今回取り上げる「男尊女卑」は、男性を尊重し、女性を軽視すること、またそういった観念や慣習を意味する熟語です。前時代的ではありますが、令和の現代においてもいまだ「男尊女卑」な思考を感じさせる発言をする人や、社会慣習を感じることがあります。どうしてそのような観念が根付いたのかといった歴史や、似たような言葉「ミソジニー」についても解説します。

【目次】

「男尊女卑」は男性だけの観念?
「男尊女卑」は男性だけの観念?

「男尊女卑」とは?超基礎知識】 

■読み方

「男尊女卑」と書いて「だんそんじょひ」と読みます。 

■意味

「男尊女卑」とは、男性を優位に、女性を劣位に位置づけて、男女平等を否定し、経済的、政治的、社会的、文化的な女性差別を許容する観念、価値観、慣習を指します。


【「男尊女卑」の「歴史」】

■いつから?どこで?

「男尊女卑」という観念は、古代中国に始まったとされます。中国の戦国時代(紀元前5世紀から紀元前221年)に活躍した列子 (れっし)という思想家が、著書『列子』に「男女之別、男尊女卑」と書いたことが言葉としての誕生のよう。「尊」は高い、「卑」には低いという意味があります。

■日本での「男尊女卑」の始まりは?

日本では、8世紀前後に中国から律令制を取り入れたことに伴い、その律令制に内在していた「男尊女卑」という観念が支配層に生まれました。そして、時代とともに広く浸透、15世紀の戦国時代になると、家を継ぐのは男性で、男児は早くからそのような教育を受けて育ちます。一方、武家の女性は、家を繋ぐため(子孫を残すため)の存在として扱われていました。江戸時代になると「男性は内外で重要な役割を担い、女性は男性に尽くすもの」という観念が一般化。江戸時代の儒学者、薬学者で「日本のアリストテレス」と評された貝原益軒(かいばらえきけん)が『和俗童子訓(わぞくどうじくん)』のなかで、良い女性の条件として「主人や舅姑(きゅうこ)に尽くす」「子どもが産める」「男の言うことを聞く」などをあげ、より女性蔑視で男性優遇の考え方が広まっていきました。

■明治政府によって根付いた「男尊女卑」

決定的に「男尊女卑」の観念や慣習が根付いたのは明治時代のこと。近代的な法治国家を形成しようとしていた政府が手本とした西欧の近代法は、「男尊女卑」観念に基づく家父長制を採用していました。こうして“家単位”で国民を統治したことにより、この「男尊女卑」という観念が日本社会に根付いていったのです。

■「ジェンダー・ギャップ指数」と「男尊女卑」

2022年7月に世界経済フォーラムが発表した「The Global Gender Gap Report 2022」で、各国における男女格差を測る最新のジェンダー・ギャップ指数が示されました。この指数は、「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから作成され、0が完全不平等、1が完全平等を示すもので、2022年の日本の総合スコアは0.650、順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)という結果に。先進国のなかで最低レベル、アジア諸国を見ても韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果です。「男尊女卑」を長らく社会観念としてきた日本において、この「男女格差」は当然の結果と言わざるをを得ないでしょう。


例えばこれが「男尊女卑」!気を付けるべき「事例」

■「男性は社会で活躍し、女性は家庭を守るもの」という考え

■「重要な役割や仕事は男性に、女性はサポートや雑用に」という考え

■「女性官僚」や「理系女子」「女性が〇人入閣」など、わざわざ“女”をピックアップして述べること

■昇進などで女性を冷遇すること


「ミソジニー」との「違い」は?

■「ミソジニー」とは?

最近「ミソジニー」という言葉を聞くようになったと思いませんか? 「ミソジニー」は「女性嫌い」や「女性不信」を表す英単語[misogyny]からきていて、「女性嫌悪」「女性蔑視」を表します。ギリシャ語の「憎悪=mísos」と「女=gune」からきた言葉です。そのような思考をもつ人を「ミソジニスト」といい、女性に対する嫌悪や蔑視は男性が女性に対してもつだけでなく、女性が女性に対しても抱く感情だといわれます。反対に「男性嫌悪」「男性蔑視」は「ミサンドリ」といいます。

■「男尊女卑」と「ミソジニー」は同義?

「男尊女卑」は「男性優位、女性劣位」という男女格差の価値観が根底にある観念なので、「ミソジニー」の「女性や女性らしさへの嫌悪」とは異なります。

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昭和時代、社会や家庭にまだ色濃くあった家長制度。年かさのいった政治家に「男尊女卑」ともとられる発言が多いのは、そういう家庭で育ったことが一因かもしれません。社会秩序をつくるのは個々の価値観や観念です。「男尊女卑」が死語となり、「男女平等」や「ジェンダー・フリー」に注視しなくてもいい社会にしていかなければいけませんね。

この記事の執筆者
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