「鼎談」は「ある課題について3人で話し合うこと」を意味する言葉で「ていだん」と読みます。あまりなじみのない言葉ですから、読むのは少々難しいかもしれませんね! 今回は「鼎談」を深掘り。その意味や語源はもちろん、使い方のわかる例文や言い換え表現について解説します。

【目次】

通常、井戸端会議には用いません。
通常、井戸端会議には用いません。

【「鼎談」とは?「読み方」と「意味」「語源」】

■「読み方」

「鼎談」は「ていだん」と読みます。「けんだん」ではありませんよ。

■「意味」

「鼎談」には「3人が向かい合って話をすること。また、その話」という意味があります。ただし、偶然、顔を合わせた3人が短時間立ち話をすることを通常「鼎談」とは言わず、特に設けた機会に、ある問題を検討するために3人が意見を述べ合うこと」を指しています。

■「語源」

「鼎」の訓読みは「かなえ」。「鼎(かなえ)」は古くは食物を煮るのに用いる、金属製の器を指します。もとは古代中国の祭器です。現代の釜(かま)に当たりますが、通常は3本の足で支えていたことから、「円形で3本足、耳(持ち手)がふたつある器」を「鼎(かなえ)」もしくは「足がなえ」と言います。ここから転じて「鼎」は「3つのものが並ぶこと」を意味するようになりました。また、「鼎談」の「談」には「人と話す」という意味があります。このことから「鼎談」は「3人が話し合うこと」という意味になるのです。


【「使い方」がわかる「例文」6選】

■1:「来月には、アメリカ、韓国の大統領を日本に迎え、三国のトップによる鼎談が予定されています」

■2:「偶然にも業界の三巨頭がイベントの壇上で顔を揃えた。周囲の要望から、ごく短い時間ではあったが鼎談が実現し、会場は大盛況だった」

■3:「先日読んだ雑誌の特集には、『忘れえぬ名品』というタイトルでスタイリストさんなど3人の方の鼎談が載っていた」

■4:「来月行われる国際フォーラムでは、ふたりの専門家を招き、環境問題についてジャーナリストとの鼎談を行うのがメインイベントとなっている」

■5:「彼女がその件について反対していたことは、先日の鼎談で話した内容からも明白だ。もうひとりの出席者である部長も、きっと賛同してくれるだろう」

■6:「ゴミの日には必ず、集積所の前でご近所の女性3人が揃って立ち話をしているのだが、うちの家族はひそかにその光景を『早朝鼎談』と呼んでいる」


【鼎談は3人、では4人の場合はなんと言う?】

一般的には、ふたりで行われる話し合いやインタビュー形式の対話は「対談」、3人で行う話し合いは「鼎談」、そして4人以上の人が集まる話し合いは「座談」と呼ばれることが多いようです。ただ、「座談」には「座ったままで気楽に話し合うこと」という意味があるため、公式な行事に関しては「会談」が使われることが多いですね。「会談」は「重責にある人が公式に会って相談すること」という意味を含むため、気楽で打ち解けた話し合いには用いられません。また、人数による制限もないため、ふたりによる話し合いにも使われます。


【「類語」「言い換え」表現】

おさらいになりますが、「鼎談」は「3人で話し合うこと」を意味する言葉です。

■「3人で話し合う」という意味での「類語」

「鼎談」のように人数を限定する意味をもつ言葉はほかにないため、「話し合い」を意味する熟語の前に「三者」をつけて表します。

三者会談
・三者面談
・三者懇談
・三者歓談

■「ある問題を検討するために意見を述べ合うこと」を表す言葉は?

・対談向かい合って話し合うこと。また、ある事柄についてふたりで話し合うこと。同じような意味の言葉に「対話」がありますが、元来、「対談」は公の場合に言い、「対話」は私的な場合に言う傾向がありました。

・ディスカッション:特定の場で互いの意見、論を戦わすこと

・面談面会して話すこと

・話し合い:一緒に話すこと。相談すること

・意見交換:お互いの考えをやりとりすること


「英語」で言うと?

「鼎談」を英語で表現すると、[three-man talks]あるいは [tripartite talks]となります。[tripartite]は「三者間の」「三国の」といった意味をもつ形容詞です。「討論」や「話し合い」という意味をもつ、[discussion]で表現してもよいでしょう。

・A three-man talks was held by The President of the United States, the President of South Korea, and the Prime Minister of Japan.(アメリカ大統領、韓国大統領、日本の総理大臣による鼎談が行われた)

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「三者鼎談」は、よく使われる言葉ですが、「鼎談」には「3人による話し合い」という意味のため、厳密に言えば「重言」となるのかもしれませんね。確かに、例えば「頭痛が痛い」は「重言」の代表格で、使うのはあまり感心しません。一方で、あまり一般的に使われない「鼎談」に「三者」を付けて意味を補足したとしても、不自然に感じる人は少ないでしょう。場合によっては、コミュニケーションを円滑に進めるための気配りとなることも。あまりガチガチに考えず、臨機応変にいきたいもの。これも「大人の語彙力」です。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :