宝石をモチーフにした7つの物語が展開される湊かなえさんの短編集『サファイア』を、俳優の永作博美さんがAmazonオーディブル(以下、Audible)でナレーション。収められている7編は湊作品の王道ともいうべきミステリーあり、サスペンスあり、ちょっぴりホラーなファンタジーテーストの作品もありつつ、全体的にはエモーショナルな作品群です。永作さんの声でつづられるAudibleにも、どこか昔懐かしいあたたかな空気が感じられます。

俳優の永作博美さん
ワンピース¥41,800(ハウス オブ ロータス 二子玉川店) ・ピアス¥33,000(ドゥエドンネ)
すべての写真を見る >>
永作博美 さん
俳優
(ながさく・ひろみ)1994年、ドラマ『陽の当たる場所』(CX)で女優デビュー。以降、映画、ドラマ、舞台で活躍中。映画『腑抜けども、悲しみの愛をみせろ』(07年/吉田大八監督/ファントム・フィルム)、映画『八日目の蝉』(11年/成島出監督/松竹)、映画『さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら〜』(15年/チアン・ショウチョン監督/東映)、映画『朝が来る』(20年/河瀬直美監督/キノフィルムズ)、連続テレビ小説『舞いあがれ!』(22年/NHK)、Amazon プライム『モダンラブ・東京』(22年/黒沢清監督)などの作品に出演、多くの受賞歴がある。

「音声コンテンツは“読み手の息づかい”が感じられるのも大きな魅力」永作博美さん

――湊かなえさんの作品は人の心の中にある、ちょっと目を背けたくなるようなネガティブな部分も迷わずフォーカスしていく魅力があります。永作さんの声で語られることによって、あたたかな温度が加わっているような印象がありました。

「とてもヒューマンなものに仕上がっていると思います。というのも、Audible は“音”によってつくられる世界なので、“吐息感”があるんですよね。読み手の息づかいが感じられることで、生身の人間が生きてそこに存在している雰囲気が出てくる。そうした物理的な効果からもエモーショナルな要素を受け取っていただけると思います。

湊さんが執筆される作品の世界は、思いのほか私たちのすぐ隣りにある日常だったりするんです。特にこの『サファイア』は短編集なのでよけいにそれが感じられるのですが、収録された7編の舞台設定はどれも身近な場所ばかりです。

それをAudibleの音声で聴くことによって、自分のペースでページをめくって“次の展開を早く知りたい!”とワクワクしながら本を読むのとはまた違う面白さが味わえると思うんですよね。時間の流れを感じながら、背景の海まで見えるような、映画みたいなひとときを楽しんでいただけたらうれしいです」

俳優の永作博美さん
「時間の流れを感じながら、背景の海まで見えるような、映画みたいなひとときを楽しんでいただけたらうれしい」(永作さん)

――そんなAudibleの配信を私たちはいつどのようなシチュエーションで聴いてみるのがおすすめでしょうか。

「みなさん、寝る前に聴くイメージをおもちかと思うのですが、『サファイア』に関しては収められている作品が日常の中の物語ですので、日常感ある場所で聞くのもおすすめだなと思うんですね。たとえばあたたかい日に公園に足を運んで、遠くの空や緑をぼんやり視界に入れながら聴くのも心地いいんじゃないかと思います。家の外で聴いてもちゃんと物語の世界に入れる力をもっている作品ですから。

ですが、本当にひとりきりで目をつぶって作品の世界にひたりたいとなったら、もちろん夜ベッドで寝ころびながら聴いていただいても没入感が得られると思います。7編それぞれすごくバリエーションに富んだ展開になっていますので、場所や環境を選ばずに楽しめるのも今作の魅力のひとつだと思います」

「録音ブースの中で1ミリも動かずに“これは怒鳴り声として成立しているのか”と、ときに戸惑いも…」永作博美さん

――オーディオブック後半に収録されている「サファイア」と「ガーネット」のエピソードは連動していて、最後はダイナミックなカタルシスが感じられそうです。

「ストーリー的にはそうではあるのですが、朗読している私自身は録音ブースの中で1ミリも動くことができないので(苦笑)、そこが演劇における朗読芝居とは違うところでしたね。役者としてはアクションがあったほうが芝居をしやすいのに、アクションすることができないというジレンマ。みなさんにどれだけ物語の世界に入っていただけるかに魅力のありなしがかかってきますので、そこは“果たしてこれは怒鳴り声として成立しているのか、みなさんに届くのだろうか”と、ときに自分の戸惑いも利用しながら(笑)、取り組みました」

――できあがった作品はどのようなタイミングで手にとって欲しいですか。

「“何か面白いことないかな?”と思ったらぜひ聴いてみてほしいですね。きっと心が動いたり、ざわざわしたり、何かしらの刺激が得られる世界が待っていると思います」

俳優の永作博美さん
「心が動いたり、ざわざわしたり、何かしらの刺激が得られる世界が待っていると思います」(永作さん)

――今回収録した7作品の中で、永作さんが個人的にいちばん楽しかった作品を教えてください。

「最もファンタジーな展開の「ダイヤモンド」が楽しかったです。湊さんの作品には珍しく男性の一人称で語られる物語なのですが、その中に主人公に恩返しをするためにやってきた雀が登場するんですね。

これまで会話劇はいくつか経験しましたが、もし舞台の上で人が雀を演じようとしたら、お客様はきっと雀の扮装に違和感を感じてしまうでしょう。でも朗読だったら、雀を演じてもおそらく大きな違和感は与えないんですよ。そこがすごく面白いなと。Audibleはなんて深くて広い世界なんだろうと、狭くて暗いブースの中でひとり広い世界や空を想像しながら(笑)雀の朗読を楽しみました。ぜひ確認してみてください」


役者として演じること、朗読することに真摯な永作さん。Vol.3では仕事を離れた素顔や美の秘訣についてもお聞きしました!

■オーディブルにて配信中!  湊かなえ・著『サファイア』朗読:永作博美

湊かなえ・著『サファイア』朗読:永作博美
湊かなえ・著『サファイア』朗読:永作博美
すべての写真を見る >>

2024年4月25日(木)よりAudibleで配信中。
人間の不思議で切ない出逢いと別れを、己の罪悪と愛と希望を描いた珠玉の物語。表題作他「真珠」「ルビー」「ダイヤモンド」「猫目石」「ムーンストーン」「ガーネット」全七篇。

詳しくはこちらから

問い合わせ先

  • ハウス オブ ロータス 二子玉川店 TEL:03-6431-0917
  • ドゥエドンネ https://duedonne.net/
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
PHOTO :
高木亜麗
STYLIST :
岡本純子
HAIR MAKE :
竹下あゆみ
WRITING :
谷畑まゆみ
EDIT :
福本絵里香