お酒の席で「不調法なもので…」、後輩の至らなさを「不調法で申し訳ありません」――こんなシーンに遭遇したことはありませんか? このように謝ったり断ったりというシーンで使われる「不調法」ですが、正しい意味や使い方ができているでしょうか。今回はビジネス会話でもよく使われる「不調法」について確認しましょう。

【目次】

あなたの「不調法」経験は?
あなたの「不調法」経験は?

【「不調法」って?「読み方」「意味」など基礎知識】

■読み方

「ぶちょうほう」と読みます。

■意味

冒頭で挙げた例でもわかる通り、「不調法」は行き届かずに手際の悪いことや、そのさまを表します。

また、お酒が飲めないことや芸事のたしなみがないこと、そのさまも「不調法」を使って表します。本来、お酒が飲めなくても芸事ができなくても謝る必要はないのですが、ビジネス会食や目上の人がいる宴席などで、「お付き合いできず申し訳ありません」「盛り上げることができず申し訳ございません」と、へりくだった気持ちを込めて用いられます。

「調法」には、よく思案し適切に処理すること、整えたり準備したり工夫することといった意味があり、「不」を付けてそれらがない、行き届かないことを表します。「不」の使い方は、「不運」や「不手際」「不本意」などと同じですね。意味を打ち消す語には、「無礼」「無責任」「無意識」のように使う「無」もあります。そして、「無調法」は「無調法」とも書きます。

■「不調法者」って!?

「不調法」である人、行き届かない人のことを「不調法者(ぶちょうほうもの)」と言います。そう、「不束者(ふつつかもの)」や「若輩者(じゃくはいもの)」「未熟者(みじゅくもの)」と同じニュアンスです。これらの場合は「~しゃ」ではなく「~もの」と読みます。


【「大人としての使い方」がわかる「例文」7選】

■1:「部下の仕事が不調法だったようで、監督が行き届いておらず申し訳ございません」

■2:「口が不調法なもので、説明不足から誤解を招いてしまいました」

■3:「従業員の不調法をお詫びいたします」

■4:「宴席に水を差すようですが、お酒は不調法でお付き合いできかねます」

■5:「お酒で失態するくらいなら、不調法でつまらない奴だと思われたほうがましだよ」

■6:「酒は不調法だけど、マイクを握らせたらその歌声は絶品だった」

■7:「近ごろの新人は不調法で困るよ」

いずれにしても、「不調法」という単語はいい文脈で使われることは少ないようですね。


【「不調法」の「類語」「言い換え」「対義語」など関連表現】

■「行き届かない」という意味の類語・言い換え表現

・粗忽(そこつ): 軽はずみなこと、そそっかしいこと、唐突で不躾(ぶしつけ)なこと、失礼なこと。落語には、粗忽な人の愉快な噺がたくさんあります。

・不躾(ぶしつけ):礼を欠くこと、無作法なこと。「不躾ながらお願いします」「不躾な質問」

・粗相(そそう): 不注意や軽率さから過ちを犯すこと。

・不注意・失敬 ・無作法 ・手際が悪い ・不行き届き ・至らない 

■「お酒が飲めない、芸事ができない」という意味の類語・言い換え

・下戸(げこ):お酒が飲めない人や嫌いな人のこと。

・不風流(ふぶうりゅう):趣味を解さない、簡単な芸事のたしなみがない人のこと。

・野暮 ・無粋(ぶすい):洗練されていないこと。粋でないこと。

昭和の時代はまかり通っていましたが、令和の今、「お酒が飲めないこと」を、不風流や野暮、無粋、と言うのはかなり違和感がありますね。

■対義語

行き届かない、という意味の対義語は…用心深い、丁寧

下戸、野暮という意味の対義語は…気が利く、粋(いき)、通(つう)


【英語で「不調法」はどう表現する?】

「不調法」そのままの英単語はないので、「過失」を意味する[a blunder]や「不注意」の[carelessness]、「無礼」の[impoliteness]などで表現します。

・I'm sorry to have been so careless.(とんだ不調法をいたしました)

・I am not a fluent speaker.(私は口が不調法です)

・No, thank you. I don't drink.(いいえ結構です、不調法ですので)

***

ビジネスシーンで、行き届かないことに対して「不調法で申し訳ございません」と詫びるのは当然ですね。しかし、飲めない人がお酒をすすめられて「私は不調法なので」と断るだけでなく、「不調法で申し訳ありません」と謝るのは…納得いかないという人もいるのでは? 仕事終わりの会食や打ち上げなど、ビジネス飲みがハラスメントになりかねない昨今、「不調法で…」と言ううシーンも減っているかもしれませんね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)/ :