「恣意的」という言葉を正しく使えているでしょうか。実は多くの人が「恣意的」を間違えて使っているとも言われるのですが…。今回は「恣意的」について、正しい理解と使い方を学びます。

【目次】

「恣意的」にネガティブなニュアンスは含まれる?
「恣意的」にネガティブなニュアンスは含まれる?

【「恣意的」の正しい基礎知識】

■読み方

「恣意的」は「しいてき」と読みます。

■意味

気ままで自分勝手なさまや、論理的な必然性がなく思うままにふるまうさまを表すのが形容動詞「恣意的」です。従って、「恣意的な判断」と言えば「論理的ではない判断」で、「恣意的に運用する」は「勝手に運用する」という意味にもなります。

名詞「恣意」は、「自分の思うままにふるまう心」や、「気ままな考え」を示す言葉です。「恣意に任せる」と言ったら「自由にどうぞ」ということになります。「恣(し)」には、「勝手気まま」や「欲しいまま」という意味があり、「恣意」は「意(気持ち)を恣(欲しいまま)にす」と訓読できるので、「恣意的」も「勝手気ままな考え」という意味が基本となります。


【「正しい使い方」が理解できる「例文」5選】

「恣意的」を正しく使うために例文をチェックしてみましょう。

■1:「接客にある程度の親密さは必要だが、恣意的な意見によって顧客を誘導することがあってはならない」

■2:「上司の恣意的な判断が続き、プロジェクトの士気が一気に下がった」

■3:「恣意的な言動が過ぎると、信頼は失われる」

■4:「指導者が恣意的では、体系的な教育を行うことができない」

■5:「昇進の基準が不明瞭なので、恣意的に決定されていると不満が出るのは当然だ」


【使い分けたい「類語」「言い換え」表現】

「恣意的」は、もっとわかりやすい言葉で置き換えることができます。「類語」や「言い換え」表現もチェックして使い分けましょう。

・本能的:理性や道徳などではなく、本能(生まれつきの性質や能力)によって動かされるさま。

・直観的:推理などによらず、瞬間的にものごとの本質を見てとるさま。

・主観的:自分だけにしか通用しない、ひとりよがりなさま。

・非理論的:論理に合っていないさま。筋道が通っていないさま。

・自己本位:ものごとを自分を中心にして考えたり、行ったりすること。

任意:その人の意思に任せること。

随意:束縛や制限などがなく思いのままであること。


【似ている言葉も正しく理解しよう!】

「恣意的」を、「故意的」や「作為的」という意味で使用するのは誤用だという風潮がありますが、そうともいい切れないようです。「恣意的」には「偶然やランダム」というニュアンスに加え「意図的(わざとそうする)」に近いニュアンスもあるため、誤用と言われることが間違いだと主張する国語辞典の編さん者もいます。

似ている言葉の正しい意味も押さえておきましょう。

・意図的:ある目的や意思をもって、わざとそうするさま。「仕事量を意図的に増やす」

・故意:わざとするさま。「故意に取り違える」

・作為的:故意に行うさま。また、不自然さが目立つさま。「作為的に仕組まれた事故」


【「恣意的」の対義語は?】

・規則的:一定の決まりに従っているさま。規則正しいさま。「規則的な変化」

・機械的:意思をもたずに決まった動作を行うさま。一律にものごとを処理するさま。「機械的にページをめくる」「機械的なグループ分け」

・一貫:ひとつの方針や方法、態度で、始めから終わりまで貫き通す通すこと。「一貫した態度」

無作為:偶然に任せること。「当選者を無作為に選び出す」


【「恣意的」を英語で言うと?】

「個人の意思」や「気まま」を表す英単語の[arbitrary]には「恣意的な」という意味もあります。

・arbitrary judgment(恣意的な判断)

・arbitrary decision(恣意的な決定)

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近年「恣意的」を誤用するケースが多いと言われていますが、一概にそうとも言えないようです。日本語って、本当に難しいですね。だからおもしろいんですよね。時代にマッチした語彙力を一緒に高めていきましょう!

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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :