代表作はもちろん、晩年の作品もすごい!スペインの巨匠ミロの真髄に圧倒される大回顧展
20世紀スペインを代表する世界的画家、ジュアン・ミロの代表作が集結!日本ではのびやかで明るい油彩画や壁画をイメージする人も多いと思いますが、「え、こんなミロも?」と驚く、多彩でチャレンジングな創作活動の軌跡をその目で!
展覧会の見どころについて、美術ライターの浦島茂世さんにご紹介いただきました。
【今月のオススメ】『ミロ展』
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1940年 グアッシュ、油彩、パステル/紙 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ
Fundació Joan Miró, Barcelona. Gift of Pilar Juncosa de Miró.
ジュアン・ミロは1893年スペイン・カタルーニャ生まれ。ピカソとは同じスペイン出身で、20世紀を代表する巨匠のひとりとして世界的に知られると共に、当時のスペイン政府観光局のロゴマークをデザインしていたり、FCバルセロナの75周年記念ポスターを制作していたりと、国内でも広く愛されている存在です。
日本にも縁があって、1966年、73歳のとき、大規模な回顧展が東京と京都で開催されたのを機に初来日。1969年にも大阪万博のため再来日を果たし、『無垢の笑い』という陶板640枚からなる巨大な壁画をパビリオンに出品しています(現在も大阪の国立国際美術館で展示)。その後、90歳まで長生きし、亡くなったのは1983年。案外、最近まで活躍していた人なんですよね。
今回の「ミロ展」は、カタルーニャ時代の初期作品から晩年の作品までを網羅する傑作の数々が世界中から集まる、かなり大規模な回顧展。特に、スペイン内戦以降、第二次世界大戦の戦禍を逃れてヨーロッパを転々とするなかで描かれた〈星座〉シリーズは、ミロの代表作です。現在は世界中に散らばっている全23点のうち、3点がまとまって展示されるという貴重な機会で、見逃せません。
さらに晩年、80代とは思えない巨大で、アグレッシブな作品にもびっくり! 絵の具を滴らせるドリッピング画法や、カンヴァスにガソリンを染み込ませて火を放つという、現代アートのような挑戦もしているのです。70年におよぶ創作活動を、各時代の名品でたどれる贅沢さ…。圧倒されること必至です。(談)
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1973年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ
Fundació Joan Miró, Barcelona. On loan from a private collection.Successió Miró Archive
1936年スペイン内戦勃発後、反ファシズムの姿勢を貫いたミロは国外を転々とし、フランコ独裁政権下では隠遁生活に。戦禍のなか〈星座〉シリーズ全23作を描いた。右の《明けの明星》はそのうちの1 作。背景のパステルが優しく美しい。一方、上の《焼かれたカンヴァス2 》は80歳のときの作品。既存の素材や発想を超えて、新しい絵画への挑戦を続けている。
For all the works by Joan Miró here reproduced: (C) Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2025 E5746
◇Information『ミロ展』
スペイン・ミロ財団やソフィア王妃芸術センター、アメリカ・ニューヨーク近代美術館、パリ・ピカソ美術館など、世界各国から約100点が集まる。ピカソが生涯手元に置いた初期の自画像や、風景画、陶芸や彫刻など貴重な作品も。
開催期間:2025年3月1日(土)〜7月6日(日)
会場:東京都美術館
開室時間/9:30〜17:30、金曜日は〜20:00(入室は閉室の30分前まで)
休室日/月曜日(ただし4月28日、5月5日は開室)、5月7日
問い合わせ先
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- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥、喜多容子(Precious)