5選】
季節の変わり目など、日常的にやり取りしているメールの文頭に、さり気なく季節(時候)の挨拶を添えてみまてはいかがですか。12月といえば、寒さが厳しさを増し、年の暮れを迎え、誰もが慌ただしさを感じる季節。最大のイベントはクリスマスですね。
■1:「何かと慌ただしい師走に入り、お忙しくお過ごしのことと存じます」
■2:「1か月後には新年を迎えると思うと、心急かされるこの頃です」
■3:「師走とは思えないほど、穏やかな天候が続いております」
■4:「赤いポインセチアに目が留まる季節となりました。街にもクリスマスの華やいだ雰囲気が感じられますね」
■5:「○日後の仕事納めを控え、いよいよ年の暮れを間近に感じております」
【フォーマルな文章では「時候の挨拶」の「基本」を押さえて】
プレスリリースや顧客向けのDM(ダイレクトメール)、ビジネスパーティでの挨拶文などのフォーマルな文章では、その季節に適した言葉を取り入れ、「時候の挨拶」にすることが大切です。
■12月初旬の「時候の挨拶」キーワード
・霜寒…下を見る寒さ
・師走…気ぜわしい12月のこと
・初冬…24節気の立冬から小雪まで
■12月中旬の「時候の挨拶」キーワード
・初雪…その冬に初めて降る雪
・新雪…新しく降った雪
・寒冷…冷ややかで冷たい気候
■12月下旬の「時候の挨拶」キーワード
・歳末…年の暮れ
・歳晩…その年の終わり
・極月…年の極まる月。年末。
【「フォーマル」な文章で使える12月の挨拶「例文」6選】
正式な文章における「時候の挨拶」となるひな型は、前述した「時候の挨拶キーワード」に、「候」あるいは「みぎり」あるいは「折」をつけた形となります。かしこまった漢語調の時候の挨拶を使うのが一般的です。
■1:「霜寒の候、貴社におかれましてはますますご清栄のことと慶び申し上げます」
■2:「師走のみぎり、平素は格別のご高配をいただき厚く御礼申し上げます」
■3:「初冬の折、ますますのご盛栄のこととお慶び申し上げます。」
■4:「寒冷の候、○○さまにおかれましては、ますますご清祥にお過ごしのことと存じます」
■5:「歳末の折、ますますご多忙の時期に恐れ入ります」
■6:「歳晩のみぎり、ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」
【12月の「結びの挨拶(末文)」ポイントと「例文」7選】
メールや手紙、プレスリーリース等自体の用件は、依頼であったお知らせであったり、あるいはお礼であったりとさまざまです。いずれの案件であっても、最後には相手の健康や繁栄を祈り、心地よい読後感を残すことができるような「結びの挨拶」を選ぶことがポイントです。
■12月「前半」の「結びの言葉」
・「寒さ厳しい折から、健康に気を付けてお過ごしください」
・「まもなく忘年会シーズンとなりますね。ご無理なさらぬようお過ごしください」
・「寒い日が続きますが、くれぐれもお体にはご留意くださいませ」
■12月「後半」の「結びの言葉」
・「寒さはこれからが本番とも申します。お体お大事によい新年をお迎えください」
・「皆さま、よき春を迎えられますようお祈り申し上げます」
・「末筆ながら、○○さまの輝かしいご越年をお祈り申し上げます」
・「年末に向けご多忙のことと存じますが、どうぞご自愛くださいませ」
【12月の「季語」一覧】
「季語」とは「俳句で、季節と結びついて、その季節を表すと定められている語」のこと。「季語」を知っておくことで、相手に違和感を与えることなく、季節感を共有することができますよ。誰でもわかる季語を用いることをおすすめします。
■花や動植物・食べ物、服装
・枯れ野 ・冬枯れ色 ・セイヨウヒイラギ ・ポインセチア ・シクラメン ・丹頂鶴 ・白鳥
・年越し蕎麦 ・クリスマスケーキ ・鍋料理 ・熱燗 ・コート ・ネギ ・たき火 ・囲炉裏
・スイセン ・パンジー ・ツバキ ・サザンカ
■風物詩やイベント
・ゆず湯 ・冬ごもり ・歳の市 ・すす払い ・樹氷 ・ボーナス ・年忘れ ・歳暮 ・共同募金
・クリスマス ・年越し
■節気・天候
・大雪 ・冬至 ・冬晴れ ・冬将軍 ・臘数 ・寒冷 ・初雪 ・初氷
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「時候の挨拶」は、「暑い」「寒い」「(梅雨で)鬱陶しい」など、マイナス面を強調した言葉になってしまいがち。でも、その季節ならではの天候や空気感を、楽しんだり味わったりする言葉を盛り込めると素敵ですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店) /『大切な人へ贈る 手紙に添える季節の言葉365日』(朝日新聞出版) /『すぐに使える! 教養の「語彙力」3240」(西東社) :