「軽挙妄動」という四字熟語を使ったことがありますか? これは「深く考えずに、軽々しく行動する」という意味の四字熟語で、軽はずみな行動をいさめる際に多く使われるため、対面で実際に使用される場面には、あまり遭遇しないかもしれませんね。とはいえ、不測の事態にも備えておくのが「大人の語彙力」。今回は「軽挙妄動」について学びましょう!
【目次】
【「軽挙妄動」とは?「読み方」と「意味」「由来」】
■「読み方」
「軽挙妄動」は「けいきょもうどう」と読みます。
■「意味」
「軽挙」とは「軽々しい行動」のこと。この場合の「挙」は、「挙動」のように「行い」を表します。「妄」には「きちんとした判断に基づかないこと」という意味があり、「妄言」のように使われますね。同じように、「妄動」で「きちんとした判断に基づかないで行動する」ことを意味します。つまり、「軽挙妄動」とは「軽々しい行動」と「きちんとした判断に基づかない行動」という、ふたつの似たような意味をもつ熟語を重ねた四字熟語です。こうすることで「深く考えずに、軽々しく行動する」という意味を強調し、「軽はずみで軽率な行動をいさめる」ニュアンスで使われることがほとんどです。
■「由来」
「軽挙妄動」には、特定の語源はないようですが、『日本国語大辞典』によると、江戸時代後期の歴史書『日本政記』で使われているそうです。
【「使い方」がわかる「例文」7選】
「軽挙妄動」は例文1のように、「慎む」という動詞と共に用いられるのが、よくあるパターンです。それ以外でも、「軽率な行動」を否定する文脈で使われることがほとんどです。
■1:「災害時には軽挙妄動は慎み、自治体からの指示に従ってください」
■2:「怒りにまかせて軽挙妄動するなんて、普段冷静な彼らしくないな。よほどの事情があったのだろう」
■3:「匿名だからとネット上で軽挙妄動な書き込みを続けていると、あっと言う間に拡散され、最悪の場合は個人情報を特定され、自身が誹謗中傷を受けることになる」
■4:「彼に対してあんな暴言を吐いてしまうなんて、軽挙妄動だったと反省しています」
■5:「幼い子どもは思慮が浅く、正しい判断はできないのが普通だ。従って、子どもの失敗を軽挙妄動と批判することなどできない」
■6:「彼のあまりにも軽挙妄動な行動が、思わぬトラブルを招いてしまった」
■7:「今回の失敗の原因は、あなたの軽挙妄動な言動にあると思うよ」
【「類語」「言い換え」「反対語」表現】
同じような意味をもつ四字熟語、おわかりですか? 難しいですね! この機会に反対の意味の熟語もチェックしておきましょう。
■同じような意味の四字熟語
・軽佻浮薄(けいちょうふはく)
こちらも「軽挙妄動」同様、意味が似た熟語を重ねた表現。「物事を深く考えず、信念をもたないで軽々しい行動ばかりしている」ことを指して使われます。「軽佻」の「佻」は、なかなか書けない難しい漢字ですね。
・直情径行(ちょくじょうけいこう)
「感情をいつわらずに、思ったとおりにすぐに行動する」ことを意味する四字熟語。儒教の経典『礼記』に由来します。
■言い変え表現
・軽はずみ
・軽率
・向こう見ず
・軽薄
・浅はか
・後先顧(かえり)みない
■対義語となる四字熟語
・熟慮断行(じゅくりょだんこう)
「時間をかけて十分に考えたうえで、きっぱりと決めて実行する」ことを意味する言葉です。
・隠忍自重(いんにんじちょう)
「隠忍」は「怒りや苦しみを隠して耐え忍ぶこと」。「自重」は「軽々しい行動をとらないこと」。合わせて「軽々しく怒りや苦しみを爆発させることなく、困難な状況を耐え忍ぶこと」を表します。
【「英語」で言うと?】
英語表現では、[be prudent in one's behavior]で、「軽挙妄動を慎む」という意味になります。[prudent]は「思慮深い」「常識のある」「慎重な」といった意味の言葉です。また[rash and blind actions]で「性急で無計画な行動」、[imbecility]は「愚かな言動」を表しますよ。
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「軽挙妄動」について理解できましたか? 似たような意味でも「軽佻浮薄(けいちょうふはく:考えや行動などが軽々しく浮ついているさま)」のほうがなじみがある人は多いのでは。そして誰にでも「軽挙妄動」あるいは「軽佻浮薄」な行動で失敗した黒歴史は、ひとつやふたつ、あるものです。「軽挙妄動」だった自分をいさめ、反省し、恥ずかしくとも、また新たに歩んでいくしかないのが人生かもしれません!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『四字熟語ときあかし辞典』(研究社) :