「知行合一」を知っていますか? これは「知ることと実行することは分けられない」という意味なのですが…え、何? どういうこと? ってなってしまいますよね(笑)。ということで、今回はこの四字熟語について、正しい使い方を例文で、また類語や関連語も紹介しながら解説します。

【目次】

知行合一とは? 座右の銘とした偉人は誰?
「知行合一」を座右の銘とした偉人は誰?

【「知行合一」とは?「読み方」と「意味」「由来」 】

■読み方

「知行合一」は「ちこうごういつ」です。

■意味

「知ることと実行することとは本来ふたつには分けられない」という意味です。「知(知ること、知識)」と「行(行為、実践)」は「合一(ふたつ以上のものが合わさってひとつになること)」、すなわち「実践による裏付けがあって真の知識となる」と言っているのです。

■誰が言った?

「知行合一」は、中国、明の王陽明(おうようめい/1472~1528年)が唱えた儒学説「陽明学(ようめいがく)」の命題のひとつです。

陽明学は儒学のひとつの学説で、時代に適応した実践的な倫理を説いたもの。「知行合一」のほか、陸像山による「心即理(しんそくり/人間の心は性と理<体>が渾然一体となったものという考え)」や、「致良知(ちりょうち/心と体<理>は一体であり、心のあり方が理と合致するという考え)」を主な思想としています。日本では江戸時代に中江藤樹という儒学者によって紹介されました。

■「知行合一」は吉田松陰の座右の銘としても有名です

江戸時代末期の武士で、思想家や教育者でもあった吉田松陰は「知行合一」を座右の銘としていました。高杉晋作や伊藤博文をはじめ、明治維新で活躍した多くの志士を育てた私塾「松下村塾(しょうかそんじゅく)」には、「知行合一」を書いた軸が掛かっていたことが知られています。


【「使い方」がわかる「例文」4選】

■1:「教えを受けたらすぐに実行する、知行合一こそが新入社員のなすべきことです」

■2:「知識ばかり増えて実践が伴わないのは、知行合一という我が社の理念から外れている」

■3:「学びあれば実践あり。知行合一の精神を忘れず、これからもまい進してまいります」

■4:「物知りなだけでなく行動力もある、彼こそ知行合一な人だ」


【「知行合一」をわかりやすく言うための「類語」「言い換え」「関連語」】

■類語・言い換え

類語には「知行一致」があります。知行は「知識」と「行為」という意味。これが、一致していること、つまり、知識と行為とに食い違いがなく、「知っているのにやらない」ということがない、ということです。

■関連語1:先知後行(せんちごこう)

「先知後行」は陽明学以前の朱子学(しゅしがく)の考え方。行為を身に付けるためにはまずは知識を身に付ける必要がある、という考え方です。「先知後行」も「知行合一」と同様に、知識だけでなく行為も重視されていますが、「先知後行」は「まずは知識を身に付ける」という部分が先行し、知識ばかりで実行が伴わない王朝の官僚化が進んでしまいました。王陽明は、実践を置き去りにした朱子学の「先知後行」に疑問をもち、知識と実践は一体であるという「知行合一」にたどり着いたのです。

■関連語2:言行一致(げんこういっち)

「知行合一」と似た言葉ですが、「言行一致」は「発言」を実行に移すこと、「知行合一」は「知識」を実行に移すことという違いがあります。


【「知行合一」を「英語」で説明すると?】

「知行合一」をそのまま表す英単語はありませんが、下記のように説明するとシンプルでわかりやすいのではないでしょうか。

・Unity of knowledge and action.(知識と実践はひとつだ)

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今回は、中国の儒教の教えについて学びました。吉田松陰の例を挙げましたが、現代でも「知行合一」を座右の銘とする経営者は多いようですよ。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『四字熟語辞典』(学研)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :