【目次】
【「アイスクリームの日」とは?】
「アイスクリーム」が冷たいデザートの王様であることに、異論を唱える人はいないでしょう! 今回は、アイスクリームにまつわる歴史やおもしろい雑学などについて探ります。
■「いつ」「誰が」決めたの?
5月9日は「アイスクリームの日」です。1964年(昭和39)に、東京アイスクリーム協会(現・日本アイスクリーム協会)が制定しました。意外と古くからある記念日なのですよ!
■「目的」は?
「アイスクリームの日」が制定された目的はズバリ、アイスクリームの消費拡大です!
■日付の「由来」は
アイスクリームのシーズンインとなる、ゴールデンウィークの連休明けの5月9日に、東京アイスクリーム協会が記念事業を開催したことに由来します。
【ビジネス雑談に役立つ「アイスクリーム」の雑学】
■アイスクリームはいつからあるの?
電気を使った機械式冷温貯蔵庫(保冷庫)がなかった時代、食品を保存するために利用されていたのが天然の氷雪です。やがて人々は雪や氷を冬に貯蔵しておき、夏に食べるようになりました。――これがアイスクリームの始まりです。
当初、天然の氷雪は兵の士気を鼓舞し、肉体を元気づける健康食品として利用されていました。この氷や雪を「健康食品」としてではなく、純粋に嗜好品として広めたのが、「賽は投げられた」「ブルータス、お前もか」などの言葉で知られる古代ローマの英雄、ジュリアス・シーザーことガイウス・ユリウス・カエサル(BC100〜44)です。彼は若者をアペニン山脈に走らせ、そこから氷や雪を運ばせて、乳や蜜、ワインなどを混ぜて飲んでいたと伝えられています。
■アイスクリームの起源は中国という説も!
「アイスクリームは中国からシルクロードを通り、イタリアに伝わった」という説があります。それを持ち帰ったのがマルコ・ポーロ(1254〜1324)。1295年、マルコ・ポーロは父と叔父との25年間のアジア横断の旅を終え、ベネチアに帰還しますが、ジェノヴァとの間で戦争が起こり、捕らえられて投獄されます。獄中で口述したのが、有名な「東方見聞録」です。そのなかで、マルコ・ポーロは北京で乳を凍らせた「ミルクアイス」を味わい、その製法をヨーロッパに持ち帰ったと語ったそうです。これがベネチアで評判になり、氷菓の製法は北イタリア全土に広がったといわれています。
■「シャルバータ」から「シャーベット」へ
アラブ圏では、砂糖を使って氷や雪で冷やした甘い飲み物のことを「シャルバータ」と言います。
古代ヨーロッパにおいて、文明の中心は地中海です。なかでもシチリア島は東西文明の十字路で栄華を極めていましたが、9世紀前半から2世紀半にわたりサラセンに支配され、イスラム文化が定着します。この際にアラブの「シャルバータ」もシチリア島に伝えられ、その名も「ソルベット」(シャーベットのイタリア語)へと変わっていったのです。その後、シチリア島では多種多様の果物やナッツを使ったさまざまな香り高い「ソルベット」がつくられ、そのひとつが、日本でもプチブームを引き起こしたアイスのチーズケーキ「カッサータ」です。
■冷凍技術の発展が変革をもたらした!
16世紀の初め、イタリアで“ものを冷やす”技術が大きく発展します。パドヴァ大学教授であったマルク・アントニウス・ジマラが、水に硝石を入れるとその溶解熱により水の温度が下がることを発見しました。
当時のイタリアの富豪たちは、この方法をまずは食卓でワインなどを冷やすのに利用しました。次いで、氷に硝石を混ぜることにより冷やす時間をスピードアップさせる技術が開発され、ついに果汁などを凍らせることに成功。天然氷を利用しないシャーベットがつくられるようになり、バリエーションも一気に広がりました。
■禁酒法時代、お酒に代わり、アイスクリームがブームに!
