「思慮分別」は「よく考えて物事の善悪や是非などを判断すること」を意味する四字熟語です。似た意味をもつ「思慮」と「分別」を重ねることで、意味を強調した表現になっています。今回は「思慮分別」を深掘り。言葉の意味や使い方、言い換え表現や英語表現についても解説します。

【目次】

思慮分別とは?「分別」は「ぶんべつ」ではありません。
思慮分別とは?「分別」は「ぶんべつ」ではありません。

【「思慮分別」の「読み方」と「意味」など「基礎知識」】

■読み方

「思慮分別」は「しりょふんべつ」と読みます。「ぶんべつ」ではありませんよー! 「分別」を「ぶんべつ」と読んだ際には「種類によって分けること。区別すること」という意味になり、「ゴミの分別」のように使われます。

■意味

「注意深く心を働かせて、物事の道理・善悪・損得などを判断すること」を「思慮分別」と言います。

「思慮」は「きちんと考えること」。「分別」は「ふんべつ」と読んだ場合は「道理をよくわきまえていること。また、物事の善悪・損得などをよく考えること」を意味します。言い方を変えれば「物事の善悪や是非などを区別すること」となり、ここから「思慮分別」とは「物事の善悪や是非などについてよく考え、正しく区別(判断)できること」となるのです。

■基本的にポジティブな意味で使われます

「彼女はまだ入社間もないのに、社会人としての思慮分別を持ち合わせている」など、「思慮分別」は「一人前の社会人が備えているべき常識的な判断力」という意味合いで、基本的にはポジティブに使われることが多い言葉です。ただ、「部長の思慮分別ある態度が、かえって若い社員たちからは反発を招く結果となってしまった」のように「落ち着きすぎて積極性に欠ける」点を非難するニュアンスで用いることもできます。

■「思慮分別をわきまえる」は正し表現

「弁(わきま)える」とは「物事の道理をよく知っている。心得ている」という意味の動詞ですが、 「物事の違いを見分ける。区別する」という意味ももっています。つまり「思慮分別をわきまえる」は、「物事についてきちんと考える」「区別する」という意味の言葉を二重三重に重ねた表現となっています。「重言であるから誤用」とまでは言えませんが、「思慮分別がある」という表現が適切です。


【「思慮分別がある」「思慮分別がない」と言われる人の特徴は?】

では「思慮分別」の「ある人」と「ない人」、それぞれの特徴を見ていきましょう。「思慮分別」の「ある人」が、どうして職場の信頼を勝ち得ているのか、その理由がわかるはずです。

■「思慮分別がある人」とは?  

・物事をじっくりと慎重に考える

・状況や事の善悪について、正しい判断力を備えている

・冷静で理性的

・行動が計画的である

・状況や相手を思いやった言動が取れる

■「思慮分別がない人」とは?

・思いついたことをすぐ行動に移す

・周囲の状況や相手の気持ちには思いが至らない

・軽率な振る舞いが多い

・ケアレスミスが多い

・行動に一貫性がない


【「類語」「言い換え」表現】

「思慮分別」の「類語」「言い換え表現」をご紹介しましょう。

■よく似た意味の「四字熟語」

・熟慮断行
「熟慮」は「時間をかけてよく考えること」。「断行」は「きっぱりと決めて実行すること」。つまり「熟慮断行」は「時間をかけ、十分考えたうえで、きっぱりと決めて実行すること」を指し、慎重さと大胆さを兼ね備えた様子を表しています。

■「言い換え表現」

・思慮深い:十分に考え、注意を払い判断する力に長けていること。

・社会的、常識的な判断力がある

対義語となる「四字熟語」

・直情径行(ちょくじょうけいこう)
「いろいろ考えずに感情ですぐに行動すること」を表す四字熟語。基本的にはネガティブな意味で用いられますが、「彼の若者らしい直情径行ぶりを、上司は目を細めて見つめていた」のように、行動力がある点をプラスに評価して用いることもできます。

・軽挙妄動(けいきょもうどう)
「きちんと考えずに判断し行動すること」を意味する四字熟語です。どちらかといえば、「思慮分別」よりも「熟慮断行」の対義語と言えます。

■反対の意味になる「言い換え表現」

・思慮分別に乏しい

・思慮が浅い

・思慮に欠ける


【「英語」で言うと?】

「思慮分別」の「思慮」と「分別」をそのまま英訳して[prudence and discretion]と表現できます。また、「思慮分別」は「慎重に考え正しく判断できる」という意味ですから「慎重に考える」ことに重きをおけば、英語表現は[consideration]となります。動詞は[consider]、形容詞なら[considerate]ですね。また「判断」は[judgment]。「慎重な判断」は[careful judgment]とも表現可能です。

・He is considering whether he should go to France.(彼はフランスへ行くべきかどうか熟考している)

・Careful judgment is required in important situations.(重要な場面では慎重な判断が必要だ)

***

「思慮分別」は、肯定的な意味合いだけでなく、「落ち着きすぎて積極性に欠ける」点を非難するようなニュアンスでも使える四字熟語です。確かに、慎重すぎる判断から革新的なものが生まれにくいのは事実。「思慮分別」は良くも悪くも「大人的」な判断力なのですね。とはいえ、仏教では「思慮分別をなくすことが悟りへの道」と考えられているそうですよ。深い言葉ですね!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『四字熟語ときあかし辞典』(研究社)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :