3月29日は「マリモの日」。「マリモ」と聞くと、多くの人は丸くふわふわとしたかたちを想像しますが、実際のマリモの姿はどうやらかなりイメージとは違うようです……今回のテーマは「マリモの日」。その由来や、マリモに関する雑学など、あわせて解説します。

【目次】

マリモは植物です。
マリモは日本の特別天然記念物です。

【「マリモの日」って知ってる?「基礎知識」】

■「マリモの日」っていつ「何日」?

「マリモの日」は毎年3月29日です。

■なぜ3月29日?「日にち」の由来

「マリモの日」は、1952(昭和27)年3月29日に、北海道・阿寒湖(あかんこ)のマリモが国の特別天然記念物に指定されたことに由来します。さまざまな大きさのマリモがありますが、阿寒湖のマリモは直径が大きく、ビロード状の美しい球型をしているのが特徴。その希少性から、世界的に価値が高いと評価されました。また、マリモは環境省から絶滅危惧種の指定も受けていて、毎年10月8日〜10日には、阿寒湖でマリモ保護を目的とした「まりも祭り」が開催されていますよ。


【「マリモにまつわる「雑学」あれこれ】

■そもそもマリモって何?

マリモは漢字で「毬藻」。淡水性の緑藻の一種です。球状の集合体を形成することで知られ、日本では北海道や東北地方の湖沼に点在して生息しています。1897(明治30)年に札幌農学校(現北海道大学)の植物学者・川上瀧彌が、阿寒湖の尻駒別湾(シリコマベツ湾)で最初に発見し、その形状から「マリモ(マリのような藻)」と命名しました。その後、1925年ごろに行われた森林伐採による土砂流入など、地域の開発作業が発端となり環境が激変。残念ながら1956年の調査で、尻駒別湾のマリモは全滅してしまったことがわかっています。

■寒冷地以外に生息しているマリモもある

1956年、富士山ろくにある山梨県の山中湖で発見されたマリモ族の一種が、東大理学部の植物学教授によって認められました。それま、日本のマリモの生息地の最南端は青森県の下北半島にある左京沼とされており、寒冷地でない場所でのマリモの生息は、世界的にも貴重。フジマリモと名付けられたこのマリモは、その後河口湖や西湖で発見されたマリモとともに、山梨県天然記念物に指定されています。

■マリモはやわらかくてふわふわ?

「マリモ」という言葉から、多くの人は丸くふわふわとしたかたちをイメージしますが、実際には球体を構成する細長い繊維がマリモの個体としての姿です。神戸大学大学院工学研究科の研究により、風や波による回転・振動によって、マリモの表面に積もった有機物などが振り落とされて光合成による成長を促すことや、マリモ同士が擦れあうことで表面が磨かれて球形が形成されることがわかっています。実はほとんどの生息地では、マリモは糸状の形態で暮らし、球状の集合体はつくりません。また、見た目は柔らかそうに見えますが、実際に触ってみると案外硬く、チクチクとした感触なことに驚きます。

■マリモには花がないのに花言葉がある!

マリモの花言葉は「懐かしい関係」。マリモは成長の過程でバラバラになっても、死んでしまったわけではなく、細い藻が再び集まって小さなマリモに成長していくそうです。あるいは、湖の底で丸いからだを寄せ合う姿のイメージが、「懐かしい関係」という言葉につながったのでしょうか。

■マリモの寿命は?

マリモにも寿命はありますが、正しい管理方法で育てられれば枯れることはまれ、と言われています。阿寒湖には、300年生きているという大きなマリモが存在しているそうですから、マリモは人間よりもはるかに長い寿命をもっているようです。

■世界一大きいマリモは?

神戸大学大学院工学研究科の研究グループは、阿寒湖のマリモの詳細な成長速度と巨大マリモが存在する上で理想的な水温環境の解明に成功しています。研究結果によれば、直径5cmのマリモが10cmに成長するためには約6.6年、20cmに成長するためには14.2年から18.5年程度の期間が必要、また、直径15cmのマリモが20cmに成長するためには約4.6年が必要であるなど、これまでに不確かであったマリモの年齢を詳細に評価することが可能となりました。阿寒湖では最大で直径30㎝以上の球状マリモが見つかっていますが、直径が20cm以上に成長する巨大マリモは世界中で個体数が減少し、現在、阿寒湖が世界で唯一の巨大マリモの群生地と考えられています。

***

現在、丸いマリモの群生が見られるのは、世界中で阿寒湖、しかもチュウルイ湾だけ。チェウルイ湾に吹く風が、マリモの育成に適しているのではないかと言われています。そして特別天然記念物のマリモをじっくり観察できる施設が、チュウルイ島の「マリモ展示観察センター」と 「阿寒湖畔エコミュージアムセンター」の2か所です。いつか訪れる機会があれば、仲良くからだを寄せ合うマリモの姿に癒やされてみたいものです。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:神戸大学「マリモが痩せている?巨大マリモの理想的な水温環境を解明」https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/2023_10_12_02/#:~:text=マリモは大きくなると中央,と考えられています%E3%80%82 :