【俳優・田中 圭さんインタビュー|前編】100分・ワンシーンの挑戦は、予期せぬことの連続。それでも仕上がりは期待以上!の完全舞台裏 をよむ

僕と松山さんは芝居のアプローチが全然違う。だからこそ、楽しかった!

――『おい、太宰』は「完全ワンシーン・ワンカットドラマ」で、主演の田中 圭さんは100分間出ずっぱり、しゃべりっぱなし。そこが最大の見どころですが、同年代でキャリアもほぼ一緒の松山ケンイチさんとの共演も見逃せません。
田中「松山さんは、“不思議な人”というのが正直な感想です。同世代の仲間と、濃密な時間を過ごしたのは、本当に楽しくて。稽古から本番期間までずっと一緒にいて、お芝居のアプローチの仕方は僕とは違うとわかったし、それがあって、予想以上に僕自身のお芝居が広がった。そしてとにかく松山さんの太宰が面白い! この経験は、お互いのキャリアにいい影響を与えたと信じてます」
――おふたりとも現在40歳。田中さんにとって理想的な年の重ね方とは、どのようなものでしょうか。
田中「とにかくがむしゃらに、なんでもチャレンジして駆け抜けた30代。休みたいとか、休もうとかいうことさえも、考えてませんでした。それが、年齢を重ねると価値観が変わってきて、特に時間の大切さ、使い方を考えるようになる。自分が何を優先して、どうすれば、どういう状態になるかもわかってくる。そして、さすがにがむしゃらはしなくなる。
なのに、思うようにいかないことも増えてくるのが、40代。時間をかけても疲れは取れにくくなるし、それほど食べてないのに体重が増えていたり。頑張って筋トレしているのに、なかなか筋肉がつかないというのも、最近の悩みです」
40になっても相変わらずスウェットしか着ないし、待っても待ってもヒゲは生えてこないし

――それに対しては、どのように管理を?
田中「30代のころは、『俺だって40代になったら、ピシっとスーツ着たりして、髭生やしたりして』なんて渋い自分を想像していました。それが、40になっても相変わらずスウェットしか着ないし、待っても待ってもヒゲは生えてこないし。渋くかっこいいのはあきらめて、もう自分が楽しんで仕事ができればいい!というのが、最近の心境です。
それに、舞台の稽古や公演中は、決まった時間に起きて、会場に行って、規則正しい(というか規則どおりの)生活に自然となるので、自己管理ができない僕にとっては、都合がいいんです。トレーングの時間も取りやすいし、体のケアもできる。そして、おいしいごはんの時間もちゃんと取れる。

でも『おい、太宰』の撮影で伊豆に滞在中は、少し違いました。朝から撮影して、本番はきっかり100分で終わるから、ホテルに帰って、みんなでプレビューして、早めに1日が終わる。東京にいると、時間があると何かしらやることを見つけてしまうけど、ほかに何もすることがないから、温泉にいっぱい入って、ごろごろして。まったく“なにもしない”時間ができると、こんなにうれしいんだってわかりました。それに飽きたら、動画を見て過ごしたりして。
しかも、その日に働いた(撮影の)100分、ものすごく集中するから、『今日1日、よく頑張った!』という満足感もあって。あれは幸せな時間でしたね」
WOWOW・ドラマW 三谷幸喜『おい、太宰』

三谷幸喜:脚本と監督で、構想に約10年の月日をかけ、昨年秋にオールロケで撮影された。舞台となるのは、小室夫婦(健作<田中 圭>・美代子<宮澤エマ>)が迷いながらたどり着いたある海岸。そこは、かつて太宰治が心中未遂を起こした場所らしい。太宰ゆかりの地に興奮した健作は、暗い洞窟を進んでいく…。その先にいたのは、太宰治にそっくりな男(松山ケンイチ)! これはタイムスリップなのか、なんなのか。
100分間出ずっぱりの田中圭、太宰の恋人でおちゃめな矢部トミ子を演じた小池栄子、リアルな夫婦のやり取りが見事な宮澤エマ、1人で3役を演じた梶原善、津軽弁でユーモアたっぷりの松山ケンイチ。個性際立つ俳優陣にも注目!
WOWOWにて2025年6月29日午後10時放送・配信
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- 高木亜麗
- STYLIST :
- 荒木大輔
- HAIR MAKE :
- 岩根あやの
- WRITING :
- 南 ゆかり