魂を揺さぶる大迫力のアクションと壮大なストーリーで観る者の記憶に刻まれる名作となった映画『キングダム 大将軍の帰還』で、重要なキャラクターである大将軍・王騎を演じた大沢たかおさん。撮影前の準備期間を含めて約8年、4作品にわたって取り組んできた『キングダム』シリーズの撮影ビハインドから伺いました。

大沢たかおさん
俳優
おおさわ・たかお/1968年生まれ、東京都出身。19歳からモデルとしてファッション誌やパリコレクションで活躍し、ドラマ『君といた夏』(94年/CX)で俳優に転身。以降ドラマ『JIN -仁-』(09年、11年/TBS)、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年/東宝)など数々の話題作に出演。4作にわたったシリーズ集大成の映画『キングダム 大将軍の帰還』(24年/東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)が第48回日本アカデミー賞優秀賞を10部門で受賞。3月12日には同作のBlu-ray+DVDセット(株式会社ハピネット・メディアマーケティング)も発売。大沢さんが俳優とプロデューサーを兼任するシリーズ続編映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(東宝)は9月26日より公開。

映画『キングダム』シリーズは僕自身も主演の山﨑賢人くんに大きく影響を受けた作品でした(大沢さん)

本誌3月号にてインタビュー掲載中! 俳優の大沢たかおさん
本誌3月号にてインタビュー掲載中! 俳優の大沢たかおさん

――振り返れば、2019年に初公開された映画『キングダム』では大沢さん演じる王騎の出演シーンは終盤のわずか10分でした。にもかかわらず“王騎が王騎すぎる!”と圧巻のビジュアルが大きな話題となりました。

「この作品の出演打診を受けた当時は、日本映画界が苦戦を続けていた時期でした。人気コミックの実写化がうまくいかなかった例もあり、当初は“難しいのではないか…”と若干の躊躇もありました。しかし万が一の成功があるのがエンターテインメントの世界です。挑戦を回避するのは面白くないし、挑戦なき作品にはお客さんも心を動かされません。そこで観てくださる方に何か驚きを与えられたらと思い、1年ほどかけて体づくりを行ってから撮影に臨んだ次第でした」

――当初からシリーズ化を視野に入れて始まったプロジェクトだったのでしょうか。

「いえ、実はそうではありませんでした。もし『キングダム』を上映して興業として成功できたら、目指す夢のゴールは原作コミックの第17巻、王騎の最期まで描ければ理想だけれど、そこまでいけるかどうかは確約できないという状況で出発したんです」

――撮影中、印象的だったエピソードについて教えてください。

「監督の佐藤信介さんは全て自身でプロデュースを手がける方。リハーサルというものはほとんどなく、“いきなり本番”スタイルなんですよ。現場に着いて軽く動きを確認したらもう撮影ですから、朝からスイッチを入れてエンジン全開でなければなりません。たとえば『キングダム 大将軍の帰還』で僕の王騎が“皆の背には、常にこの王騎がついてますよ!”と叫ぶクライマックスのシーンも、朝9時に現場に着いて9時5分くらいからすぐに撮影にとりかかったくらいなんです(笑)」

――そうだったんですね。『キングダム』は特に戦闘シーンから常に不思議な緊迫感が伝わってくる印象がありました。

「確かに不思議な緊迫感はあったかもしれませんね。特に主役の信(しん)を演じた山賢人くんは、本番で全力を出し尽くすべく常に調整を頑張っていました。現場でずっと信でい続けることは大変だったと思います。けれどそんな彼の想いや背中から僕たちが受けた影響もたくさんありました。

たとえば“信がこんなに頑張っているのだから、自分ももっと頑張らなくては”というような気持ちは俳優陣すべてがもっていたのではないかと思います。現場にも自然と“もっとさらにいいものを”と上を目指して高まる熱量が溢れていて、その驚異的な力に引っ張られるようにして1作目よりも2作目、2作目よりも3作目、4作目とパワーアップした作品ができあがったのだと感じています。

俳優の大沢たかおさん
本誌未公開カット/涼やかな眼差しに知的かつ大人の余裕が香る大沢さんですが、撮影中にふと見せてくれる笑顔に現場スタッフが思わず歓声を上げる瞬間も…!

――3作目の『キングダム 運命の炎』では泣けるシーンも多かったですね。

「杏さんを始め、おそらく撮影に新たに加わるみなさんが “この作品に参加するなら相当頑張らないと”と気持ちを入れて現場に臨んでくれたおかげだと思います。どのシーンもいつも現場が良い状態だったと聞いていますし、それは僕らがというよりも“キングダムというブランドのもつ力”のおかげだったのかもしれません。最初の1作目で手を抜かなかったからこそ、関わってくださるみなさん誰もが高い意欲を携えてくださり、ここまでたどりつけたのではないかと思っています」

『沈黙の艦隊』は“主人公の成長物語ではないところ”がポイントなんです(大沢さん)

――この秋には、大沢さんが俳優とプロデューサーを兼任された話題の映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』がシーズン2として公開されるそうですが。

「僕はもともとメッセージ性の高い作品に惹かれる傾向があるようなんです。たとえば『キングダム』の場合は主人公の信が困難を乗り越えて成長する姿や、夢を叶えることの難しさや素晴らしさがベースのテーマになるのですが、『沈黙の艦隊』シリーズの場合はそれとは全く違うベクトルのメッセージが込められているんです。

この20年ぐらいの間ずっと考えていることなのですが、たとえば今の日本のあり方とか世界の問題、我々が生きている日常生活の中でも果たしてこれでいいのかな?と感じることがみな誰しもあるはずなのに、何かモヤっとしたままになってしまっているじゃないですか。そんな話題を日頃からよくしているプロデューサーチームとの間に『沈黙の艦隊』の実写化の話がもちあがったんです。原作のもつメッセージ性に非常に共感するものがあり、我々が何かエンターテインメントでできることはないか、この作品を映像化できたら面白いのではないかと考えたのが始まりでした。

ちなみに、一般的に物語というものは主人公がさまざまな経験を経て成長する姿を描く構造が王道なんですよ。ところが『沈黙の艦隊』で僕が演じる海江田四郎は、主人公なのに内面に変化がみられない。海江田は米艦隊所属の世界最新鋭の原子力潜水艦〈シーバット(やまと)〉の艦長でありながら、原潜と乗組員76名を伴い航海中に逃走をしてしまうのですが、その海江田をめぐる周囲のほうが逆に成長していくという、物語としてはしごく特殊な構造になっているんです」

――確かにシーズン1では、海江田の“静から発する熱量の高さ”といいますか、自身は原潜から動かずして人心を掴んで動かす姿が印象的でした。

「具体的には、日本国の総理や官房長官などの海江田をとりまく人物たちが彼に影響を受けて思考や行動に変化が生まれてくるのですが、当初は果たしてこのスタイルが受け入れられるのか、そこが勝負どころだと捉えていました。

俳優の大沢たかおさん
本誌未公開カット/ジャケットをはおり直す瞬間を捉えた貴重なカット。鍛え上げられた上腕二頭筋…!

しかし、おかげさまでシーズン1のドラマシリーズが日本のAmazon Prime Videoオリジナル作品として2024年12月に歴代1位の国内視聴数を記録したそうなんです。苦労してチームで一丸となってつくりあげた作品が受け入れられたことはとてもうれしかったですし、こうしたトライは今後も続けなければいけないんだなとも思えました。

――シリーズ2は“北極海”が舞台となるようですが、見どころについてぜひ教えてください。

「シーズン1の上を目指すためにはどうすればいいのか、皆で懸命に話し合いました。既視感のない新たな世界観を求めて、魚雷戦を含む潜水艦バトルアクションを冷たく深い北の海で繰り広げます。海江田のパートは流氷が浮かぶ北極海での戦いになりますし、永田町のパートは総選挙という激動のフェーズに突入するので、きっと楽しんでいただけると思います」

――ハラハラドキドキしながら、最後はどんな世界にたどり着くのでしょうか。

「多分みなさんの想像もつかない世界になっています。僕も台本を読んでびっくりしました(笑)」


春を思わせるビビッドなファッションで撮影スタジオに軽やかに現れた大沢さん。白い歯が印象的な笑顔とともに、ざっくばらんに語り、さまざまなポーズで魅せてくれたフォトセッションの続きは、発売中のPrecious4月号本誌にてお楽しみください!

◾️Information◾️『沈黙の艦隊 北極海大海戦』9.26劇場公開!

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PHOTO :
長山一樹(S-14)
STYLIST :
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HAIR MAKE :
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EDIT&WRITING :
谷畑まゆみ