『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。

前回に続き、6月17日(火)にいよいよ最終回を迎えるドラマ『人事の人見』(フジテレビ系・毎週火曜21:00~)に出演する鈴木保奈美さんと、スタイリスト犬走比佐乃さんの対談をお届けします。長年仕事のパートナーであるお二人が語る、懐かしいエピソードにも注目です!

犬走 比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)『Precious』本誌をはじめとする数々の女性誌、テレビ、広告など多彩な分野で活躍。女優のスタイリングも手がけ、「マダム犬走」の愛称で多くのファンをもつ。30年以上を誇るキャリアと卓越した審美眼でセレクト&スタイリングする自身の着こなしも注目されている。

程よい距離感が心地いい、かけがえのない「仕事仲間」

俳優の鈴木保奈美さんとスタイリストの犬走比佐乃さん
多くの現場を共にしてきた保奈美さんと犬走さん。対談は終始リラックスしたムードで。

──今回の『人事の人見』をはじめ、保奈美さんご出演のドラマや、『Precious』などの雑誌、舞台の衣装まで、多くのスタイリングを犬走さんが手がけていらっしゃいますが、保奈美さんがこうしてオファーされる最大の理由を教えてください。

鈴木保奈美さん(以下、鈴木):それはもう単純に、犬走さんのセンスが好きだから。犬走さんが選んできてくださる衣装もそうですし、普段、ご自身が着ていらっしゃる服の感じも好きです。

犬走比佐乃さん(以下、犬走):ありがとうございます(笑)。今回、こういう対談をするのは実は初めてで、私自身もいろいろ振り返ったりしたのですが、思えば二人で一緒に写真を撮ったことってあまりないですよね。旅行は何度かご一緒させていただいたことはあるけれど。

鈴木:やはり「仕事仲間」であって、「友達」というのとは違いますし。衣装を通しての役づくりへのアプローチに関しても、完全に一致しているというわけではないんです。でも私は、合いすぎないところがいいんじゃないかと思っていて。“犬走さん、こうくるか! 面白いな"というふうに予想外の提案をしてくれたり、時には“私はまったく気にならないけれど、犬走さん、そこ、気になるんだ!”ということもあったり。そういう相違点があるのが、私にとってとても新鮮なんです。

俳優の鈴木保奈美さん
第10話の収録の合間に行われた対談。「トム ブラウン」のコーディネートに、「カルティエ」の『バロン ブルー ドゥ カルティエ」のウォッチを手元に効かせて。

犬走:今回のドラマでのメインスタイルともいえる「トム ブラウン」に関しても、保奈美さん、最初はそういうリアクションでしたよね(笑)

鈴木:私は最初、もうちょっとブリティッシュなテイストをイメージしていたんです。極端にいえばイギリスの田舎のほうの女の子みたいな。でも犬走さんに「トム ブラウン」を提案していただいて、“そうか、シャツにネクタイして、なるほどね!」って。そんなふうにいつも私が最初にイメージしたことを何倍も面白い形でアレンジして返してくださるんです。

犬走:でもね、たまにちょっと暴走しちゃって、監督に“やりすぎです”と却下されて撃沈するときもありますよ(笑)。

ピンヒールを克服した保奈美さんの「女優魂」に感服!

──お二人の長いお付き合いのなかで、印象に残っているお仕事は何でしょうか?

鈴木:そんなわけで毎回楽しくお仕事させていただいているので、特に“この時!”というのは難しいなあ。

犬走:私は田村正和さん主演の『総理と呼ばないで』(1997年)というドラマで、保奈美さんが総理夫人を演じられたときですかね。

鈴木:「ヴィヴィアン・ウエストウッド」のスーツをよく使いましたよね? スーツでもコンサバなデザインではなく、ちょっとエキセントリックというか個性的なものにしたくて、そう犬走さんと相談して。

犬走:特に印象に残っているのが、三谷幸喜さんの脚本に「金魚みたいな服」という1行があったこと。

鈴木:ありました!「なんだよ、総理夫人が金魚みたいな服着やがって」みたいなセリフ(笑)。

犬走:そういう衣装に関するセリフが脚本に書いてあるのは珍しいからびっくりしたけれど、そこから想像を膨らませて考えるのが楽しかった記憶があります。でも、保奈美さんに対しても現場で感心することはよくあって、例えば『SUITS』(2018年)のとき、保奈美さんは高いピンヒールをカメラが回っていないところでもずっと履いていたでしょ? 本番以外ではヒールを脱がれる女優さんが多いけれど、保奈美さん、さすがだなって。

俳優の鈴木保奈美さんとスタイリストの犬走比佐乃さん
お互いの記憶を辿りながら、懐かしい思い出話しに花が咲く。

鈴木:ピンヒールの靴はだいぶ慣れてきましたね。それこそ『SUITS』の最初のころは腰痛になってしまったりもしましたが(笑)、“これはいかん!”と思ってそこからいろいろ気をつけましたっけ。

──どんなことを気をつけたのですか?

鈴木:普段の姿勢や歩き方。あとはピラティスに通ったりもしました。当初は腰痛の痛み止め飲みながらやっていましたが(笑)、徐々に克服していって、最後のほうではきっと佇まいも違ったと思いますよ。人間、鍛えればいくつになっても成長できるんですよ(笑)。

『人事の人見』最終回、気になる保奈美さんの衣装は!?

──さて、6月17日放送の『人事の人見』の最終回がいよいよ迫ってきたわけですが、ストーリーの見どころを教えてください。

鈴木:それが申し訳ないことに、この対談をしている今の時点では脚本ができあがっていないので何とも申し上げられないんです。でもきっと人事部のみんな、それぞれ何かがすごく変わるというわけではないけれど、ちょっとずつ、例えばコンプレックスを克服できたり、ほんの少し、半歩くらい成長できるのかなあ? でもそういう感じがいいよね、みたいな感じで終わるのかなと思います。漠然としていますけれど。

テレビ番組_1,ドラマ_1
『人事の人見』第10話より。(C)フジテレビ

犬走さん:保奈美さんの衣装についても、特に変わらず、今まで通りになると思います。実は私、ドラマでは、最終回のラストの出演シーンは白でいきたいという気持ちがあるんです。これは私のこだわりというか、ひとつの美学みたいなものなのですが。

『人事の人見』第10話より。(C)フジテレビ

鈴木さん:前クールで出演した『プライベートバンカー』のラストシーンも、白いスーツを用意してくださいましたね。

犬走さん:できないときもありますが、なるべくそうしたいんですよね。今回はどうでしょう? 難しいかな(笑)。

鈴木さん:衣装に関しても特に大きな変化はなさそうですよね。でも今日はこうして犬走さんとゆっくりお話しできて楽しかった! ぜひまたこういう機会をくださったら嬉しいです。今日はありがとうございました。


今回は、保奈美さんが出演するドラマ『人事の人見』が、6月17日に最終回を迎えるタイミングで実現したお二人の対談をお届けしました。今後も保奈美さんの活躍は、衣装と共に目が離せません!

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PHOTO :
高橋 葉
WRITING :
岡村佳代
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)