「初詣」は、もともと正月元日の早朝、神社や寺に参詣することを指す言葉でしたが、現在では年の初めの参拝を広く表す言葉として定着しています。コロナ禍を経て、約3年振りに行動制限のない年末年始を迎えた2023年は、全国で多くの人が「初詣」に出かけました。そして人気の初詣スポットとしても有名な明治神宮には、例年正月3が日に300万人以上の人が初詣に訪れるそうです。今回は「初詣」の詳しい意味と参拝の作法、そして「初詣」にふさわしい日、避けるべき日を解説します。

【目次】

2024年の元旦は初詣するのに最高に縁起のよい日です。
2024年の元旦は初詣するのに最高に縁起のよい日です。

【「初詣」を正しく理解するための「基礎知識」】

■「意味」

「初詣」とは、「正月元日の早朝、社寺に参詣する習俗」を意味する言葉です。現在では「年が明けてから寺社に詣でること」を広く表しています。

■「何」をする?

初詣は、社寺の神仏に旧年の感謝を捧げ、新年の無病息災や家内安全などを祈ります。「初詣」という言葉からイメージするのは神社への参拝ですが、お寺でも構いません。日本古来の神道には「氏神さま」という考え方があり、初詣は地域の神さまにお参りするのがよいとされています。また、お寺の場合は、自分の干支の守護本尊が祀(まつ)られているお寺は特に縁起がよいそうですよ。

■「由来」と「起源」  

日本には古くから、大晦日の夜から元日の朝にかけて、家長が一族繁栄を祈願し、氏神の社にこもったり、社前で焚火(たきび)をして徹夜する「年蘢(としごも)り」と呼ばれた風習がありました。この「年蘢り」が、「初詣」の「起源」とされています。江戸時代には、除夜の鐘を聴いてすぐ参詣に行くのを「二年参り」と呼ぶようになりました。やがて「新年は午前零時にはじまる」という考えが常識化するようになると、元日早朝の社寺詣が優勢となり、現在の「初詣」が一般的になったようです。


【「年末詣」「初参り」との違い】

■「年末詣」とは?

前述の通り、「初詣」の「起源」は「年蘢り」と呼ばれた習慣です。「年籠り」は大晦日の晩から元日の朝にかけて行われた行事ですが、これは当時の庶民の中には、新年の出発を大晦日の夜とする感覚があったため。やがて、時代の変遷とともに「年蘢り」は12月31日の夜に行う「除夜詣」と、元日朝に行う「元日詣」に分かれていきました。その結果、大晦日に行う参拝は「年末詣」に、元日の朝に行う参拝は「初詣」と呼ばれるようになったとされています。

現在では「年末詣」は「初詣」ほど知られていませんが、「年末詣」がよいとされているのには、いくつか理由があります。
・12月13日の「煤払い(神社の大掃除)」以降は、1年の内で神社がいちばんきれいな時期にあたる
・毎年12月20日から22日に当たる「冬至」は「新しい年の始まり」とされ、新たに物事を始めるのに最適
・「年越しの大祓式(おおはらえしき)」と呼ばれる心身を清めるための神事は12月31日に行われることが多い
・「初詣」よりも参拝者が少ないため、神さま仏様に自分の声を届けやすいとされている

これらの理由から、「年末詣」のオススメは12月14日以降、特によいのは12月23日から31日まで、ベストは大晦日の夕方とされています。「年末詣」では、1年間を無事に過ごせたこと、あるいは願いが叶ったことへの感謝をお伝えする「お礼参り」と、新年の祈願を一緒にすることができます。あるいは、大晦日までに「年末詣」を行い、年が明けたら「初詣」をしてもよいそうです。

■「初参り」とは

「初参り」は「初詣」と同じ意味です。


【お賽銭は?何をする?初詣のマナー】

神社をお参りする際の作法をご存じですか? 「初詣に」に限らず、神さまにお参りする歳には、正しい作法を心得ておきたいもの。改めておさらいしておきましょう。

■初詣は三が日に行くのが基本

「初詣」は「何日から何日まで」と厳密に決まっているわけではありません。しかし、昔から「早いほうがよい」とされ、三が日(1月1日〜3日)に行くのが一般的です。

■鳥居から先、参道は端を歩く

ご参拝には普段着で出かけてもよいのですが、できれば神さまに敬意を表し、きちんとした服装で出かけるのが望ましいですね。神社では鳥居をくぐる前に服装を整え、一礼します。鳥居は外界と聖域の境界線を表すものだからです。鳥居をくぐったら、参道の真ん中は神さまの通る道とされていますので、避けて歩くとよいでしょう。多くの神社は左側通行ですが、統一されてはいないので、お参りする神社のしきたりに従いましょう。

寺では山門が入り口となります。それ以外はほぼ同じ作法です。山門前で身だしなみを整えて一礼し、「失礼します」という謙虚な気持ちで歩きます。道の端を歩いたほうがよいとするお寺もあるようです。

■手水所(ちょうずしょ)で手や口を清める

参拝の前には手水所に立ち寄り、心身を清めます。手水の作法は神社であっても寺であっても原則は同じです。本来の手順は以下の通りですが、コロナ禍で簡略化した神社も多いようです。大切なのは、神さまに御挨拶する前に、自分の手や口、そして心を清める気持ちです。

1)右手でひしゃくを取り、水をすくいます。左手→右手の順に水をかけ、手を清めます。基本的に神仏関連の作法は、左が上位にあるので、利き手にかかわらず左から清めるのが作法です。
2)ひしゃくに残した水を左手に受け、口にふくんで清めます。ひしゃくには直接口をつけてはいけません。口をすすいだら、もう一度左手を清めます。
3)ひしゃくを垂直に立て、残った水で柄を清めてから、元の位置にひしゃくを伏せておきます。

