「子どもの頃の懐かしい情景が走馬灯のようによみがえった」という文章を理解することはできると思いますが、具体的にどのようなことを言っているのでしょうか? 今回解説するのは「走馬灯」です。そもそもの何のことなのか、比喩的に使われる場合はどういう意味なのか、チェックしてみましょう!

【目次】

「走馬灯」はお盆のときに見る「灯籠」と同じ?
「走馬灯」はお盆のときに見る「灯籠」と同じ?

【「走馬灯」とは?本来の意味と比喩的意味など「基本知識」】

■読み方

「走馬灯」は「そうまとう」と読みますが、「そうばとう」と読むこともあります。

■本来の意味・仕組み・伝来

影絵の仕掛けを利用した「回り灯籠(まわりどうろう)」のこと。内外二重につくった灯籠の内側の筒面に紙を切り抜いてかたどった絵を張り、その中心に備えたろうそくの炎が起こす気流によって筒が回転し、外側の面に陰て映る仕組みです。中国から伝来した「走馬灯」は江戸時代初期に宗教的意味合いで普及。江戸中期には遊戯的な技法や工夫がもたらされ、夏の納涼玩具として発達しました。江戸では錦絵(にしきえ/多色刷りの浮世絵のこと)の版下職人の内職として商品化されたとか。現代でもお盆飾りなどで提灯型の回り灯籠が用いられています。

■比喩的表現の意味

「走馬灯」の回転しながら次々と影絵を見せる仕組みを、過去の記憶が次々とよみがえるという現象にたとえ、「走馬灯のようによみがえる」などと比喩的に使われます。この現象は死の直前に「人生をダイジェストで振り返る」ということも含んでいるようです。実際に起こる現象かどうかは定かではありませんが、カナダのある研究機関が2022年2月に発表した論文によると、科学的なアクシデントで測定された死の間際の患者の脳波に、夢を見ているときや記憶を呼び起こしているときと同じパターンの動きがみられたのだそう。


【「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「プロジェクトチームの解散を目前にして、苦労も喜びも走馬灯のようによみがえってきました」

■2:「九死に一生を得た人が、人生が走馬灯のように見えたというのは本当だろうか」

■3:「つらかった記憶の走馬灯がよぎる」

■4:「走馬灯が駆け巡るように、記憶を掘り起こしてみよう」

■5:「よい思い出ばかりが走馬灯のように去来した」


【「走馬灯」を英語でどう言う?】

比喩としての「走馬灯」は[flashback][flashed back]で、「回り灯籠」としては[a revolving lantern]で表せます。さらに[in rapid succession]を加えることで、素早く駆け巡る様子が表せます。

・Memories of my childhood were flashed back in rapid succession.(子ども時代の思い出が走馬灯のように駆け巡った)

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“マイブーム”や“ゆるキャラ”などの流行の仕掛け人で、イラストやエッセイなど幅広く活躍するみうらじゅんさんの、朝日新聞土曜版「be」にて連載中の「マイ走馬灯」をご存じですか? コロナ禍を機に、自身が死の間際に見るであろう「走馬灯の予想画」を描き解説する連載です。自分が見るならどんな情景だろう…と考えてみるのもおもしろそうですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/BBC NEWS JAPAN https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60502499/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :