結婚せず、そのため金銭的にも余裕があって自由で…仕事もプライベートも謳歌しているように見える未婚者を「独身貴族」と呼ぶようになったのはいつから? 就業から結婚、子育て、高齢になってからの生活など、ライフスタイルや価値観が大きく変化した平成時代を経た今、「独身貴族」はどんな存在なのでしょう。今回はビジネス雑談に使えそうな「独身貴族」や、最新の結婚事情について解説します。

【目次】

女性は「独身貴族」ではなく「おひとりさま」です。
女性は「独身貴族」ではなく「おひとりさま」です。

【すべての独身者を指すのではありません!「独身貴族」の「定義」】

■「独身貴族」とは?

自分のために自由に使える稼ぎと時間がある独身男性を指して「独身貴族」と呼ぶことが多いようです。やりがいと高収入が両立する仕事に就き、ファッションや健康に気を使い、多彩な趣味をもっている――「独身貴族」はこんなイメージではないでしょうか。経済的に余裕がない、人生を楽しんでいない(楽しんでいるように見えない)人は「独身貴族」の範疇ではありません。

■いつから?

独身貴族というワードは、高度経済成長期が終わり、日本の経済が比較的高水準で安定してきた1977(昭和52年)ごろから使われはじめました。発祥ははっきりしません。

■女性はなんと呼ぶ?

男性の「独身貴族」に対し、独身で経済的に余裕があり、アフター7や休日を楽しんでいる女性は「OL貴族」と呼ばれていました。これは、お給料の大半をおしゃれや趣味、旅行などに費やすことができる実家暮らしの独身OLのことを指していました。しかしそれもかなり懐かしい響き…。最近では「独身女性」を指す「おひとりさま」という言葉が定着していますが、このワード自体には「裕福」というニュアンスはありません。


【「独身貴族」はずるい?】

『日本国語大辞典』に、「独身貴族」は「金銭や時間にゆとりがある独身者を羨んで、家族持ちの側から言った語」とあるように、「独身貴族」という言葉にはやんわりと「うらやましい」「ずるい」といったニュアンスを感じます。

現代社会は“家族”という単位をベースに成り立っています。パートナーであるふたりを核に家庭を築き、子どもを育てて次の世代へとつないでいく。素晴らしい営みですが、金銭的にも時間的にも“家族”に縛られます。家族をもつことは大きな喜びが伴う生き方ですが、既婚者から見ると“悠々自適な独身者”がうらやましいと感じることもあるでしょう。だから独身者自らが「俺って独身貴族だから…」と言うのではなく、他者、特に既婚者から、うらやましさや皮肉を込めて使われることが多いのです。


【令和の「独身貴族」はどれくらい?「生涯未婚率」】

現在、「独身貴族」はどれくらいいるのでしょうか。少子化や子育て問題と供によく語られるのが「生涯独身率」です。「生涯独身率」は冷え切った経済下の日本では、結婚も子育ても不安で踏み切れない…といった文脈で報道番組などで見ることがあると思います。「貴族」という意味合いをいったんおいて、「独身」の視点から、このデータを見ていきましょう。最新の調査(2020年国勢調査)によると生涯未婚率(50歳時未婚率)は男性28.3%(女性は17.8%)、うち、正規雇用の男子従業員の生涯未婚率は19.6%(女性は24.8%)です。正規雇用=収入が安定、と考えると、この、全体の約2割に入る男性陣が「独身貴族」に相当しそうです。


【「独身貴族」を英語で説明できる?】

独身は英語で[single]、独身男性は[single men]、独身女性は[single women]です。これまで確認してきた「独身貴族」については、合成語として[a swinging single]と『プログレッシブ和英中辞典』にあります。2013年10月から12月に放送された、草なぎ剛さんと北川景子さん、伊藤英明さんらによるフジテレビのドラマ『独身貴族』を覚えていますか? この番組のタイトルにも[a swinging single]という表記がありました。最近では、裕福な独身男性に対して使う[bachelor(バチェラー)]という単語にもなじみがあるのでは?

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自由を謳歌しているように見える「独身貴族」も、よいことばかりではありません。ふと寂しくなったり、将来に不安を感じることもあるでしょう。「独身貴族」も「おひとりさま」も「既婚者」も「家族持ち」も、安心して“自分らしく”いられる社会であってほしいですね。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『東洋経済オンライン』https://toyokeizai.net/articles/-/685895/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉プラス』(小学館) :