「釈明」は、ミスを犯したり誤解が生じた際に、「自分の立場や考えを説明することで誤解や非難を解き、理解を求めること」。ビジネスシーンや訴訟などでも用いられる言葉です。今回は「釈明」の意味や使い方のわかる例文に加え、混同しやすい「言い訳」「弁明」との違い、言い換え表現を解説し、「釈明」を深掘りします。一緒に学びましょう!

【目次】

相手の理解・了解を得ることが目的です。
釈明は、相手の理解や了解を得ることが目的です。

【「釈明」の「読み方」「意味など「基礎知識」】

■読み方

「釈明」は「しゃくめい」と読みます。

■意味

「釈明」は「自分の立場や考えを説明して、誤解や非難を解き、理解を求めること」。何かミスをしてしまったり、自分にとって不利なことが起こった際に、自らの立場の正当性を明らかにするための客観的説明をすることです。相手に了解を求めるために行います。

■語源

「釈」には、わかりにくい物事を「解きほぐす」「解き明かす」といった意味が、「明」には「明らかにする」「明るみに出す」という意味があります。ここから「釈明」は、「客観的な説明をして(誤解を受けていることに対し、自らの正当性を)明らかにする」という意味になります。


【「言い訳」「弁明」との「違い」】

「釈明」と「言い訳」、そして「弁明」に共通するのは、「自分にとって都合の悪いことや過失などについての説明をすること」です。

■「釈明」と「言い訳」との「違い」

「言い訳」は、「失敗に対して、“ほかにどうすることもできない理由があった”というような意味で、自己を正当化するために説明すること」。「弁解」もほぼ同義の言葉ですが、「言い訳」は「弁解」よりも話し言葉的な言葉であり、「自分が悪いことをしたという自覚がある」ことが大きな違いと言えます。「釈明」と比較した場合、説明に客観性が欠けることも少なくありません。また、「言い訳」は潔さを欠く行為として、しばしばマイナスに評価されます。

■「釈明」と「弁明」との「違い」

「釈明」は、相手の誤解や非難に対して、自らの立場の正当性を明らかにするための客観的説明をすることで、相手の了解を得ることに重きがあります。一方「弁明」は、自らの立場を明らかにするための説明をすることで、相手の、自分への誤解を解くことに重きがあります。


【そのほかの「類語」「言い換え」表現】

「失敗に対して、ほかにどうすることもできない理由があったことを説明する」という意味で、「釈明」と意味が共通する言葉をいくつかご紹介しましょう。

・申し訳:「言い訳」の謙譲語で、「自分のやったことに対し、それ相応の理屈を立てること」。また、実質がなく形ばかりであることも言います。

・言い開き:弁明すること。

・申し開き:「言い開き」の謙譲語。

・弁解:責任を逃れるために説明すること。言い訳とほぼ同義。

・陳弁:事情を述べて弁解すること。申し開きとほぼ同義。

・言い逃れ: 口実をつくって、責任や罪から逃れること。巧みにその場をつくろって窮地を脱すること。


【「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「鉄道事業者は、昨日起こった車両脱線事故の原因について、会見を開いて釈明した」

■2:「彼はすでに自分のミスを認めているのだから、事実を歪めない範囲で釈明の余地くらい残してあげてもいいのではないか」

■3:「事情について質問されると、彼は釈明の機会を与えられたと理解したのだろう。事実を淡々と話しはじめた」

■4:「個人的に謝罪されただけでは到底納得がいかない。事故の原因となった製品を製造した会社には、公の場での釈明を求める」

■5:「浮気を理由に妻から離婚を突きつけられた彼は、釈明に終始した」


【「英語」で言うと?】

「釈明する」に相応する英語は[vindicate]や[explain]です。

・Please explain why you stopped the work.(どうして仕事を中断したのか釈明してください)

・We accepted his explanation.(彼の釈明を聞き入れた)

・There is no excuse for it.(釈明の余地はない)


【「釈明権」とは?】

「釈明権」とは、裁判所が事件の真相を明瞭 (めいりょう) にして公正な裁判ができるように、法律上および事実上の事項について当事者に質問をし、当事者に陳述、あるいは立証を促す権限を指します(民事訴訟法149条、なお刑事裁判における釈明権については刑事訴訟規則208条)。例えば、訴訟当事者に訴訟に関する知識が乏しいために、一般的には主張すべき事実を見逃して主張しない(できない)ケースがあります。この事実が訴訟結果を覆すほどの重要生をもっていたら、それは問題です。このような事態を避けるために、裁判所に認められているのが「釈明権」です。一般的に裁判長が代表して行使します。

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「釈明」という言葉が使われるのは、企業が起こした事故や過失、政治家による汚職など、公共性が高い場合のほか、ビジネスシーンでは大きなミスや不祥事が発覚したとき。プライベートでは不誠実な行為を疑われたり、誤解が生じたりした際に使われます。「釈明」の目的は「相手の了解を得ること」ですから、主観的な理由よりも、正当性を証明するための客観的な説明が鍵となります。言葉の選択を誤って相手に「言い訳」と受け取られると、かえって心証を悪くすることに。なにより、「釈明」の前には誠意をもってお詫びの気持ちを伝えることも大切です。こんなときこそ“大人の語彙力”」で乗り切りましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :