難解だと思われがちな現代アートの数々も素直に「きれい!」で楽しめる充実の展覧会『カラーズ ── 色の秘密にせまる印象派から現代アートへ』
箱根のポーラ美術館で開催中の展覧会『カラーズ ── 色の秘密にせまる印象派から現代アートへ』が話題です。印象派から現代アートまで、多彩なジャンルの作品を「色」から考える。春の予感に誘われるように、さまざまな色の世界へ出かけてみては。
この展覧会の見どころについて、美術ライターの浦島茂世さんにご紹介いただきました。
【今月のオススメ】『カラーズ ── 色の秘密にせまる印象派から現代アートへ』

2020年 作家蔵 (C)YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts
'20年制作。本作が日本で公開されるのは、この展覧会が初となる。会場に用意された部屋の中に入ると、そこは鏡面で囲まれた無限空間。暗闇のなか、大小の、膨大な数のカラフルな水玉が次々と色を変えながら、観る者を包み込む。異空間に迷い込んだような気分になる圧巻のインスタレーション。展覧会の締めくくりにふさわしい余韻を残す。
「色」をテーマにした展覧会。色を使って煌めきや光を表現しようとした印象派、点描によって色そのものに注目した新印象派、色の調和を重視したアンリ・マティスなどフォーヴィスムや、色彩だけで表現したゲルハルト・リヒター、ファッションデザイナー小泉智貴のカラフルなドレスも紹介。多彩な作品が並びますが、どれも直感的でわかりやすく、「色を使ってこんな表現ができるんだ!」と発見の連続です。サイズの大きな作品も多く、遠くから「きれいだな〜」と眺めながら、ゆったり会場を回れます。
それにしてもすごいコレクション! ポーラ美術館といえばルノワールをはじめ印象派の美術館というイメージがありましたが、近年は現代作家の作品も積極的に収蔵。エントランスには新収蔵のフェリックス・ゴンザレス=トレスの、42個の電球が連なる「ライト・ストリングス」と呼ばれる作品シリーズのひとつ《無題(アメリカ#3)》が展示され、展覧会のプロローグには杉本博司による光のスペクトルをポラロイドカメラで撮影した《Opticks》シリーズがずらり。
締めくくりは草間彌生の《無限の鏡の間 ―求道の輝く宇宙の永遠の無限の光》。鏡の部屋に入って、大小のカラフルな水玉模様が無限に展開していく光景を、全身で体感。とてもいい余韻を残す展覧会になっています。
森のなかの遊歩道もおすすめです。春になり、緑が芽吹き始めるこれからの季節は、自然が生み出す色を楽しみながら散策できますね。きっと、いつもより世界が輝いて見えるはず。(談)
◇Information『カラーズ ── 色の秘密にせまる印象派から現代アートへ』
ポーラ美術館の名品を中心に、近年新たに収蔵した11点の初公開作品を加えて、近現代美術における「色彩」の変遷を紹介していく。絵画からインスタレーションまで多彩な作品が並ぶ。
開催期間:開催中〜2025年5月18日まで
会場:ポーラ美術館
開室時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休室日:会期中無休
問い合わせ先
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- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