仕事でも日々の暮らしでも、細かい数字と無縁ではいられません。1989(平成元)年に3%で始まった消費税は30年間で10%まで引き上げられ、2023年10月1日からはインボイス制度が導入されました。国民が1円単位を意識して生活しているなか、国会ではいち政治団体の50億円もの使途不明金問題がはぐらかされようとしている…という怒りはさておき、今回はごくごく小さな数字の「端数」について解説します。
【目次】
【「端数」とは?「読み方」と「意味」など基礎知識】
■読み方
「端数」は「はすう」と読みます。
■意味
数字のある位に着目したとき、その下の位の数のことを「端数」と言います。切りのよい位で切った場合の「余った数字」のことですね。「端数が出た」「端数を切り上げる」「端数を四捨五入する」「端数を処理する」というように使います。具体例を挙げると、本体価格145円の商品の10%税込み価格は、計算上では145円×1.10=159.5円となりますが、現在の日本の通貨の最小単位は1円なので「0.5円が端数」ということになります。
■類語と対義語
「余剰」「残り」「残余」「余り」「取り残し」などが類語です。対義語には「過不足なく」「丁度(ちょうど)」「ぴったり」「きっかり」「かっきり」などが。「きっかり」も「かっきり」も正しい日本語で、同じ意味なんですよ。
【知っておくべき「使い方」がわかる「例文」3選】
ビジネスシーンで実際に使えそうな例文もチェックしておきましょう。
■1:「端数を丸めるのは、対象相手ごとに取り決めをしておく必要がある」
この場合の「丸める」とは、切り捨て、切り上げ、あるいは四捨五入などによって、切りのいい数値にすること。「端数を丸める」は「端数を処理する」と同義です。
■2:「あとで丸めるので端数のままにしておいてください」
端数をそのままにしておく、という意味。
■3:「円位未満はすべて切り捨てて値付けするのが我が社のルールです」
「円位(えんい)」とは日本の通貨の円の位のこと。たとえば、159.5円の「円位未満」は0.5円(50銭)となります。159.5円は四捨五入すると160円になりますが、上の例文にならって切り捨てると159円になるというわけ。1953(昭和28)年から通貨の最小単位は「円」になりましたが、現在も利息や外国為替の計算などには1円未満の単位(「銭」と「厘」)が必要なので、計算上は残っています。
【「消費税の端数」は切り上げ?切り捨て?】
私たちが日常で最も数字を意識するのは、生活用品の購入時だと思います。2019(令和元)年に消費税率が8%から10%に引き上げられた際に「標準税率10%」と「軽減税率8%」という二刀流が採用され、現在に至ります。上の例文3の会社では1円未満はすべて切り捨てということですが、販売時の「税込み価格の端数」については「切り捨て」「切り上げ」「四捨五入」のいずれでもよいということになっています。159.5円を159円にしても160円にしてもよく、そこは企業努力や采配に任せるというわけです。
【どうする?請求書の端数処理】
インボイス制度(正式には適格請求書等保存方式)が導入され、個人事業主が適格請求書を発行する際には、標準税率10%で計算されるものがいくら、軽減税率8%のものがいくらというように、税率ごとに区分した消費税額等の記載が必要です。この場合に1円未満の端数が出ることがありますが、その処理はどのようにすればいいのでしょうか?
金額ひとつひとつではなく、ひとつの請求書のなかで「標準税率10%が適用されるものの総額」と「軽減税率8%が適用されるものの総額」を算出し、それぞれの金額の端数処理については請求者の任意となります。ここで肝心なのは、個々の金額に対して端数処理するのではなく、税率の異なるごとの総額で1回端数処理する、ということです。
【「端数」を英語で表すと?】
ごく少量という意味をもつ[fraction]を使用し、「端数」は[a fraction]で表します。
・Round down the fractions.(端数は切り捨てなさい)
・Round down the fraction of 300 yen to 5,000 yen.(端数の300円を切り捨てて5000円にしよう)
・Ten divided by three leaves a remainder of one.(10を3で割ると端数が1出る)
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確定申告の時期や年度末が近づくと、数字、特にお金に関するあれこれで悩ましいものですね。今回の「端数」という単語が、ご自身の経済活動について考えるきっかけになったでしょうか?
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/国税庁ホームページ/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :