「はたまた」という言葉は、日常会話で使う機会はあまりないかもしれませんね。でも、テレビ番組のMCや芝居の台詞としては、しばしば耳にするのでは? 理由は「はたまた」が「それとも」や「あるいは」を強調した表現だから。「破局か? それとも続行か?」よりも「破局か? はたまた続行か?」のほうがドラマティックな印象を与えるため、受け手にアピールする「台詞」として有効なのでしょう。今回は「はたまた」を深掘り。曖昧だったイメージを確実な知識にアップデートしましょう。
【目次】
【「はたまた」の「意味」など「基礎知識」】
■「意味」は?「敬語」なの?
「はたまた」は「もしくは」「あるいは」「それともまた」といった意味の言葉です。「もしくは」などと同様に、「夢か、はたまた幻か」のように、列挙された選択肢の間に置かれ、多くは疑問を投げかける文章で使われます。尊敬や謙譲のニュアンスはなく、丁寧語でもないので、「敬語」ではありません。
【「漢字」で書くと?「語源」は?】
「はたまた」は「将(はた)」を強めた表現です。漢字では「将又」と記します。「将」は、単独でも「はたまた」「それともまた」「あるいは」という意味をもち、列挙されたふたつの事柄のどちらを選ぼうか迷う気持ちを表します。加えて、「又」にも「あるいは」「または」という意味があり、こちらも 列挙した事柄のうち、どれを選択してもいいときに用いられます。つまり、「将又」は同じような意味の言葉を重ねることで、その意味を強調した言葉なのです。確かに、「夢? あるいは幻か?」という表現よりも「夢?はたまた幻か?」のほうが、ドラマティックな印象を受けますね!
【「使い方」がわかる「例文」3選】
上で説明した通り、「はたまた」は、列挙された事柄のうち、どれを選ぼうか迷う気持ちや様子を表すときに用いられます。多くは「Aか、はたまたBか」という用法になりますが、「Aか、Bか、はたまたCか」のように、選択肢が3つ以上になることもあります。
■1:「暴落か、はたまた急騰か。世界情勢への不安から、株価を読むのはますます難しくなった」
■2:「休職か、転職か、はたまた仕事を辞めて実家に戻るか。健康への不安から迷う毎日だ」
■3:「後輩と浮気したAさんとの関係をどうするのか…破局か、はたまた継続か。彼女の決断を社内の誰もが固唾を呑んで見守っている。これだから社内恋愛は嫌なんだ」
【「類語」「言い換え」表現】
■あるいは
■もしくは
■または
■それとも
■翻(ひるがえ)って
「翻って」は「これとは反対に。これとは別に」という意味の副詞です。「はたまた」で提示される選択肢は多くが「並列」であるのに対し、「翻って」はどちらかに主軸が置かれている場合が多いようです。例えば「アメリカの現状は〜である。翻って日本では…」と文章が続く場合、話の論点はどちらかがメインに書かれています。
【「英語」で言うと?】
「それとも」という意味の英語表現は[or]です。「はたまた」のように文意を強調するニュアンスはありません。
・Will you have coffee, or tea?(コーヒーにしますか? それとも紅茶にしますか)
・I don't know whether I should take on the job or not.
(そのことを引き受けるべきか、それとも断るべきか分からない)
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「はたまた」はやや古風な言葉のため、日常会話で使うと少々芝居がかった印象となります。そのため冗談めかして何か選択肢を提示する際に使われたりします。あえて「はたまた」を使った相手の意図を考えてみてくださいね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) :