【目次】

「不幸中の幸い」とはどんな状態?「読み方」と「意味」

■読み方

「不幸中の幸い」は「ふこうちゅうのさいわい」と読みます。

■意味

「不幸な出来事のなかにあって、わずかに救いとなること」を指して「不幸中の幸い」と表現します。もちろん「不幸な出来事」は起こらないほうがよいのですが、実際に不幸なことが起きてしまった人に、「想定される最悪の状況」ではなく「よいこともあった」と慰めたり、「自分を納得させるため」に使われます。

■使い方の注意点

「不幸中の幸い」は「わずかではあるが、よいこともあった」とポジティブな気持ちを表現する慣用句ですが、何を「幸い」と感じるかという価値観は、人によって異なります。ある人にとってはゴミ同然のものが、別の人にとっては想い出の品だったりするのは、よくあることです。

例えば、財布を落とした人に「たいした金額が入ってなくてよかったね」と慰めたところ、「あの財布は亡くなった母からのプレゼントだったんだ」と言われたら、それは「幸い」ではなかったことになります。また、台風などの災害で、自宅や自分の身内、勤め先などに大きな被害がなかったとしても、ほかの地域で甚大な被害があった場合、誰かにとっては決して「幸い」ではありません。「台風が関東を逸れたのは不幸中の幸い」などと自身の感覚や思い込みであからさまに喜ぶのは避け、被害を受けた地域や人を慮った配慮ある発言をしたいものです。


【失礼にならないよう…職場での「使い方」がわかる「例文」】

会社内や仕事の現場など、職場での「不幸中の幸い」の使い方をみてみましょう。悪いこと(不幸)が起こった際に、いいことや運がよかったこと(幸い)を見つけて慰めたり、気持ちを落ち着かせる際にこんなふうに使います。

■1:「予想を上回る不作は痛手だが、予期せぬトラブルの対処で各々のスキルが生かせたことは不幸中の幸いといえるだろう」

■2:「原料の急高騰でアップデート版の制作は難航しそうだが、現行製品に影響が出ずにすんだのは不幸中の幸いだった」

■3:「時間を空けず新しい取引先が見つかったのは不幸中の幸いだ」

■4:「想定外のトラブルによって商品の納期が大幅に遅れたことは今後の課題として早急な改善が必至ですが、今回はお客さまが事情をご理解くださり、不幸中の幸いでした」

■5:「取引先との商談が流れましたが、その分、大きなリスクのある契約を避けられたのは不幸中の幸いとも言えます」

■6:「台風の影響でイベントが中止となりましたが、準備段階での損失が最小限だったのは不幸中の幸いです」

■7:「プロジェクトの一部が白紙になった件、早期に気付けたため、大きな損失を防げたのは不幸中の幸いでした」

■8:「今月は想定より売上が落ち込みましたが、他部署の収益が好調だったのは不幸中の幸いといえるでしょう」


同じ意味の「類語」「言い換え」表現

「不幸中の幸い」はどんな言葉に置き換えられるでしょう。いくつかご紹介します。

■「言い換え」表現

・せめてもの慰(なぐさ)め

辛いことや悲しいことなどが起こった際に、少しでも安らぎを得られるようにかけるフレーズです。「せめてもの慰めになれば幸いです」などと使います。

・唯一の救い

事態を好転させるための唯一の望みのこと。「不幸中の幸い」がたったひとつの場合には「唯一の救い」で言い換えられます。

会話のなかでは「最悪の事態は免れた」、「ギリギリのところで救われた」「ある意味では助かった」といった言い換えもできますね。


【「ことわざ」「四字熟語」】

■同じような状況で使える「ことわざ」

・怪我の功名(けがのこうみょう)

過失や災難と思われたことが、思いがけなく好結果をもたらすことを「怪我の功名」と言います。また、なにげなく行ったことで意図せず好結果を得られたときにも用いられます。慰めの意味合いとしては、「幸い転じて福となす」、「禍福はあざなえる縄のごとし」なども。ただし、これらも、深刻な事態のケースでは慰めたつもりが相手を傷つけてしまうことも…。十分な配慮をもって使用すべき言葉といえるでしょう。

・命あっての物種(いのちあってのものだね)
生きているからこそ、何ごともなし得ることから「命がなくなればおしまいだ」の意味になりますが、転じて「命があるんだから大丈夫」とポジティブに使うことも。「不幸中の幸い」には「不幸なことは起こったけれど、命が助かってよかった」というニュアンスを含んで使われることも多いので、同じような意味といえるでしょう。

■「四字熟語」にすると?

・九死一生(きゅうしいっしょう)
「九死」とは「死ぬ確率が9割」、「一生」は「生きる確率が1割」。合わせて「ほとんど死にそうな状態」を「九死一生」といいます。そんな状態からようやく助かった場合に「九死に一生を得た」というように使います。

・万死一生(ばんしいっしょう)
「死ぬ確率が1万なのに対し、生き残る可能性が1に過ぎない程、危険な状態」という意味。「九死一生」より厳しい状況を表します。「万死一生」だけではほぼ救いがありませんが、「万死一生からの巻き返し」や「万死一生かと思われたが状況が好転して助かった」というように使えば、「不幸中の幸い」と似たような意味になります。


【「反対語」「対義語」は?】

・泣きっ面に蜂(なきっつらにはち)

「苦痛の上に苦痛が重なること」を「泣きっ面に蜂」といい、「昇進試験には落ちるし、怪我はするし。泣きっ面に蜂だ」のように使います。

・弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ)

「困っている時に更に悪いことが起こること」「不運が重なること」をいいます。


【「英語」で言うと?】

「不幸中の幸い」に相当する英語表現は、[a blessing in disguise]です。[blessing]は「祝福、恵み」、[in disguise]で「見せかけの」。組み合わせることで「不幸中の幸い」という意味になります。

また、「もっと悪くなる可能性もあった」と示すことで間接的に「不幸中の幸い」を表現することも可能です。

・It could have been worse.(不幸中の幸いだ)

そのほか、it could have been worse(もっと悪くなっていたかもしれない=まだマシだった)」、「silver lining(暗雲の中の一筋の希望、救い)」といったワードも使えます。

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「不幸中の幸い」は、不幸な出来事が起こった際、想定される最悪の状況と比べれば「よいこともあった」と思えるときに使うポジティブなニュアンスの言葉。けれど、相手を慰めるために言ったつもりが、かえって傷つけてしまうケースもあります。「何を幸いと捉えるか」という価値観は人によって異なるもの。まずは相手に対する配慮を示すことが大切です。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『四字熟語ときあかし辞典』(研究社) /『角川類語新辞典』(角川書店) :