【ART】大人になって知った「バーバパパ」の意外な真実…!? 私たちにとって “オバケ” ってなんでしょう?
夏です。オバケの季節です。そこでオバケをテーマにした展覧会のご紹介です。子供向け? いえいえ、気鋭のクリエイターや美術の研究者たちが、本気になってオバケと向き合った、大人にこそおすすめの「オバケ万博」なのです!
展覧会「オバケ?」展について、エディター・ライターの中村志保さんにご案内いただきました。
【今月のオススメ】「オバケ?」展より『おばけのバーバパパ』
1970年に発売された、パリ生まれのアネット・チゾンと、サンフランシスコ生まれのタラス・テイラー夫妻によって描かれた絵本。30以上の言語に翻訳され、日本では山下明生訳により'72年に発売。絵本はシリーズ化、アニメ化、多くのグッズになるなど現在も愛され続けるキャラクターであることは周知のとおり。バーバパパは「パパの髭」の意。フランス語では綿菓子を意味する。
「バーバパパはね、にわで うまれたんです。」と始まる『おばけのバーバパパ』。子供の頃に何度も読んでもらった思い出深い絵本です。数十年が経ち、今は私が子供に読み聞かせているのですが、改めて開いてみると、バーバパパが植物の種のように土の中で育つことにちょっと驚きます。というのも、おばけは当然 “あの世” のような場所からやってくるのだとずっと信じていたからでしょう。ところが最近、原作ではバーバパパはおばけではなく、実は翻訳者の山下明生さんが “おばけの” と日本語訳版にくっつけてしまったのだと知りました。正直これには少し裏切られたような気持ちに……でも待てよ、と。
日本でおばけの絵と言えば、江戸時代に葛飾北斎や歌川国芳ら絵師たちが怪談をもとにおどろおどろしい幽霊を描きましたが、確かにこの世に祟って出てくる幽霊は怖いもの。一方で座敷童子や傘おばけ、化けだぬきなどはどこかユーモアがあって愛らしい存在でもありますね。しかし、そもそも様々な生き物やモノが化けて出るからおばけなのであって、日本では古来、身の回りの不可解で奇妙な物事をおばけに投影させ、畏敬の念を払ったり、時には戯れたりしてきたのでしょう。そう思うと、バーバパパがおばけに化けてしまったのは日本ならでは。納得がいくものです。
さて、そんなおばけをテーマにした展覧会が東京・立川市PLAY! MUSEUMで開催中。そうそう、いつの時代もアートというものは、作り手の思いや考えが化けて出た “おばけ” でもありますよね?(文・中村志保)
【Information】「オバケ?」展
絵本『ねないこだれだ』を落語家の春風亭一之輔が朗読する怖い部屋、谷川俊太郎・谷川賢作親子による軽快なオバケ音楽、アニメーション作家・加藤久仁生の新作など、オバケをテーマに、多彩なクリエイター約20組が参加。バーバパパと触れ合えるコーナーなど、親子で楽しめる企画も盛りだくさん。夏休みにぜひ訪れたい体験型の展覧会だ。
開催期間:2024年9月29日(日)まで開催中
場所:PLAY!MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟)
問い合わせ先
- 構成 :
- 剣持亜弥