【目次】
【「時候の挨拶」とは?】
「ビジネス文書に時候の挨拶」はデキる大人には当たり前ですが、「時候の挨拶」を正しく理解し、適切に、効果的に使用できているでしょうか? 春は私生活や職場の環境が変わりやすい時期。ビジネスメールや、さまざまなお知らせ、ご挨拶に、気負いなくさらりと「時候の挨拶」を使えたら素敵です。
まずは意味を正しく理解しましょう。
■読み方
「じこうのあいさつ」です。
■意味
「時候」は四季折々の気候や、その時々の陽気のこと。「時候の挨拶」とは、季節感やその時々の気候から感じる様子を表す挨拶です。空模様や風土を表す言葉も「時候」として使えます。
■使い方
ビジネス文書では、「拝啓」「敬具」などの頭語に続く書き出しの言葉として使用します。
【4月下旬の「時候」を表す言葉】
ここで活躍するのが「二十四節気(にじゅうしせっき)」や「七十二候(しちじゅうにこう)」です。
二十四節気とは、一年を「春」「夏」「秋」「冬」の4つの季節に分けて、それをさらに6つずつに分けた暦のこと。太陽の黄道上の動きに基づいたもので、紀元前4世紀ごろに中国で発明され、日本には6世紀ごろに伝わりました。太陰太陽暦(旧暦)で季節を表すために用いられましたが、現代は“季節を表す美しい言葉”として挨拶文などに使われます。
七十二候は、二十四節気の各節気をさらに約5日ずつ3つに分けた暦。一年を72に分け、それぞれにその時期・気候に合った言葉で呼びます。
時候の挨拶は、その時々でしっくりくる言葉を選ぶことが重要。相手にすぐ見てもらえるような場合には七十二候を、少々タイムラグがありそうな場合は二十四節気を活用するといいでしょう。
二十四節気では4月は前半が「清明(せいめい)」、後半が「穀雨(こくう)」。4月下旬に限定すると、七十二候の「霜止出苗(しもやみてなえいずる)」が4月25日から29日、「牡丹華(ぼたんはなさく)」は30日から5月4日が当てはまります。
下記の言葉は4月下旬の時候の挨拶に活用できます。
・穀雨 ・葉桜 ・若草 ・麗春(れいしゅん) ・惜春(せきしゅん) ・霜止出苗 ・牡丹華 ・春うらら ・春たけなわ ・春光うららか ・若草萌える ・つくしが顔を出す ・つつじが咲きほこる季節
【ビジネスでそのまま使える4月下旬の時候の挨拶「例文」】
実際に4月下旬の挨拶に使える例文を見てみましょう。
■1:「穀雨の候、〇〇さまにおかれましては、ますますご隆昌のこととお喜び申し上げます」
■2:「若草萌える時季となりました。皆さまにおかれましては、一段とご壮健のこととお慶び申し上げます」
■3:「麗春の候、健やかにお過ごしのことと存じます。平素より格別のご高配をたまわり厚く御礼申し上げます」
■4:「若葉の緑がまぶしい季節となりましたが、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」
■5:「つつじの花が色鮮やかに咲き誇る季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか」
■6:「春もたけなわの今日この頃、皆様にはお変わりなくお過ごしのことと拝察いたします」
■7:「春光うららかな日が続いておりますが、貴社におかれましてはご隆盛のことと存じます」
■8:「桜の季節も過ぎ、新緑が目に鮮やかな季節となりました」
■9:霜止出苗の折、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
「~の候」は、「~の折」「~のみぎり」に置き換えることができます。
【ビジネスでそのまま使える4月下旬の結び文「例文」】
■1:「新しい年度の始まりにあたり、貴社のますますのご繁栄を心よりお祈りいたします」
■2:「春爛漫の時季ですが、季節の変わり目、体調を崩されませんよう十分ご自愛くださいませ」
■3:「若草萌えるすがすがしい日々に、貴殿のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます」
■4:「新年度も落ち着きはじめた頃かと存じます。貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます」
【「頭語」と「結語」の正しい組み合わせ】
時候の挨拶の前に「頭語」を用いると、ぐっとかしこまった印象に。付き合いが始まったばかりのビジネス相手などには積極的に活用したいものです。
「頭語」を使用した場合は「結語」で締めるのがお約束。シーンによって「頭語」を使い分け、それにふさわしい「結語」で結びましょう。
■お客さまや目上の方へ
・頭語:謹啓(きんけい)、粛啓、恭敬、謹んで申し上げます
・結語:謹言(きんげん)、敬白、敬具
■急用の場合
・頭語:急啓、急白(きゅうびゃく)、急呈(きゅうてい)、取り急ぎ申し上げます
・結語:草々
■面識のない相手に
・頭語:拝啓、拝呈、はじめてご連絡申し上げます
・結語:敬具、拝具、敬白
漢語調の「謹啓」や「拝啓」などと、口語調の「謹んで申し上げます」などは、相手によって使い分けるのが正解。なお、結語としての「かしこ」は多くの場面で使用可能ですが、女性的な言葉として認識されています。また、「前略」は親しい間柄に使用する頭語。ビジネス文章なら慎重に使用したいところです。
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時候の挨拶は必ずしも必要なわけではありませんが、相手を気遣う意味も含まれるため、活用したほうがよさそうです。短く簡潔に表現した漢語調はよりかしこまった印象に、やわらかい印象を与えるのは口語調。はっきりとした線引きはありませんが、相手との関係や立場、状況などを鑑みながら使い分けるのが“大人の語彙力”というものですね。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)/『和の暦手帳 二十四節気と七十二候を愉しむ』(だいわ文庫) :