「あてこすり」は、ほかのことにかこつけて悪口や皮肉を言うことを指す名詞。「あてこすりが通用しない」などと言いますが、使ったことはありますか? ニュアンスはわかっているつもりだけれど…という人も多いのではないでしょうか。 あまり日常会話では使わない言葉かもしれませんが、類似語や言い換え表現なら使っているかも!今回は「あてこすり」 言葉の正しい意味を理解して、しっかり“大人の語彙力”を高めていきましょう。
【目次】
【「あてこすり」ってどんな言葉?意味や漢字など基礎知識】
■漢字で書くと
「あてこすり」を漢字にすると「当て擦り」になります。
■意味
ほかのことにかこつけて、悪口や皮肉を言うこと。また、その言葉。悪口や非難をはっきり表現せず、遠回しに伝えることです。ただし、相手はそれと気付かない場合も。「あてこすり」は名詞で、「あてこする」とすると動詞になります。「あてこすりを言う」「あてこする」というように使います。
■語源
「あてこすり」は「あて+こする(こすり)」の2語で構成された熟語です。
「あてる」は室町時代に「皮肉を言う」という意味で用いられ、「こする(こすり)」は「嫌味を言う」という意味の言葉。これらを組み合わせて「あてこすり」となりました。江戸時代には同じ意味で「あて口」や「耳こすり」などの言葉も誕生。
■方言としての「あてこすり」
「あてこすり」を方言として、別の意味で使用している地域もあります。
広島県や大分県の一部地域では「風であてこすりの火がすぐに消える」というように使います。この「あてこすり」はマッチのことですね。高知県では、見当を付けずいい加減にする言動や、怒ってつっけんどんな態度での言動を「あてこすり」と言うのだそう。
【「使い方」がすっきりわかる「例文」5選】
■1:「はっきりとは言わないけれど、あれは私へのあてこすりに違いない」
■2:「あてこすりが通用しないと、ますますイライラする」
■3:「あてこすりを言って満足かもしれないが、相手が鈍感だったら意味がないじゃないか」
■4:「あてこすりではなく正々堂々と非難や意見をしたほうが、お互いすっきりするんじゃないかな…」
■5:「仕事が早くて助かるよ~って、今日もあてこすりを言われた」
【「あてこすり」と「あてつけ」どう違う?「類語」「言い換え」表現】
■類語
・当て付け:「当て付け」は「あてこすり」と同じいいですが、「あてこすり」が言葉による非難を指すのに対し、「当て付け」は言葉だけでなく態度や行為に対しても使います。
・嫌味/嫌がらせ:相手の嫌がるようなことを、わざわざ意地悪く言ったりしたりするさま。
・皮肉:意地の悪い言動。骨身に堪えるような痛烈な非難。また、遠回しに意地悪を言ったりしたりすること。また、そのさま。
・あて口:あてこすり、あてこする言葉のこと。
・耳こすり:あてこすり、皮肉の言葉。小声でささやくこと。
■言い換え表現
・毒を含んだ言い回し:この場合の「毒」は「悪意」という意味。
・棘(とげ)のある言い方:相手を傷つけたり、嫌な気持ちにさせたりする言葉、言い方のこと。
・遠回しの嘲(あざけ)り:「嘲り」とは、馬鹿にして悪く言ったり笑ったりすること。
【英語で「あてこすり」を言うと?】
「あてこすり」は[insinuation]や[snide remark]などで表せます。また、[make a snide remark]で「あてこすりを言う」、[make a snide remark about~]で「~をあてこする」や「~にあてこすりを言う」になります。
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遠回しに非難したり、オブラートに包んだように悪口を言ったりする「あてこすり」は、大人がとるべき態度とはいえません。意見があるなら、堂々と伝えるべき。凛々しくありたいものです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『使い方のわかる 類語例解辞典』(小学館)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :