「老獪」は「ろうかい」と読みます。「獪」という漢字は見慣れないかもしれませんね。今回はこの「老獪」について、意味や同義語、似たような語との違いや言い換えなどを解説します。

【目次】

「老獪」「狡猾」「老猾」はどう違う?
「老獪」「狡猾」「老猾」はどう違う?

「老獪」とは?「読み方」と「意味」】 

■読み方

改めて…「老獪」「は「ろうかい」と読みます。

■意味

経験を積んでいて悪賢いこと。世慣れてずる賢いこと。また、そのさま。

けもの偏(へん)に、旁(つくり)は「会」の旧字体を用いて「獪」。そもそもこの漢字に「ずるい」「悪賢い」という意味があり、「老」の字と合わさって「経験を積んだことによってずる賢くなった」ことを表しています。ほめ言葉ではないことがわかりますね。


【「正しい使い方」がわかる例文5選】

では、どんなシーンで「老獪」は使われるのでしょうか。例文を見てみましょう。

■1:「彼は確かに仕事はできるけれど、あの老獪さは絶対に見習ってはいけない」

■2:「新人のころは一生懸命さが気持ちのいい青年だったが、ベテランと言われる年齢になって老獪さが目に付くようになった」

■3:「経験を積んでなお、老獪さのみじんも感じられない政治家は稀だ」

■4:「今回の契約交渉は、部長の老獪さがなかったら決裂していたかもしれないね」

■5:「プロスポーツの世界では、戦術としての老獪さが求められることもある」

「老獪」はほめ言葉ではありませんが、「老獪さ」は時と場合によってネガティブにはたらくこともあるのです。


【「老獪」と「狡猾」はどう違う?「類語」や「言い換え」】

「老獪」は似た言葉、言い換え表現が多い言葉でもあります。まずはそれらを見てみましょう。

■類語・言い換え

・狡猾(こうかつ) ・巧黠(こうかつ) ・獪猾(かいかつ) ・老巧(ろうこう)

・古狐 ・たぬき親父 ・海千山千 ・抜け目ない ・世間ずれ 

・すれっからし ・こすっからい ・小賢しい(こざか-しい)

■「老獪」と「狡猾」の違い

「老獪」も「狡猾」もずる賢い、悪賢いことを表しますが、「老獪」は「経験を積んだことによるもの」あるいは「年を重ねたことによるもの」に対して使う言葉。経験値をもとにして悪知恵をはたらかせているイメージです。一方の「狡猾」は経験によるものは示してはいないので、経験不足の若い人にも使えます。「老獪」はベテランに使い、「狡猾」は若手や新人に、と覚えておくといいかもしれません。


【「老獪」を「ほめ言葉」に変換! 「対義語」も!】

「老獪」であることが良い結果を生む場合もありますが、「部長の老獪さが見事ハマりましたね!」とは言えません。そんな場合に使える言い換え表現を例文とともに挙げてみます。

■言い換え

・経験豊富:「経験豊富な部長でなければ、あのピンチは乗り切れませんでした」

・キャリアが長い:「キャリアの長さを交渉に生かす術は勉強になります!」

■対義語

対義語をうまく活用してほめ文章にする、というテもあります。

・熟練:もんごとに慣れて、手際よく上手にできること。また、そのさま。「熟練した技術」

・老練:経験を積んで、ものごとに熟練していること。また、そのさま。「老練なかけひき」

・円熟:人格、知識、技芸などが十分に発達して、豊かな内容をもつこと。「円熟の域に達する」

・熟達:熟練して上達すること。慣れて上手になること。「機械操作に熟達する」

・習熟:そのことに十分に慣れ、上手になること。「運転技術に習熟する」


【英語でどう言う?「英語例文」】

「老獪」そのものを表す英単語はありませんが、「ずる賢い」という意味の[cunning]を使って下記のように表すことができます。

・That politician is as cunning as a fox.(あの政治家はなかなか老獪だ)

・a cunning way to do it(老獪なやりかた)

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何事も経験を積むのは良いことですが、それによって手抜きをしたりずるく立ち回ってはいけません。「老獪」ではなく「熟練」や「円熟」の域に達したいものですね!

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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :