一流の人は、周囲に魅力的な人がたくさんいることが多いですよね。その様子を見ていると、「自分もそうなりたい!」と思ってしまうもの。ただ、「自分の周囲にいる人は今の自分にふさわしい人」、という説もあります。自分の周囲を変えたいなら、まずは自分の人付き合い習慣を変えるしかありません。
しかし、一体どうすれば人を惹きつけられるのでしょうか? 出版プロデューサーで生活経済評論家の川北義則さんに、魅力的な人が寄ってくる大人の人づき合い習慣を5つ、教えていただきました。これらを意識するだけで、職場や取引先との人付き合いがよりうまくいくようになるはずですよ!
■1:注意しつつ「最後は」褒める
キャリア女性は指導する立場。部下や後輩に注意することはつきものですよね。そんな際にぜひとも活用したいのが、褒めることも探しておくことなのだそう。
「注意するときは褒めることとワンセットにする、ということを私も新聞社時代、部下に対してやっていました。取材の仕方や記事の書き方など、注意する際に、ここは評価できる、褒められる、という部分をあらかじめ見つけておきます。そしてまず、注意する点を伝えます。
そして注意した後に、『でも、この部分はよくできている。だから、ここさえ注意すれば、もっとよくなるぞ』と教えるわけです。注意点としては、褒めたくもない部分を無理に褒めることはない、ということ。というのも、ヘタな褒め方をすると『仕事ってこんなものでいいんだ』と、ナメてしまうからです。
もし、仕事の上で褒められるところが見つからなければ、服装、身だしなみや挨拶の仕方、電話での対応、時間にルーズでない部分など、なにか社会人として評価できるところを見つけて、褒めてあげるといいでしょう」
また川北さんによれば、順序としては①まず注意して、②最後に褒めることが大切なのだそう。
「この順序が違うと、最後に怒られたという印象が残ります。そうではなくて、最後に褒められたという印象を残すことで、相手の仕事へのモチベーションも高まり、注意した人にも好印象が残せるわけです。”あと褒め”がポイントです」
部下や後輩を注意する際は、褒めることとワンセットで。仕事をナメてしまうような褒め方はしないように。そして、順序はまず注意してから、最後に褒めるようにしましょう。
■2:虚勢を張るより「弱み」を見せる
ビジネスの現場では、時に「自分にはこんな能力がある」「こんな関係者を知っている」などと、ついつい虚勢を張ってしまいがちですよね。しかし、見下されまいと振る舞うより、弱みを見せる方がいいそうです。
「自分を優秀に見せたいという気持ちはわかりますが、虚勢を張ったりしていても、大人の人付き合いはできません。虚勢はすぐにはがれてしまいますし、『青いやつだな』という印象を持たれてしまうのがオチなんです。むしろ、『私はその分野は勉強不足なんです。でも、プロジェクトのために精一杯勉強します』と、弱みを見せる方が、信頼関係も深まり、大人の人付き合いができるのです。
私はよく初対面の人にも『短気なんですよ』と、性格的な弱みもさらけ出していました。怒りっぽいという自覚がある人は部下などに、『性格的に少し怒りっぽいから、二度同じことを言わせると、怒ることもあるかも。直そうと思っているけど、なかなか治せなくてね。その部分が出たらごめんね』くらいに言っておくといいでしょう。
ほかにも、『エクセル苦手だから、エクセル関係の仕事はあなたに任せるから』など、業務上の弱みも知らせてもいいと思いますね。弱みを見せることのメリットは、信頼関係の構築につながること、です。お互いの弱みを知り合い、それらをカバーし合う関係は、大人の人付き合いで大切なことのひとつです。そして、真の親しい間柄というのは、お互いの弱みを知っている関係だと私は考えています」
どんな人を前にしても、できるだけ虚勢は張らない。そして、業務上や性格的な弱みはできるだけさらけ出すようにしましょう。これだけでも、人間関係は大きく変わるはずです。
■3:格下の人に教えを問うことを恥じない
前述の虚勢を張るにも近い行動パターンに、下問を恥じるというものがあります。これも魅力的な人と付き合いたいなら、不要なのだそうです。
「論語の中に『下問を恥じず』という言葉が登場します。下問とは、格下の者に教えを問うことで、それを恥じるなという教えです。わかりやすく言えば、知ったかぶりをせずに、わからないことは素直に誰にでも聞け、ということです。
