大沢 たかおさん
俳優
(おおさわ・たかお)1968年生まれ、東京都出身。19歳からモデルとしてファッション誌やパリコレクションで活躍し、ドラマ『君といた夏』(94年/CX)で俳優に転身。以降ドラマ『JIN -仁-』(09年、11年/TBS)、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年/東宝)など数々の話題作に出演。4作にわたったシリーズ集大成の映画『キングダム 大将軍の帰還』(24年/東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)は第48回日本アカデミー賞優秀賞を10部門で受賞。俳優とプロデューサーを兼任する映画『沈黙の艦隊』(東宝)劇場版の続編は9月26日より公開決定。
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ジャケット¥520,300・タンクトップ¥70,400・パンツ¥220,000・靴¥214,500(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

「30年経って、俳優としてひと回りした感があって、最近ちょっと気持ちが変わってきました。」

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ニットジャケット¥597,300・ニットカーディガン¥657,800・ニット¥172,700・パンツ¥517,000・ソックス¥77,000・靴¥135,300(ロロ・ピアーナ ジャパン)

昨年秋の2024秋冬メンズコレクションショー「HERMÈS GINZA CALLING」で久々にランウェイに登場しSNSで話題を呼んだ大沢たかおさん。
「俳優といっても、演じていないときの僕はただのおっさんです(苦笑)。等身大の自分を楽しんでもらうつもりで臨んだのですが、デザイナーを含むフランスチームの気迫や熱量の高さに触発されました」
自身が歩んできたキャリアについて“モデル時代は日々お祭りのように楽しかったけれど、俳優になってからは演技が楽しいと思ったことは一度もない”と振り返る。

「“演じることが好きで楽しい”という人もいますが、僕の考えはそれとはまた別。いいものを届けるべく世界基準の準備を怠らないのがプロの仕事で、情熱的に常識を壊すほどのレベルで挑まないと成功はしない世界。相当大変ですし、消耗もします」

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「たとえば、介添えの方と一緒に映画館を訪れるお客様もいる。その期待に全力で応えるのが僕たちプロの仕事だと思っています」

そんな大沢さんの原動力になるのは作品を視聴した人からのメッセージ。

「放送から15年経っていてもドラマ『JIN‐仁‐』を配信で観てくれたスペインの子供が手紙をくれたりするんですよ。もちろん国内でも僕たちの作品を観た方が“今求職中だけどまた仕事を探してみようと思える元気が出ました”と感想をくださったり、“妻が生前に観た最後の一本が大沢さんの作品でした”とご主人から手紙をいただいたこともありました。そういう意味ではこれからも絶対に手は抜けないと思っていますし、作品の本数を抑えてでも丁寧に仕事をしたいと思っています」

キャリアを積んでも守りに入らずフルスロットルでアクセルを踏む

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「過去の成功や失敗が詰った30年を捨てて0歳にリセットして赤子のように生きられたら人生楽しいかもしれませんよね(笑)」

30歳を過ぎたあたりから、「ドラマの仕事はどこか自分の求めるゴールとは違うかもしれない」と、違和感を覚え始めた大沢さん。’16年に仕事を離れてふらりと渡米し、大学で語学を学ぶなどして過ごす間に映画『キングダム』の出演オファーが舞い込んだ。

「いろんなものを犠牲にしてでもいいものにしたい衝動に駆られる作品との出合いって、何年かに一度必ずあるんですよ。日本映画に危機感も抱いていたので『キングダム』で何か一石を投じるべくぜひやってみたい、と。当時は続編の予定もなく僕が演じる王騎(おうき)の出番は10分前後。それでも半年で体重を90キロまで増やして準備しました」

以降、通算6年ほど、20キロ前後の体重の増減を繰り返す自己管理をストイックに着実に積み重ね、シリーズ4作目にして集大成の『キングダム 大将軍の帰還』で見事、第48回日本アカデミー賞優秀助演男優賞に輝いた。“賞には特に固執しない主義”と笑う大沢さんの今後の展望とは。

「俳優を始めて31年目になるのですが、冗談半分で“30年をリセットして今年は0歳からスタートだ”と言ってるんです(笑)。後輩に背中を見せる立場の世代ではあるものの、経験が選択肢や可能性を狭めて冒険できなくなることもある。逆に若い世代の人からすごく学ばせてもらっているし、日々勉強しています」

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コート¥724,900・Tシャツ¥78,100(ザ・ロウ・ジャパン)その他/スタイリスト私物

キャリアをゼロフラットにして挑む大沢さんの軸は、観客ファーストの攻めの矜持。

「一方で、気持ちが変わってきたこともあるんですよ。今までなら絶対NGと距離をおいてきましたが、最近インスタグラムで“素の自分”もお見せしていたり(笑)」

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Precious.jp編集部 
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『Precious4月号』小学館、2025年
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取材・文 :
谷畑まゆみ