「シャネルの靴」に出合う|名品が生まれる工房を特別取材。足元にサヴォアフェールと美学、卓越したセンスを宿して、新しい一歩を凛と踏み出したい
足元にエレガントな美を宿し、いつの時代も羨望を集める「シャネル」の靴。アイコニックなエッセンスが詰まった新作シューズを手掛ける、イタリアの工房に潜入。メゾンに伝わるサヴォアフェールの秘密をうかがいました。
イタリア・ミラノで特別取材!麗しきアイコンシューズが生まれる「ROVEDA(ロヴェダ)」を訪ねて
アイコニックな「シャネル」のシューズを生産する工房「ROVEDA」(以下「ロヴェダ」)。画期的なシステムと職人たちの情熱、愛に支えられた物づくりの背景を訪ねました。
ミラノから車で約1時間、緑豊かな地にシューズ工房「ロヴェダ」はあります。アイコニックな「シャネル」のシューズが生まれるこの場所へ、今回特別に取材が許可されました。出迎えてくれたのは、CEO兼マネージング・ディレクターのナディア・ミニニさん。歴代のアーカイブシューズが展示されているギャラリーのようなスペースから、「ロヴェダ」を巡る時間がスタートしました。
工房の中はカラフルなネオンでスローガンが掲げられていて、それぞれの作業パートで職人の方々が働いています。ナディアさんが通ると職人たちが笑顔で話しかけてきてジョークを交わしたり…ハッピーな空気がとても印象的。
「ここには開発センターも併設されています。これにより、生産部門とのコミュニケーションが密になり、スムーズでスピーディな生産が実現します」と、ナディアさん。
「ロヴェダ」ではさまざまな画期的なシステムが採用されていて、そのひとつがエキスパートの職人と後輩の職人がバディを組んで生産に携わること。
「イタリアでの技術の継承はいわゆる “背中を見て覚える” 方式がまだ一般的で、それだと技術が循環していきません。このシステムでは、第一段階としてまずは定年退職した職人たちに復帰してもらい、経験値の高い職人へ技術を教えることからスタートしました。若い職人に技術を教える教師として、トレーニングを積んでもらうのです。第二段階は技術を学びながらその歴史、メゾンの伝統、さらには “美” についてなど、自社の〈学校〉で学びます。美しいものがいかに文化と社会に貢献しているのかを知ってもらうことが目的です。自分たちの仕事の背景に何があるのか。文化がある、歴史がある、社会貢献、ファッションがある。学ぶことでメゾンの歴史と現在、そして未来に対してのビジョンと感性を共に育んでいるのです。 “シャネル” の精神がきちんと伝わるような仕事のやり方を続けていきたいですから。 “シャネル” に携わるこの仕事は、ギャラクシー(宇宙)のようだと感じます」
「シャネル」というギャラクシーで物づくりに携わる喜びとは?とナディアさんに聞いてみました。
「 “シャネル” のシューメイキングに携わる、そのものが喜びであり光栄なこと。ギャラクシーの中の大きな宝の一部分になっているような感覚といいましょうか。そんな感覚がとてもうれしいのです。 “ロヴェダ” で働く全員で素敵な映画、素敵な世界をつくっていると思います。ひとりひとりがその中の登場人物であることを誇りに思い、情熱を傾けて働いている、そんな映画です」。
その情熱とプライドが生み出す職人技をご紹介します。
「ロヴェダ」のエキスパートと呼ばれる職人は勤続40年以上の人も。アトリエでは若い職人と2人1組で生産を担当するシステムが採用されています。教育のための学校も開設されていて、ラグジュアリーな物づくりの背景までしっかりと学ぶことができるのも画期的。工房内では緻密な手作業による工程と、最新のテクノロジーを利用した工程が共存していて、増加するシューズのニーズに対応。
下に登場するシューズのビジュー付け作業を見学。ひとつひとつのビジューを手作業で縫い付けていく。専門的な作業部門が並ぶ工房内では、職人たちが和気藹々と作業している姿が。
イタリア・ミラノのシューズ工房「ロヴェダ」に密着!究極の職人技に託されたメゾンの想い
「シャネル」の靴が生み出されるイタリアのアトリエ「ロヴェダ」に潜入取材。メゾン独自の視点でつくり上げられる卓越した職人技とこだわりを、引き続きCEO兼マネージング・ディレクターのナディア・ミニニさんにうかがいました。
◇職人の情熱が注ぎ込まれた優美な一足
ファブリックとレザーを組み合わせたスリングバック。ラウンドトウには、刺繍で表現されたダブルCが。
「 “シャネル” のシューズは芸術的なものばかり。職人はまるでアーティストのように、繊細な作業に探究心をもって取り組んでいます」とナディアさん。
柔らかなファブリックにビジューを贅沢に刺繍した、クラフツマンシップが息づくデザイン。異素材を組み合わせた一足には、あらゆる技術力が集約されている。
熟練の手仕事と最新のテクノロジーが融合する作業工程
2000年より「シャネル」の傘下となり、メゾンの靴を担うイタリアのシューズ工房「ロヴェダ」。最高級のシューズ製造の拠点となるアトリエでは、約400名もの職人が細分化された各工程を手掛けています。
「大切にしているのは、ブランドの歴史に基づく美学を理解することです。職人一人ひとりがメゾンに伝わる感性に共感できてこそ、ブランドならではのシューズに仕上がるものだと考えています」と、ナディアさん。
「靴づくりというのは、パーツをつなぐだけでは終わらないものです。繊細なカーブや見えない部分の処理、気候による伸縮の可能性など、足にフィットさせるためにはあらゆる想像力を働かせる必要があります。そのためには手作業だけではなく、最新のテクノロジーを駆使。機械を使った作業工程も取り入れています」
靴に対する情熱が極上の一足を生み出す「ロヴェダ」の職人技。また師匠と弟子がバディを組むことで、常に職人の育つ環境を維持するなど、メゾンの技術力の継承にも貢献しています。
ビジューをレザーにひとつひとつハンドメイドで刺繍を施す作業には、熟練の職人技が求められる。
ビーディングを終えたパーツに合わせてレザーをカット。透明のアクリルで保護しながら手作業で行われる緻密な工程。
レザーの伸縮性はマシーンで測定。あらゆる角度からかかる圧力や気候による変化まで見越し、細かな部分まで徹底的に検査。
レザーをカットして作られるシューズのパーツは、マシーンを使って型紙がプリントされる。
丁寧に縫い合わせられたパーツは、足にフィットするように手で形づくることが必要。絶妙な角度をつけることで、歩きやすい一足に仕上がる。
完成直前のシューズを最終チェック。細部まで確認し、エッジは削ることでどこから見ても美しい一足に仕上げていく。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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