坂本龍一の大型インスタレーション作品に没入。目で、耳で、心で体験する無限の時間
世界的音楽家・坂本龍一は、数多くのインスタレーション・アートを生み出してきた、つねに時代の先を行くアーティストでもありました。その作品を集めた大規模個展で、「音」と「時間」を感じましょう。
【今月のオススメ】『坂本龍一|音を視る 時を聴く』
壁に24台のiPhoneとiPadが配され、サウンドとともにひとつの作品として構成された《async-volume》や、1970年に大阪万博のペプシ館を人工の霧で覆った「霧の彫刻」で知られ、世界各地で霧のプロジェクトを実施している中谷芙二子とのスペシャル・コラボレーションなど、東京都現代美術館の屋内外を大胆に使った展示が行われる。
’23年3月に坂本龍一が71歳で亡くなってから、もうすぐ2年。70年代にはYMOで。80年代には映画『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー』で。私たちの世代にとって、あまりに偉大な音楽家でした。90年代からは、マルチメディアを駆使したライブパフォーマンスを展開し、さらに2000年代以降はさまざまなアーティストと協働して、インスタレーション・アートを発表。’18年に韓国・ソウル、’21年と’23年に中国・北京と成都で個展も開催され、音楽家の肩書きに収まりきらない、稀代の芸術家として開拓と挑戦を続けた生涯でした。
「坂本龍一音を視る 時を聴く」は、その彼が生前から準備していた展覧会です。テーマは「音」と「時間」。未発表の新作と、これまでの代表作からなる10点あまりのサウンド・インスタレーション。「音を空間に設置する」という坂本の挑戦と、「時間とは何か」という深い問いかけは、思いもよらぬ感情の揺さぶりを誘発し、鑑賞者に新しい世界を見せてくれます。
現代アート、という括りのなかでも、テクノロジーを利用したメディアアートは、難解に感じられるかもしれません。しかし、目で見て、耳で聴いて、空気の震えを肌で感じて、その場所、その瞬間の匂いを嗅いで―体全体を開放して感じとる没入型の作品は、理屈を超えて直接心にメッセージを届ける強い力をもっています。美術館という展示空間で「音を視る」、そして「時を聴く」。それはきっと私たちを、哲学的で刺激的な、自己との深い対話へと導いてくれるはず。
◇Information『坂本龍一|音を視る 時を聴く』
坂本がこれまで世に送り出してきたインスタレーション作品に加え、《TIME TIME》など、本展のために制作された新作も発表される話題の展覧会。日本初、過去最大規模の個展に。
- 開催期間:開催中〜2025年3月30日(日)まで
- 会場:東京都現代美術館
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- EDIT :
- 剣持亜弥