「待てば海路の日和あり」は「きっといつかチャンスが来る」と、誰かや自分を励ます際に使われる言葉です。実際に使ったことはなくとも、ドラマや映画で耳にしたことはあるのではないでしょうか。今回はこの言葉の意味や由来、使い方や同じような意味をもつことわざを解説します。

【目次】

いつかは航海にちょうどいい天気になります。
人生の「出航」にちょうどいいタイミングは、いつか必ず来るものなのです。

【「待てば海路日和あり」を理解するための「基礎知識」】

■読み方

「待てば海路の日和あり」は「まてばかいろのひよりあり」ですね!

■意味

「待てば海路の日和あり」は、「慌てずに待っていれば、必ずチャンスは巡ってくる」ことを喩えたことわざです。「焦らずに時を待つことが大事である」と説いているのですね。「海路」とは「海上を船が通って行く道筋。航路」のこと。「日和」は「何かをするのに、ちょうどよい天気」という意味。「たとえ今、海が荒れていて出航できなくても、そのうちに航海にちょうどいい天気になる」ことから、「慌てずに待っていれば、航海日和(チャンス)が来る」という意味になりました。

■語源と由来

「待てば海路の日和あり」は、「待てば甘露の日和あり」から派生した言葉だといわれています。「甘露」とは中国の伝説で王者が徳の高い政治を行ったとき、天が降らせる甘味の露(つゆ)のことです。「じっくりと落ち着いて待っていると、甘露の降るような日和がある」ことから、「待っていればチャンスが到来する」という意味になりました。「甘露の日和」という表現が実感として捉えにくいため、日常生活と具体的に結びついた「海路の日和」という表現が次第に優勢になったとされています。


【「使い方」がわかる「例文」3選】

■1:「仕事が忙しいうえに親族の病気も重なり、正直、焦っていたが、待てば海路の日和ありで、年明けからすべては順調に回り出した」

■2:「つらくてどうしようもないときは、待てば海路の日和ありの言葉を思い出し、自分を励ました」

■3:「きっと大丈夫、うまくいくよ。『待てば海路』とも言うしね」

3のように「待てば海路」と略して使われることもあります。


【似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現】

「待てば海路の日和あり」と同じような意味をもつ「ことわざ」をご紹介しましょう。

■石の上にも三年

「たとえつら辛くても辛抱強く頑張れば、やがて報われる」という意味のことわざ。「3年は努力を続けなくてはいけない」と年数を限定するのではなく、「待てば海路」同様、「大丈夫。頑張ればいつかは報われる」というポジティブなニュアンスで用います。

■果報(かほう)は寝て待て

「幸運は人の力ではどうにもできないので、焦らず待つのがよい」という意味。「果報」は仏教語で前世の行いによって受ける現世の報いで、転じて、「良い運に恵まれること」を言います。「家宝」と間違えないようにご注意を。

■急いては事を仕損ずる

「あまり急ぐとかえって失敗に終わって、急いだことがムダになる」ことを表すことわざです。

■明けない夜はない

「明けない夜=悪いこと」ばかりがずっと続くわけではない、という意味の言葉です。


【「対義語」は?】

この機会に「待てば海路の日和あり」とは反対の意味をもつことわざも知っておきましょう。

■先んずれば人を制す

「他人よりも先に“こと”を行えば、有利な立場に立てる」という意味の故事成語です。『史記』の「項羽本紀」を由来する、「先手必勝」の類語です。

■「思い立ったが吉日」

「何かをしようという気持ちになったら、その日が吉日と思ってすぐに始めるのがよい」という意味で、「思い立つ日が吉日」とも。

■鉄は熱いうちに打て

「成長したあとでは十分な教育効果があがらないから、純粋な気持を失わない若いうちに鍛練しておけ」という意味のことわざで、「ものごとは時期を逃さないように行う必要がある」という意味で、ビジネスシーンでは「関係者の関心が薄らがないうちに対策をたてないと、あとからでは問題にされなくなるから、時機を失しないように処置をせよ」という意味でも使われます。


【「英語」で言うと?】

実は英語表現でも「待てば海路の日和あり」と同じような意味のことわざがあります。

■Everything comes to him who waits.(待つ者にはすべてのものが来る)

■After a storm comes a calm.(嵐のあとには凪が来る)

■It is a long road that has no turning.(曲がり角のない道はない)

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「待てば海路の日和あり」はその意味を理解すると、真っ青な大海原を連想させるような、スケールの大きな言葉です。つらいときこそ、ポジティブな言葉で自分を励ましたいもの。そしてそんな言葉を多くストックしていることも“大人の語彙力”と言えるのではないでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『ことわざを知る辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『すぐに使える! 教養の「語彙力」3240」(西東社) :