温泉旅行のメインは、言わずもがな“温泉”ですが、宿選びにおいて実は朝食メニューもかなり重要。慌ただしい日常では味わえない、旅館のスペシャルな朝ごはんを楽しみにしている人は多いのではないでしょうか。

名湯に癒されぐっすり快眠した翌朝、心づくしのごちそうでもてなされると、旅のフィナーレが多幸感に満ちたものに…。チェックアウト後も「本当にここに来てよかった!」という余韻にしみじみと浸れます。

温泉ジャーナリストの植竹深雪さんも、全国の湯宿を巡るなかで、趣向を凝らした珠玉の朝食に感動を覚えた経験がたびたびあるとのこと。そのなかからとっておきの6軒をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、島根県松江市にある「皆美館」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

秘伝の出汁とのハーモニーに感動!至高の「鯛めし」を味わう

JR山陰本線「松江駅」より車で約10分。城下町松江の宍道湖畔に佇む「皆美館」は明治21年の創業以来、多くの文人墨客に愛された山陰随一の老舗旅館です。“和のオーベルジュ”としても名高いこちらの宿の朝食の魅力について、植竹さんはこう話します。

「皆美館」の玄関
老舗の風格漂う玄関。
「皆美館」の外観
枯山水の日本庭園は、国内外で高い評価を受けている。

「夕食も雲丹やノドグロ、カニや鮑といった海の幸三昧で美食を堪能できましたが、よりしみじみと印象に残っているのは、朝食で選べる『鯛めし』。炊きたてのご飯に鯛のそぼろなど具材をのせ、出汁をかけてお茶漬け感覚でいただく『鯛めし』は全国にファンが多く、お取り寄せ品になっているほどの人気メニューです。

お茶漬けはここ最近、専門店ができるなどブームの兆しがありますが、こちらの『鯛めし』は創業時から代々受け継がれている伝統の逸品。松江藩主の松平治郷が汁かけ飯を好んだことから、初代料理長が考案したと伝えられています」(植竹さん)

「皆美館」の鯛めし
創業時からの伝統メニュー「鯛めし」。

「ベースのご飯は“西の横綱”とも称される仁多米。土鍋で炊きたての状態で運ばれてきます。具材は後からのせるスタイルで、鯛のそぼろ、黄身と白身にわけた玉子そぼろ、それからお好みで薬味の大根おろし・ネギ・ワサビ・海苔。主役の鯛そぼろは国産鯛の上身で、本来ならば刺身にする上質な部位を贅沢に使用しており、また、卵も島根のブランド卵が用いられているなど、素材から気合い十分です。

つやつやのご飯の上に具材をのせると、鯛の白、卵の黄、ネギの緑で彩りも美しく食欲をそそります。そこへ秘伝の出汁をかければ、『鯛めし』が出来上がり! 出汁はカツオの本節をベースに特注の薄口しょうゆ、みりん、酒で味付けしており、鯛を引き立てるあっさりとした上品な味わい。口の中に鯛の旨味が広がり、卵や薬味が絶妙なアクセントとなる『鯛めし』は、料理人のアイディアと技術が凝縮した至高の汁かけご飯で、繊細なおいしさが心にも響きました」(植竹さん)

「皆美館」の朝食
朝食の全体像。

「食事処からの景観も朝食の気分をいっそう盛り上げてくれます。樹齢300年という名木を中心とした枯山水庭園は、アメリカの専門誌のランキングで上位に選出されたこともあるほど。庭園美を愛でながら、お殿様も愛した名物メニューを嗜むのは非日常感たっぷりで、五感を通じて旅の思い出が強く刻まれたような気がします」(植竹さん)

「皆美館」の食事処
日本庭園と宍道湖を眺めながら美食を堪能する。

全室に温泉付き!レイクビューの客室で優雅なステイを叶える

明治21年創業の「皆美館」は、130年以上の歴史と伝統に胡坐をかくことなく、おもてなしの心を今に引き継ぎ、客室は和モダンにリニューアル。すべての客室に温泉を完備し、しんじ湖温泉の良質な湯を気兼ねなく満喫できます。

客室「水の音」の風呂
客室「水の音」の浴室からの眺め。
客室「水の音」の室内
客室「水の音」の室内。

「泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉。硫酸塩泉は美人の湯のひとつで、肌がしっとり潤うのを実感できました。また、客室以外に大浴場もあり、老舗ならではの趣ある空間での湯浴みは心地よく、檜の香りにも癒されます」(植竹さん)

「皆美館」の大浴場
「皆美館」の大浴場。客室に温泉が付いているため、大浴場は空いている傾向。ひとり占めするチャンスも!?

「客室はさまざまなタイプがありますが、私が泊まった部屋からは宍道湖を眺めることができました。宍道湖大橋と湖上の情景をのんびり眺めるのは実に優雅なひとときで、心静かに寛ぎリフレッシュしたい人にもぴったりの環境だと思います」(植竹さん)

客室「碧雲」からの眺め。
客室「碧雲」からの眺め。

なお、2024年7月に新しいタイプの客室「爽々」「滔々」「悠々」がオープンしたばかり。新客室は露天風呂を備え、さらにセルフロウリュも楽しめるプライベートサウナ付きです。癒しの湯もサウナもひとり占めして体と心を整える、そんな欲張りな旅のニーズを満たしてくれます。

客室「爽々」の室内
客室「爽々」の室内。
客室「爽々」の露天風呂
客室「爽々」の露天風呂。
新客室のサウナ
新客室のサウナ。

以上、「皆美館」をご紹介しました。山陰屈指の老舗旅館の温泉で心身を労り、朝は名物の「鯛めし」に舌鼓を打つ。そんな贅沢な旅時間を過ごしたい人は次の宿泊候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

  • 皆美館
  • 住所/島根県松江市末次本町14
    客室数/全19室
    料金/朝夕2食付き1名 ¥25,450(税込)~
  • TEL:0852-21-5131

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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)