青い空を背景に、5月の爽やかな風にたなびく「鯉のぼり」…そんな季節になりました。近所では見かけなくても、この時季になるとテレビや新聞といった報道で見ることがあるでしょう。今回は「鯉のぼり」に関するあれこれをご紹介。鯉は立身出生のシンボルだとか、色や数、吹き流し、飾る時期など、雑談に活用できそうな話題を取り上げます。

【目次】

「打算的」と思われてしまう人の特徴は?
現代では室内用の「鯉のぼり」も人気です。

【「鯉のぼり」とは?「由来」「歴史」など基礎知識】

■「鯉のぼり」とは?

「鯉のぼり」とは、布または紙で鯉の形につくった幟(のぼり)を、5月5日の端午の節句時に子どもの成長を願って戸外に飾るもの。現代では室内用を飾る家庭も多くなりました。「鯉の吹き流し」や「五月のぼり」とも呼ばれます。

■何のため?「由来」

江戸時代、武士の家で男児が生まれると、その子の出世を願って家紋や馬印(うまじるし)、鍾馗(しょうき)などの武者絵を描いた幟を家の前に立てました。それを庶民が真似て、縁起物の鯉を幟に描いて立てるようになったのがはじまりとか。

■なぜ「鯉」なのか?

中国の「鯉が滝を登りきると龍になる」という登龍門伝説から、鯉は立身出世の象徴なのです。

■何匹?何色?

現在では、大きな黒い鯉(真鯉)、少し小さな赤い鯉(緋鯉)、もっと小さな青い鯉の3匹を掲げるのが基本形のようです。初期の鯉のぼりは真鯉だけでしたが、明治時代後半から大正時代にかけて真鯉と緋鯉の一対になりました。これは真鯉を父親、緋鯉を子どもに見立てたもの。昭和30年代後半にはさらに青い鯉も加わり、真鯉が父親、緋鯉が母親、青い鯉が子どもを表すように。さらにピンクや黄色、オレンジなどさまざまな色が登場し、家族の人数分用意することも。カラフルな子鯉は1964年の東京オリンピックのころに、五輪の色をヒントにある職人が考案したといわれています。

■吹き流しって?

上から真鯉、緋鯉、青い鯉を掲げますが、さらにその上にはカラフルで細長い「吹き流し」を。これは戦国時代に魔除けとして軍陣で用いたもので、もとは古代中国の陰陽五行説に基づいたもの。陰陽五行説とは、世の中は「陰の気」と「陽の気」、そして「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素で成り立っているという思想です。「木」は青色、「火」は赤色、「土」は黄色(金色)、「金」は白色、「水」は黒(紫色)に通じるとされ、これが吹き流しの5色と結びついているのだとか。

■竿のてっぺんには目印が

「鯉のぼり」や「吹き流し」を掲げた竿のてっぺんには、回転球や矢車が付いています。これは神様への目印で、「うちには子どもがいます、どうぞお守りください」ということなのだとか。


【飾るのはいつからいつまで?】

■春分の日以降の晴れの日に

「鯉のぼり」は、3月下旬の春分の日から4月下旬までに飾りしましょう。戸外に飾るなら晴れた日にするといいようです。

■梅雨までには片付けて

「節句が終わっても雛人形を片付けずにいると嫁に行き遅れる」と聞いたことはありませんか? これは、厄を身に受けた人形は早く片付けて厄を遠ざけるという意味や、役目を終えたものは早々に片付けなさいという躾(しつけ))の観点から、あるいは早く片付けると早く嫁に行ける――ということのようです。「鯉のぼり」にはそういったいわれはありませんが、梅雨になる前には片付けましょう。茨城県の「竜神峡鯉のぼりまつり」や、群馬県の「舘林さくらとこいのぼりの里まつり」などは、ゴールデンウィークが終わつ週末辺りまで開催されているようです。そして、片付けるのも晴れた日がいいでしょう。雨などで汚れていたら洗濯をしてよく乾かし、カビが生えないよう気を付けて保管してくださいね。


【何歳まで?不用になったらどうする?】

■7歳を目安に

「鯉のぼり」は子どもの成長を願ったもの。では、何歳まで飾るものなのでしょうか。子どもの成長の節目とされるのは3歳、5歳、7歳です。医療が未熟だった時代は子どものうちに病気で命を落とすことも多く、「鯉のぼり」に託した思いもひとしおだったでしょう。7歳になればある程度体つきもしっかりするので、一般的には7歳ごろまで「鯉のぼり」を飾るようです。

■不用になったら…

鯉のぼりが不用となったら、素材や大きさなど地域のルールに従って処分しても構いません。親戚や知り合いに譲ったり、フリマサイトに出品するのも一案です。寄付を募っている自治体や団体もあるようですね。あるいは、人形供養を行っている寺社に相談してもいいでしょう。

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「こいのぼり」という童謡はご存知ですよね。大きい真鯉はお父さんで、小さい緋鯉は子どもたちだと歌っています。「お母さんはどうした!?」と突っ込みたくなりますが、昭和6(1931)年ごろに発表された歌なので、まだ青い鯉は登場していなかったのですね。今回は「鯉のぼり」のさまざまな豆知識をご紹介しました。

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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社)/日本鯉のぼり協会 https://www.koinobori-nippon.jp/ :