J-POPの世界的躍進の要因をひもとくと?“ありのままの個性” で世界とつながる時代に

今や動画配信やSNSで楽曲は世界中に拡散され、アニメ作品と共にグローバルに躍進するJ-POP。「若い世代を中心にしたムーブメント」と素通りするのはもったいない! プレシャス世代にとっても懐かしさを感じるサウンドや日本語の美しさといったものが詰まった、今のJ-POPの魅力を改めて味わってみませんか。

Navigator:原 典子さん
音楽ジャーナリスト
クラシックとその周辺を中心に編集や執筆、コンサートの企画運営などを行う。坂本龍一監修の音楽全集『commmons:schola』の編集を’18年まで担当。’21年に音楽webメディア『FREUDE』を立ち上げた。

【今月のオススメ】YOASOBI

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YOASOBI

コンポーザーのAyase(手前)とボーカルのikura(奥)による音楽ユニット。小説を音楽化するというコンセプトで、『夜に駆ける』でデビュー以降、国内の各種配信チャートを席巻。『アイドル』ではビルボード・グローバルチャートで、非英語圏楽曲の1位を獲得。

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現在、PlayStation(R)30周年記念プロジェクトの楽曲『PLAYERS』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)が発売中。

【今月のオススメ】羊文学

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羊文学

塩塚モエカ(中央/ボーカル・ギター)、河西ゆりか(左/ベース)、フクダヒロア(右/ドラム)から成る3ピースのオルタナティブ・ロックバンド。初のUSツアーに続き、9月15日より過去最大のアジアツアー「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」が決定。現在、『未来地図2025』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)が好評配信中。

【今月のオススメ】Creepy Nuts

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Creepy Nuts

ラッパーのR-指定(左)とDJのDJ松永(右)によるヒップホップユニット。’24年にリリースした『Bling-Bang-Bang-Born』が大ヒットし、ビルボード・グローバルチャートで日本語ラップ曲として初となる24週連続1位を記録。10月からは初のアジアツアーも決定。現在、アルバム『LEGION』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)が好評発売中。


ここ数年、YOASOBIやCreepy NutsといったJ-POPアーティストの楽曲が世界各国のヒットチャートにランクインし、主要なフェスに出演して現地のファンを熱狂させている。ヒットの多くがアニメのテーマ曲であり、ストーリーに合わせて書き下ろされた楽曲が、日本語詞のまま海外で受け入れられているのが印象的。そのあたりが、宇多田ヒカルがUtada名義で全米デビューした20年前との違いであり、こうした先人の活躍こそがJ-POPの裾野を広げてきたとも言える。

なかでも注目したいのが羊文学。アニメ『平家物語』『呪術廻戦』『【推しの子】』のテーマ曲で広く知られるようになり、昨年のアジアツアーに続き、今年4月には初のアメリカツアーも。羊文学の魅力は、ギター&ヴォーカルの塩塚モエカが紡ぎ出す繊細な歌詞、そしてアートとポップの両面を兼ね備えた音楽性にある。心の機微をなぞるような言葉と、オルタナティブや’90〜’00年代の洋楽ロックに影響を受けた荒削りなギターサウンドとのギャップが不思議な浮遊感を生み出すのだ。とくに滅びゆくもののあはれを独特のタッチで描いたアニメ『平家物語』のオープニング曲『光るとき』には、そうした彼らの美質が凝縮されている。 

英語で歌い、海外仕様のメイクやビジュアルでJ-POPを「輸出」するのではなく、ありのままの個性でネットの波に乗り、軽やかに国境を超えていく——そんな彼らの姿は、日本のカルチャーが新たな形で世界とつながる可能性をも示している。

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WRITING :
原 典子
EDIT :
宮田典子
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