アメリカとアイスクリームの関係を見ていきましょう。
アイスクリームがいつアメリカに渡ったのかについては、はっきりとわかっていませんが、1700年には「アイスクリーム」という言葉が記載された手紙が残っています。そして1811年には、第4代大統領ジェームズ・マジソンの夫人ドリーが、初めてホワイトハウスの晩餐会にアイスクリームを登場させています。
アイスクリームにホイップクリームなどをトッピングした「サンデー」というスイーツがあります。これは、1890年代初めに登場したといわれています。
このころ、アメリカのウィスコンシン州でチョコレートをかけたアイスクリームが販売されました。しかし、高価すぎてあまり売れませんでした。そこで日曜日に限定して売り出したところ大評判に。これが「サンデー」の誕生だといわれています。
さらに、1920年に始まるアメリカの禁酒法時代には、多くのビール会社がアイスクリーム産業に参入し、新しいアイスクリームが売り出され、新技術が開発されました。そのひとつが、チョコレートをコーティングしたアイスクリームバーです。1921年には最初のアイスクリーム包装機が開発され、1926年にはアイスキャンデーが誕生しました。
■最初は「あいすくりん」と呼ばれました!
日本人で最初にアイスクリームを食べたのは、江戸末期の1860(万延元)年に、日米修好通商条約批准のため渡米した徳川幕府一行というのが定説になっています。そして1869(明治2)年、日本で最初のアイスクリームが横浜・馬車道通りでつくられて以降、日本のアイスクリームの歴史が始まったといわれています。1883(明治16)年に建てられた鹿鳴館では、アイスクリームは欧米人を接待するときの不可欠なデザートとして珍重されていたそうです!
庶民(といっても裕福な層ですが)がアイスクリームを口にできるようになったのは、1875(明治8)年に東京・麹町の村上開新堂がアイスクリームを売り出し、風月堂、函館館もアイスクリームを店頭に並べるようになってから。また、東京・銀座の資生堂薬局(現在の資生堂)は、1902(明治35)年に、店内にアメリカのドラッグストアを参考にしたソーダファウンテン(現在の資生堂パーラー)を併設し、アイスクリームとアイスクリームソーダの販売を始めました。
■アイスクリームには賞味期限が記載されていないって知ってた?
アイスクリームの賞味期限については、消費者庁 食品表示基準の規定により、「アイスクリーム類にあっては、期限及びその保存方法を省略することができる」と定められています。実はアイスクリームは、温度管理がきちんとされていれば、細菌が増えることはなく、長期間保存しても品質変化は極めてわずかなのです。ただし、「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」では、「ご家庭では-18℃以下で保存してください」、または「要冷凍(-18℃以下保存)」などと容器に記載して、アイスクリームを保存するときの注意を喚起しています。
■アイスクリームが最も多く食べられている国はどこ?
アイスクリームのひとり当り消費量は、第1位のニュージーランド(20.1リットル)を筆頭に、オーストラリア、フィンランド、アメリカ、イタリア、ノルウェーと続きます。日本は6.7リットルで22位。オーストリアやベルギーなどと同程度の消費量となっています。アメリカが第1位でないのは、意外な気がしますね!
■「アイスクリームの日」のイベントは?
1964年に、5月9日を「アイスクリームデー」と決めた東京アイスクリーム協会(当時)は、都内の施設や病院などにアイスクリームを寄贈するほか、東京ヒルトン(現ヒルトン東京)でアイスクリームの祭典を開催しました。以来、「ミス・アイスクリームコンテスト」を主催したり(1981~1990年)、初代アイス大使に雛形あきこさんを迎えて「アイスクリームフェスタ」を開催したり(1997~1999年)、「ハッピーフォトコンテスト」を開催したり(2003~2005年)。さまざまなイベントが開催されてきました。昨年(2024年)は全国7都市で計1万個のアイスを無料配布する、「アイスクリームフェスタ2024」が開催されました。
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ゴールデンウィークが明けると、徐々に気温も上昇し、本格的なアイスクリームのシーズンを迎えますね。「私は季節にかかわらず、いただいてます!」という人も、アイスクリームについての雑学はご存じなかったのでは? 今から150年以上前の幕末に、アメリカに渡った幕府一行が食べたアイスクリームは、どんな味がしたのでしょうね。そんな歴史に思いを馳せつつ、「アイスクリームの日」にも、おいしくアイスをいただきましょう!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉プラス』(小学館) /一般社団法人 日本アイスクリーム協会(https://www.icecream.or.jp) :