例えば今の時代なら、デジタル関係やSNSの活用法、若者文化のトレンドなどは、新入社員の方が知識も豊富かもしれません。仕事では、明らかに後輩の方が、知識や経験が豊富だと思われることを担当することもあります。そうした際には、下問を恥じず、後輩にアドバイスを仰ぐのです。
ただし、下問を恥じずが通用するのは、あくまでも社内でのこと。商品のプロとして対外的に接客する立場にある人などは、下問を恥じるべきです。例えば、銀行などで金融商品のプロとして接客しているのに、お客さんの方が、知識が豊富だったとしたら、プロとしては恥ずべきことです。この場合は、下問を恥じて、猛勉強すべし、ですね」
社内では下問を恥じず、わからないことは素直に聞く。そして、社外では下問を恥じて、猛勉強していきましょう。
■4:お決まりのジョークを増やす
会議など人が集まる場では、つい人は緊張しがちになるもの。そんな際に場を和ませるのがジョークなのだそう。これをいくつも準備しておくことが一流の証だと言います。
「一流の人たちはみんなジョークセンスを磨いています。例えば政治家の麻生太郎さんはかつて、国連総会での演説中にマイクトラブルに見舞われました。そのマイク故障後の第一声が、『これ、日本製ではないね』。このジョークにより会場を和ませたんです。欧米人に比べて日本人は、ジョークを不謹慎と考える風潮が強かったのですが、もうそういう時代ではありません。
アイディアを出すべき会議で、みんなが緊張していてはいいアイディアなんか出ません。そんな際は、ジョークを効果的に使えば場が和み、意見の出し合いも闊達になります。社長や経営者のなかには、お決まりのジョークをもっている人がたくさんいますね。挨拶や講演などで、まずはその一言を言って、笑いを取ってから本題に入るわけです。
最近では、ジョーク集なども多数書籍化していますので、参考書を読んだり、映画やお笑い番組のお気に入りのセリフを自分のものにしたりして、マイジョークを効果的に使える習慣を、ぜひ身につけてほしいものです。特に厳しく注意した後などは、気の利いたジョークなどで場を和ますことも必要です。このように、場の空気づくりができることも、大人の人付き合いができる人の条件なのです」
ジョークを効果的に使って場を和ますことで、人付き合いは変わります。ぜひマイジョークを研究して場の空気づくりを行いましょう。
■5:いくつになっても世間を狭めない
女性はとくに年齢を気にする生き物。年下世代が集まっている場には、なかなか入りにくいですよね。しかし世代ギャップこそ、面白い発見と成長のチャンスなのだそうです。
「大人の人付き合いの中でも大切なのは、多様性の受容だと思います。自分が接する世間を狭めずに、いろんな人と話して、違う世代の考え方を知るようにしましょう。いろんな人にもまれて、刺激を受けて、時には盛大に失敗をして人間は学習するのです。そしてその人の品格が形成されて、魅力にもなっていきます。
魅力的な人をそばに集めたければ、まず、自分が魅力的になる必要があります。そのためには接する世間を狭めないことです。若い人が集まっていたら、その場に入っていろんな話をしてみたらいいのです。心を開いてくれる人もいるでしょうし、違う人もいるでしょう。
でもそんなことは相手次第ですから、気にしない。いろんな人と話すことが楽しいんだ…という姿勢を見せてあげることです。誰とでもコミュニケーションが取れる人は、総じて魅力的な人です。そんな人の周囲には、自然と魅力的な同僚や後輩が集まって来るものです」
世代ギャップなど気にせず中に入る。そして、誰とでも気軽にコミュニケーションできる魅力的な人を目指しましょう。
最後に川北さんは、「あまり余計なことを気にしないで、人付き合いしたほうがいい」と言います。
「いろいろな性格の人がいる会社の中で、誰からも好かれたいと願う気持ちはわかりますが、それを求めてしまうと相手に合わせようとしすぎてしまい、早晩、心労がたまります。ならば開き直って『あまり気にしない。なるようになる』くらいの気持ちでいるほうが、精神衛生的にもいいのです。肩の力を抜いて、『相手がどう思うかは相手の自由』『正直な自分を出して、嫌われるのはしょうがない』くらいに思っていたほうが、面白い付き合いができると思います」
大人の人付き合いのコツは、無理をしすぎないこと。そして、上記5つを習慣にしていく。すると、自然と周囲に魅力的な人が寄ってくるはずですよ!
『「大人の人付き合い」でいちばん大切なこと』川北義則・著 大和書房刊
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 町田光