今回取り上げるのは「口八丁」という言葉です。日常会話ではあまり使う機会がないかもしれませんが、「口八丁手八丁の…」などと見聞きすることはあるでしょうか。少々古風な言い回しにも聞こえる「口八丁」について、さくっと解説していきます。

【目次】

「彼は口八丁だよね」は誉めてる?悪口?
「彼は口八丁だよね」はほめてる?悪口?

【「口八丁」はほめ言葉?「読み方」「意味」「由来」 】

■読み方  

「くちはっちょう」と読みます。

■意味

口が達者、しゃべることが巧みなこと。また、そういう人や、そのさまを指します。

■由来

「八丁」には、8つの道具を使いこなすほど物事に達者であるという意味があります。「口八丁」で口が達者、「手八丁」で手(技)が達者というわけです。

■ほめ言葉?

「口八丁」は「話し上手」という意味ではありますが、「口先だけ」といった皮肉を込めて使われる言葉です。目上の人や仕事相手には、あとで解説する言い換え表現を使ったほうがいいかもしれませんね。


【「上手な使い方」がわかる「例文」3選】

どんなシーンで使えば使えるか、例文を見てみましょう。

■1:「彼は口八丁なやり手だが実行力も伴っているので信頼が厚い」

■2:「プレゼンでの口八丁な弁舌に流されず、しっかり内容を精査しなければならない」

■3:「あの人は人一倍努力したうえに、口八丁が備わっていたから今の地位を築けたのだろう」


【「類語」「言い換え」「対義語」】

例えば上司に「部長は口八丁ですね」と言ったとします。相手はほめ言葉として受け取ってくれるでしょうか? そもそも目上の人をほめるのは“上から目線”にあたる可能性があるので、言葉選びに十分注意が必要です。下記のような表現を参考にしてみてください。

■「口八丁」の類語

・口達者 ・口上手 ・口巧者(くちごうしゃ) ・話し上手 ・口賢い ・口がうまい

・口器用(くちぎよう) ・口調法 ・快弁 ・雄弁 ・能弁 …さまざまな類語がありますね。

■「部長は口八丁ですね」の言い換え

・部長はお話がとてもわかりやすくて勉強になります。

・部長のお話は私にも理解しやすくてありがたいです。

いずれも「私にも理解しやすい」「勉強させていただける」と、自分を下げた表現を伴うところがポイントです。

■「口八丁」の対義語

まず思い浮かぶのは「口下手(くちべた)」でしょう。話すことが不得意で、思っていることをうまく人に伝えられないことを「口下手」と言います。ほかには、言葉がつかえたりして滑らかに喋れないことを「訥弁(とつべん)」、口数が少ないことやゆっくり話すさま、軽々しくものを言わないことを「口重(くちおも)」と言います。


【「口八丁」を英語で言うなら】

「口八丁」を表す英単語は[eloquent]となります。[an eloquent speaker]で「口八丁な人」「雄弁家」となります。また、「話好き」や「話が流暢」は[voluble]で表せます。このほか、下記の例文も参考にしてみてください。

・She is well-known for her ready tongue.(彼女は口八丁で有名だ)

・He is a good talker and efficient worker who gets things done.(彼は口八丁手八丁のやり手だ)


【「口八丁手八丁」など関連用語/「口先八丁」は?】

・口八丁手八丁(くちはっちょうてはっちょう):しゃべることもやることも達者なこと。また、そのさま。「口も八丁手も八丁」ともいいます。「口八丁手八丁な男だけに世渡りがうまい」というように使います。

・舌先三寸(したさきさんずん):口先だけでうまく開いてをあしらうこと。「口先」とするのは御用ですが、使う人が増えています。また、口先八丁という言葉はありません。これは、口八丁と口先三寸がないまぜになった誤用と考えられます。

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「口八丁」は悪口に近い言葉です。「巧みにしゃべる」とポジティブな意味も少し含まれていますが、はめ言葉として使うには、使い方が難いと言えます。特にビジネスシーンでは言葉選びに慎重になりたいものですね。

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