モードも、空気感も、人々が求めた女性像も。ファッション写真とドレスで時代を読み解く
写真メディアの誕生からおよそ120年。さまざまな部門があるなか、「ファッション」写真は、モードと社会と綿密に連動しながら、独自の進化を遂げてきました。その歴史を振り返る展覧会を、美術ライターの浦島茂世さんにご案内いただきました。
【今月のオススメ】特別展「ファッション写真が語るモード - 写真とドレスの関係性 ―」
コレクションから、アドルフ・G・ド・メイヤ一、マン・レイ、セシル・ビートン、ロバート・メイプルソープ、ベルナール・フォコン、デヴィッド・リンチ、ヒロ、植田正治、奈良原一高、大石一男、篠山紀信、荒木経惟、森村泰昌など、厳選した写真家約50名の150作品、ドレス40点などで、ファッション写真の中の人物と衣装の変遷をたどる。
日本全国、大小の美術館に足を運んできましたが、ファッションを専門にしている施設は意外に少ないと感じています。あってもコレクションがマニアックだったり、展示が限定されていたり。そんななか、神戸ファッション美術館はずば抜けて楽しい! 工夫を凝らした特別展示や、貴重な収蔵品を紹介するコレクション展示はもちろん、ライブラリーもおすすめで、国内外のファッションに関連する膨大な蔵書や、20世紀初頭からのファッション雑誌のバックナンバーもあり、自由に閲覧可能。雑誌好きにもたまらない場所です。
ファッション写真のコレクションも質・量共に充実しています。写真というメディアの登場で、ファッションと人々の関係は大きく変わりました。服そのものというよりも、デザイナーの世界観、時代が見せたいもの、理想とする人間像を、切り取って見せる。
例えば19世紀末〜20世紀初頭のレオポルド・E・ルートランジェの作品を見ると、繊細なドレスを着た女性の表情はなんだか儚げ。1920年代のアドルフ・G・ド・メイヤーによる写真の女性はどこか退廃的なムード。そういえばピーター・リンドバーグがシンディ・クロフォードやナオミ・キャンベルらスーパーモデルを集合で撮ったのは時代を象徴する一枚でしたよね…(※展覧会には出品されません)。
ファッション写真を通して、私たちはその時代の “憧れ” を、ありありと甦らせることができる。神戸ファッション美術館で開催される展覧会で、うっとりしながら、ファッション写真の歴史を振り返ってみてはいかがでしょう。(談)
特別展「ファッション写真が語るモード ― 写真とドレスの関係性 ―」
開催期間:2025年1月26日(日)まで開催中
会場:神戸ファッション美術館
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- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥、喜多容子(Precious)