一年365日、欠かさず何かしらの記念日が設定されている、記念日大好きな国、ニッポン。なかには業界のこじつけ(?)的記念日も多くありますね。さて、4月5日は「ヘアカットの日」。たいていの人が1年のうち何度もヘアカットをすると思いますが、なぜ4月5日が「ヘアカットの日」なのでしょうか? ヘアスタイルや美容にまつわる小ネタも併せてご紹介します。

【目次】

「ヘアカットの日」にヘアサロンや理容店でなんらかのサービスがあったら嬉しいですね…。
「ヘアカットの日」にヘアサロンや理容店でなんらかのサービスがあったら嬉しいですね…。

「ヘアカットの日」って何?】

■「ヘアカットの日」とは

4月5日は「ヘアカットの日」とされています。1月3日が「ひとみの日」、3月10日が「砂糖の日」、11月22日が「いい夫婦の日」のように、日付の読み方の語呂合わせというわけではなさそうです。実は「ヘアカットの日」は、明治維新を迎えて大きく変わろうとしていた時代を反映したものでした。

■由来

「ヘアカットの日」は、明治5(1872)年4月5日に出された「女子断髪禁止令」に由来します。「女子」「断髪」「禁止令」いずれも現代では使い方にナーバスにならざるを得ないようなワードですね。「女子断髪禁止令」とは、女性はみだりに髪を切ってはいけないと、当時の東京府が発令したものです。


【自由なき「ヘアカット」、明治維新で前進?後退?】

■江戸時代の男性のヘアスタイル

江戸時代は、士農工商という身分制度が明確に存在しました。それは男性の髪型もしかり。武士は前額から頭の中央にかけて丸く剃り落とした月代(さかやき)に丁髷(ちょんまげ)というスタイルで、これは戦で兜(かぶと)をかぶる際に蒸れない、滑りにくいということから主流となったヘアスタイルです。古くは平安の時代、冠や烏帽子(えぼし)をかぶるために考案されたもの、ともいわれています。そしてこの髪型は、江戸時代には武士特有のものから、次第に裕福な町人層や農民にまで広がっていきます。ところが常に月代部分をツルツルにしておくには散髪代もかかるため、幕末には月代をつくらない総髪による丁髷スタイルが一般化。よく知られている坂本龍馬の写真を思い浮かべてください。確かに月代なしの丁髷スタイルですよね。

■江戸時代の女性のヘアスタイル

女性はもっと具体的で、ヘアスタイルを見れば身分や年齢、既婚か未婚かまでわかりました。少女時代は、頭頂部にふたつの輪をつくって髷(まげ)とし、その根元に毛先を巻きつけた稚児髷(ちごまげ)を結いました。その後、結婚するまでの娘時代は島田髷、結婚後は丸髷に。若い妻は髷を大きく結い、毛髪量が少なくなる年配者は髷が小さくなっていきます。

■明治維新でヘアスタイルも大変化

いずれにしても、江戸時代は男女共に「髷が結える長髪」が基本でした。ところが明治維新を迎えると、富裕層は一気に西洋化。男女ともに“断髪して洋装”が流行します。これは、明治4(1871)年に明治政府が布告した「散髪、制服、略服、礼服ノ外、脱刀モ自今勝手タルベシ」という「散髪脱刀令(断髪令)」を受けてのもの。髷を結わず散髪してよい、士族でも帯刀しなくてもよいというこの法令は、身分ごとに決められていた髪型や服装に自由を認めたものでした。男性の断髪や洋装は、文明開化のシンボルとなったのです。

ところが女性はどうでしょう。男性に続いて断髪する女性も現れましたが、世論は女性が髪を短く切ることに猛反発。「長い黒髪こそが日本女性の象徴」「女性らしいスタイルだ」という価値観が浸透していた時代です。そして男性の「散髪脱刀令」の翌年の4月5日に「女子断髪禁止令」が出されたのです。これを由来として、現在ではこの4月5日を「ヘアカットの日」としています。ちなみに、「女子断髪禁止令」は女性たちの反発を受け、「夫人束髪(そくはつ)令」になりました。これは、「髪を切ってはいけないけれど、束ねるのはOK」という法令です。


【「ヘアカットの日」の雑談に!ヘアカットにまつわる雑学】

■美容室と理容室の違い

美容室は女性が、理容室は男性が行くものだと、なんとなく認識していませんか? 実はこのふたつ、昭和32(1957)年に制定された美容師法と理容師法によって、その定義が明確に定められているのです。

美容所(美容院)は美容サービスを提供するための施設。美容師法に基づいてヘアカットやカラーリング、パーマ、メイクなどによって容姿を美しくすることが目的です。一方、理容室(理容院)は理容師法に基づき、頭髪の刈り込みや顔剃りなどによって容姿を整える施設。ただし美容所と同じようにカットやカラー、パーマなども行います。そして、理容室はカミソリなどの刃物を使用できますが、美容所はさみ以外の刃物は使用できない、この点が大きく違うわけです。

■多いのはどっち?全国美容・理容室数

厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、令和4年度は理容所が11万2,468施設で前年度比1.7%減少、美容所は26万9,889施設で前年度比2.1%の増加です。ここ数年を見ても、理容室は減少傾向で美容室は増加傾向にあります。

都道府県別の美容室数を見てみると、特に多いのは北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡。人口数を考えると納得ですね。おもしろいのが沖縄県で、佐賀、長崎、大分、宮崎をおさえ、なんと九州では鹿児島、熊本に次いで3番目に美容室が多いのです。沖縄の人は美意識が高いということでしょうか?


【「ヘアカットの日」以外にもたくさん!美容業界の「〇〇の日」】

「ヘアカットの日」以外にも、美容関係での記念日があります。いくつかご紹介しましょう。

■3月8日は「散髪の日」

■9月4日は「櫛(くし)の日」

■11月10日は「いい頭皮の日」

これらは日付の語呂合わせですね。

■7月7日は「ポニーテールの日」

7月7日の七夕は「浴衣の日」でもあるのだとか。由来は、浴衣にポニーテールが似合うからとも、ポニーテールにした様子を横から見ると「7」に似ているからとも。

■11月11日は「ヘアドネーションの日」

ヘアドネーションとは、ヘア(毛髪)とドネーション(寄付)による言葉。病気や事故などで毛髪を失った子供たちに、医療用ウィッグをつくって無償提供する活動のことです。「ヘアドネーションの日」は、この記念日を通して毛髪を寄付する人と、ウィッグを製作する団体などとが活動しやすい環境を整え、拡充を図ることを目的として設定されました。平成11(1999)年の11月11日に、この日付で「1」が並ぶ様子が毛髪の流れに見えることから決められたのだとか。ちなみに11月11日は「ポッキー&プリッツの日」でもあります。

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スキンケアにお金と時間をかけたり、メイクを楽しむ男性が増えました。平安貴族たちは男性も美容やファッションにいそしんだという歴史もあり、そもそも自然界では雌の気を引くために雄のほうが色鮮やかで美しいもの。4月5日の「ヘアカットの日」をきっかけに、みなさん、春満開の気分でヘアスタイルやカラーを変えてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/国立公文書館https://www.archives.go.jp/ /厚生労働省・令和4年度衛生行政報告https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/22/ :