あなたは「年末詣」をしていますか? 「年末詣」そのものを知らないという人もいるかもしれませんね。年が明けると神社やお寺に初詣に行く人は多いと思いますが、実は「年末詣」こそ重要のようなのです! 今回は、ぜひ習慣にしたい「年末詣」について解説します。
【目次】
【「年末詣」とは?「読み方」「意味」と「起源」】
■読み方
「年末詣」は「ねんまつもうで」と読みます。
■意味
「願」をするために、年末に神社や寺院を参詣すること。
■起源
起源は大晦日の夜に神社やお寺に籠って新年を迎える「年籠(としごも)り」という古来のならわしにあります。これは、一家の主や集落の長老など、代表者が氏神様のもとに籠り、大晦日の夜から元日の朝にかけて感謝や祈願をしながら過ごすものでした。それが年末に行う「年末詣」と、年が明けてからの「初詣」に分かれたのです。
【どこへ?いつから行ける?「年末詣」の基礎知識1】
■どこへ?
「お礼参り」の場合は、そのお願いをした神社に参るのが基本ですが、「お礼」と「お願い」の「年末詣」は住んでいる土地の守り神(氏神様)がおられる神社(自宅から一番近い神社)へ行くのがいいでしょう。とはいえ日本の神様仏様はとても寛大。特定の寺社でなくても、“神仏に参る”のが重要とされています。
■いつから行ける?
12月中旬から大晦日の31日までが「年末詣」の時期になります。なぜ12月中旬以降かというと、「煤払(すすばら)い」に由来します。
平安時代から宮中行事として行われてきた「煤払い」は、現代で言う年末の大掃除のことです。江戸時代になると、婚礼以外は万事に大吉とされる鬼宿日(きしゅくにち)である12月13日を「煤払いの日」と定め、江戸城の大掃除を行ったのだとか。城の内外を清めて年神さまを迎える準備を整えた「煤払い」が庶民にも広がり、年末に大掃除をするという風習ができました。
そして、この「煤払い」のあとに「年末詣」をするのがよいとされており、それにはいくつか理由があるようです。
・神社に人が少ない時期なので、落ち着いて参拝できる(慌ただしく参拝するより、丁寧に参拝したいですね!)
・煤払いにより境内が清められているので神様の機嫌がいい…という説も(願い事を叶えてくれそう!)
・冬至の前後は神様のパワーが高まる…という説も(ご利益ありそう!)
■2023年の「年末詣」の吉日はいつ?
「年末詣」のベスト日は大晦日の夕方とされていますが、この時間帯にお参りするのは難しい…という人も多いのでは? それ以外で神社仏閣へのお参りに特に吉とされているのは、一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)。今年の12月後半では、19日(火)と20日(水)、そして31日(日)が一粒万倍日にあたります。このほか、冬至(2023年は12月22日)や大安日も参詣日和。一年でいちばん夜が長い冬至が吉とされるのは、この日を境に昼間の時間が長くなっていくため。冬至の翌日は新年とみなされ、神様や仏様にお参りするのによいとされているのです。
【何をする?お賽銭は?「年末詣」の基礎知識2】
■何をする?
通常の参拝と変わりはありません。神社でのお参りの基本をおさらいしましょう。
1)鳥居の真下手前で一礼、参道の中央は避けて歩く。
2)手水があれば手や口をゆすいで清める。
3)本殿、あるいは拝殿へ。賽銭をし、二礼二拍手一礼。
「年末詣」の目的である感謝や新年の祈願は、二礼二拍手したあとに。まずは住所や名前を(心のなかで)述べ、神様に自分を認識してもらってから…がよいという説もあります。
参拝は、お守りなどの授与品をいただいたり、境内を散策する前にすべきもの。御朱印も本来は参詣したことの証(もともとは納経した証)なのでお参りのあとにいただくものですが、混雑を避けるため先に御朱印帳を預けるシステムの寺社もあります。また、鳥居下やお参り時など、礼をする際は脱帽するのも大人のマナー。帰る際も、鳥居下で本殿(拝殿)に向かって一礼するのが良いでしょう。
■「年末詣」に適したお賽銭の金額は?
お賽銭の金額に決まりはありませんが、「ご縁」と5円をかけ、お賽銭に5円硬貨はつきもののようにいわれますね。15円で「十分なご縁がありますように」、25円で「二重にご縁がありますように」など、語呂合わせ的な金額にこだわる人も。また、白(1円硬貨、50円硬貨、100年硬貨)、赤(5円硬貨、10円硬貨)、穴空き(5円硬貨、50円硬貨)を3種類組み合わせるのもよいとか。500円硬貨は「これ以上効果なし=これ以上の硬貨はない」という意味から、お賽銭には不向きと考える人もいるようです。もちろん紙幣でも構いません。いずれにしても、お賽銭を人から借りるのは良くないといわれているので、参拝時にはお賽銭にする現金のご用意を。最近では参拝料や拝観料だけでなく、お賽銭も電子決済できる寺社が増えてきましたが…。大人としては、もう少し情緒が欲しいところです。
【「年末詣」は「初詣」も兼ねる!?「年末詣」の豆知識3選】
■1:初詣に行けなくても「年末詣」でOK!
「年末詣」の起源は「年籠り」ですが、「年蘢り」は12月31日の夜に行う「除夜詣」と、元日朝に行う「元日詣」に分かれ、それが「年末詣」と「初詣」へと変化していきました。初詣の時間がなさそうなら、一年の感謝と翌年の願いをしてもよい「年末詣」を!
■2:「年末詣」でいただく「お守り」にも同様の効果あり
寺社での授与品に有効期限はありませんが、1年程度で代えることが多いのでは? 初詣にいただいたお守りやお札(ふだ)、破魔矢などは、翌年の初詣の際にお炊き上げをお願いし、新しいものを手に入れるのを習慣としている人も多いと思います。「年末詣」でいただいたお守りは、翌年の「年末詣」やその次の「初詣」でお返しするのがいいかもしれませんね。
■3:子どもやお年寄りにもやさしい「年末詣」
毎年何万人もが訪れる人気の寺社でなくても、三が日の「初詣」はどこも人が多いもの。大勢が並んでいるのに時間をかけてお参りするのは気が引ける…という人もいるでしょう。「初詣」に比べてぐっと人出が少ない「年末詣」なら、ゆっくり神仏と向き合うこともできそうですね。小さい子どもや高齢者と一緒でも、比較的混雑のない「年末詣」なら、気遣いが少なくてすみそうです。
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一年の無事に感謝し、新たな年の抱負を誓い、願いを届けるという、「お礼参り」と「祈願」の両方を兼ねる「年末詣」。新しい習慣にしてみてはいかがですか?
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『平成ニッポン生活便利帳』(自由国民社)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館) :