ブルガリ銀座タワー9階。銀座の街を見下ろす大きな窓から陽光がふんだんに差し込むダイニングを、卓上に活けられた初夏の花々が華麗に彩っています。ここ「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフ、ルカ・ファンティン氏が就任15周年を迎えることを記念し、この4月から1年間、ルカ・ファンティンシェフと親しい友人、あるいは、ビジネスパートナーなどとさまざまなコラボレーションイベントを開催することになりました。

記念すべき第1回目は、かの最高峰シャンパーニュ「ドン ペリニヨン」が世界のスターシェフたちをつなぐ国際的なコミュニティ「ドン ペリニヨン ソサエティ」から、フランスのパレスホテルとしても名高い「レストラン・ル・ムーリス・アラン・デュカス」エグゼクティブシェフ、アモリー・ブウール(以下アモリ―)氏がこのために来日。ルカ・ファンティン(以下ルカ)シェフとの、たった1日かぎりの夢のような美食のコラボレーションが実現しました。なんと幸運なことに私も末席を占めましたので、その模様をレポートします。

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メディアやセレブリティたちのために特別にロングテーブルが設えられていました。

「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」15周年記念コラボレーション

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ルカ・ファンティンシェフ(右)と、アモリー・ブウールシェフ(左)。

さて、このように店や地域、ジャンルを超えたシェフたちのコラボレーションイベントを2名ならフォーハンズ、3名ならシックスハンズなどと称しますが、これっていつから使われていたかしら……。私がファッションから食の分野へとシフトしたのは2012年前後ですが、少なくとも当時はそんなフレーズは使われていませんでした。一般的になったのはここ7,8年といったところでしょうか。World 50 Best Restaurantsなど、国際的なレストランのアワードが広まり、シェフ同士の交流が密になったことにターニングポイントがあったのではと推察しています。常人であっても三人寄れば文殊の知恵というくらいですから、スーパーシェフがふたり同時に食事をつくってくれるとなったら……それはもうめくるめいちゃう。

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この日は「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2004 プレニチュード2」など稀少なシャンパーニュとペアリングされました。なんという贅沢!

しかもこの日は、ルカさん、アモリ―さんともに「ドン ぺリニヨン ソサエティ」に属しているということもあって、ペアリングはすべて「ドン ぺリニヨン」のシャンパーニュ! ふたりの美食に美酒もかけあわされ、まさにビビビッとくるひと時となりました(聖子ちゃんのこのネタ、お若い方にはわからないでしょうね……)。

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ふたりの直筆サイン入りメニュー。これはもう永久保存版。

ひと口に“フォーハンズ”といっても、シェフがそれぞれの料理を持ち寄ってコースを構成するケースと、得意な技法を結集させ、ともに1皿の料理を完成させるケースなど、さまざまなパターンがあるのですが、今回は前者。デザートを含む8皿の料理が、それぞれの手により完成され、交互に運ばれてきます。「これはルカさんのお魚料理。次はアモリ―さんの仔牛料理ね」と、ふたりの個性や世界観がより際立って感じられる、面白い趣向でした。

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アモリ―シェフが手がけた料理、左から帆立の前菜、鮪の前菜、仔牛のメイン料理。

ではまず、アモリ―さんが手がけた料理から。低温調理した北海道産の帆立に、パプリカやピスタチオ、コリアンダーなどのフレッシュな野菜のモーレをかけた前菜、ビーツのソースをかけてキャビアを添えた鮪、醤油やニンニクにマリネしてからグリルした仔牛。どれもフレッシュで軽く、クラシックなフランス料理とは一線を画すものでした。なかでもモーレとはメキシコ料理におけるソースのことですが、実はアモリ―さん、奥さまがメキシコ人なのですって。スパイスも多く使うし、フランス料理も大きく変化しているのだなと改めて実感。

次にルカさんの料理。実はルカさんはフォーハンズなどのコラボベントを主催する際には、常にゲストシェフへの敬意を表し、まずゲストがつくりたい料理をヒアリングしてから自分のメニューを考え、コースを構成するのだそう。このときも、アモリ―さんが初の来日とあって「帆立や鮪を使いたい」というリクエストが先にあったのだとか。アモリ―さんの料理をまずは受けるという、言わば横綱相撲を取るルカさん。さすがですね。

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ルカシェフの料理。左から、空豆のラビオリ、カルナローリ米のリゾット、燻製アカムツのメイン料理。

ペコリーノチーズのブロード(出汁)がかかった空豆のラビオリ、アスパラガスの繊細なスライスが敷かれた下に隠された12か月熟成のお米のリゾット、そして魚介の旨味がたっぷりと感じられるペスカトーラソースをまとったスモーキーなアカムツ……しばし無言で料理に向き合いました。本当に美味しいものに出会ったとき、人って言葉を失うのですね。

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綿密な打ち合わせを何度も重ね、イベント当日の2日前に来日したと語るアモリ―シェフ。ルカシェフに豊洲市場を案内してもらい、大はしゃぎしたんだとか。

食後にふたりのシェフの話を伺いましたが、アラン・デュカスの愛弟子として知られるアモリーさんはまだ35歳、ルカさん45歳。世代も生まれ育った国も違うふたりが、ガストロノミーという同じフィールドに立つことで、すぐに通じ合い、信頼しあっていることがこちらにも伝わってきました。

今回のコラボレーションを経て、アワビやハマグリなど日本の素晴らしい食材を知り、また今や世界的共通語になっているUMAMIについても新たな見地を得たと語るアモリ―さん。もしかして今度「レストラン・ル・ムーリス・アラン・デュカス」に出かけたら、思いがけない日本のテイストに出会えるかもしれません。

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大好きな「ドン ぺリニヨン」を片手にくつろぐ、ふたりのスーパーシェフ。

この「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」の15周年を記念したコラボレーションは今後も継続的に行われる予定で、次回6月25日にはベルガモ(イタリア)より、ミシュラン3つ星レストラン「Da Vittorio(ダ・ヴィットリオ)」のCerea family(チェレーア)ファミリーよりエンリコ・チェレーアシェフが来日予定。

また8月にはバリのブルガリ・リゾートでルカさんと、2024年のAsia’s50Best Restaurantで第9位にランクインした「La Cime(ラシーム)」高田祐介シェフとのコラボレーションが予定されているのだそう。進化し続ける「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」から、ますます目が離せそうにありません。

<ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン>

この記事の執筆者
女性ファッション誌や富裕層向けライフスタイル誌、グルメマガジンの編集長を歴任後、アマゾンジャパンを経て独立。得意なジャンルに食、酒、旅、ファッション、犬と馬。
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