■拝み方

神社の参拝は「二礼二拍手一礼」が基本です。
1)拝殿の正面に立ち、軽くお辞儀をしてから鈴を鳴らし、お賽銭(さいせん)を賽銭箱に入れます。
2)ここから「二礼二拍手一礼」がスタート。まずは 2回、腰を直角に曲げて神さまへ礼をします。
3)柏手を大きく2回打ちます。この際、右手の先端を左手より少し下げ、両手を開いて叩くとしっかりいい音が響きますよ。このタイミングで願いごとをお伝えします。
4)再び、礼をして終了です。

お寺の場合は、あまり音を立てずに参拝するのが基本です。

1)ご本尊をまつる本堂前に香炉がある場合は、線香などをお供えし、けがれや邪気を払います。お供えのための蝋燭や線香が購入できるお寺もあります。
2)本堂の賽銭箱の前に立ち、鳴らしものがある場合は鳴らしてから、お賽銭を納めます。
3)頭を下げ、しっかりと合掌しながら一礼し、願いごとを念じます。
4)手を合わせたまま、再度一礼します。柏手を打って音を立てないよう注意しましょう。

■お賽銭に決まりはない

「ご縁がありますように」といった語呂合わせから、一般的に5円や5円玉2枚、あるいは50円などの金額が縁起がよいとされたり、風水では「115」という数字が天下を取る強力な数と言われています。とはいえ、金額の大小に決まりはなく、御利益も変わらないそうです。もちろん、縁起がよいとされている金額を納めると気持ちがよいという人は、その気持ちに従うのがよいでしょう。

以上が一般的なマナーですが、それぞれの神社や仏閣によって参拝方法や手順の詳細は異なります。大切なのは形式ではなく、心を込めてお参りをすることです。


【3が日を過ぎたらどうする?「行ってはいけない日」とは?】

■三が日を過ぎたら「松の内」に行くのが目安

三が日を過ぎてしまったら、「松の内」に行くのが目安です。「松の内」とは1月1日から7日までの期間ですが、地方によって15日までのところもあります。「松の内」も過ぎてしまったら、節分(2月3日ごろ)までを目安にするといいでしょう。

■忌中の間、神社への参拝は避ける

「忌中」とは親族を亡くし「四十九日までの喪に服す期間」のこと。一般的に、四十九日が過ぎていない忌中の期間は、初詣など神さまの近くに行くのは控えるべきとされています。ただし、神社側が「控えてほしい」とする期間はそれぞれ異なりますので、心配な人は事前にお参りする神社の公式サイトなどで確認するといいですね。「鳥居の下をくぐらなければお参りしてもよい」という説もありますが、こちらは誤った俗説のようです。一方、仏教において人の死はけがれではなく、「初詣」は故人やご先祖様にご挨拶をするひとつの機会。「忌中」であってもお寺への参拝は可能です。

■不成就日は避けたほうがベター

「不成就日(ふじょうじゅにち)」とは、陰陽道(おんようどう)で、この日から始めたものごとはすべて成就しないとされる悪い日のこと。不浄日(ふじょうにち)とも呼ばれ、初詣にはふさわしくないとされています。不成就日は1か月に4日前後あり、2024年1月の不成就日は、1月2日(火)、10日(水)、16日(火)、24日(水)です。


【初詣にいい2024年1月の縁起のいい日は?】

「この日に神社にお参りにいくとご利益が増す」とされる「吉日」をご存じですか?

・一粒万倍日…何か大きく発展させたいことを始めるのによい日
・天赦日(てんしゃにち)…何をやってもうまくいく最上級の吉日
・甲子(きのえね)の日…十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類)と十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類)が組み合わさった「六十干支(ろくじっかんし)」の一番最初の日。
・寅の日と巳(み)の日…金運アップの日
・鬼宿(きしゅく)日…暦注(暦占い)のひとつである「二十八宿」のうち、もっとも格式の高い吉日。婚礼に関すること以外、何をするにも良い日とされている。
・天恩日(てんおんにち)…慶事、特に婚礼を行うのに縁起のよい吉日。
・大安…暦注のひとつ「六曜(ろくよう)」の中で一番縁起のよい日。

では、2024年の初詣はいつがベストなのでしょうか? 

■1月1日

「1年の計は元旦にあり」と言われるほど、そもそも元旦は厄除け・厄払いに縁起のよい日とされていますが、2024年の元日は、「一粒万倍日」と「天赦日」、「甲子の日」、「天恩日」、「三が日」が重なった、最高に縁起のよい日です。

■1月3日

2024年の1月3日は、「三が日」に「寅の日」「天恩日」が重なった吉日です。

■1月5日 

この日は「鬼宿日」と「天恩日」が重なった吉日です。

■1月16日

1月16日は「大安」と「天恩日」「一粒万倍日」が重なっています。年明けの混み具合も落ち着き、ゆったりと参拝できそうですね。ただしこの日は「不成就日」でもあります。完璧な吉日!というのは難しいですね。

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冷たく澄んだ空気の中、初詣で手を合わせ、その年初めての神さま仏様への御挨拶を済ませると、清々しい気持ちになるものです。でも、お賽銭を納めた後、すぐに「○○をお願いします」とお願いしている人はいませんか?参拝では、まず最初に1年間のご報告や感謝の気持ちをお伝えしましょう。願い事をするのはその後ですよ。また、自分の名前や住所を名乗るのもよいとされています。2024年の元旦は、今後数十年巡ってこないと言われている、このうえなく縁起のよい吉日です。初詣のお作法を心に留め、最高に素晴らしい年の始まりを迎えてくださいね!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社)/『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社) :