国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が毎年行うSDG’s達成度調査でフィンランド、スウェーデン、デンマークがトップ3の常連。サステイナブルな北欧のシンプルなライフスタイルがデザインとともに日本でも注目され受け入れられていることは、誰もが知るところではないでしょうか。

大阪・関西万博「北欧パビリオン」の内外観
「北欧パビリオン」の館内はウッディな造り。外観は、伝統的な納屋がモチーフに。

北欧パビリオンは「Nordic Circle」をコンセプトに北欧の5カ国が共同出展。伝統的な納屋をモチーフとした建物には日本の木材を使用し、外観の焦げ茶色は自然由来の材料を用いて着色し、木のぬくもりに包まれた館内は混雑する万博のなかでのほっとできる空間になっていました。

大阪・関西万博「北欧パビリオン」の内観
ライスペーパーを使用した写真などが飾られた館内。

展示ホールは5カ国の技術や、イノベーション、持続可能性において先駆けとなる取り組みを紹介。渦巻き状に吊り下げられた無数の写真などがプリントされた白い紙は、食用に適さなくなったお米を使ったライスペーパーが使われるなど、サステイナブルな考えを体現した居心地の優しさも北欧パビリオンらしい演出です。

大阪・関西万博「北欧パビリオン」のショップ
北欧発の多彩なアイテムがそろうショップ。右は、ニットブランド「GUDRUN&GUDRUN」のもの。

さらに3Fのレストラン、北欧デザインメーカーやキャラクターのグッズをそろえるショップも素通りはもったいない! 日本ではあまり出回らない北欧ニットブランド「GUDRUN&GUDRUN」のアイテムも棚に並んでいました。

ボルボのプレゼンテーションの様子
「ボルボ」によるプレゼンテーションの様子。

今回のプレゼンテーションには、ボルボのHEAD of APEC(中国を除くアジア・太平洋地域の代表)であるマーティン・パーソン氏が登壇。2040年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするというボルボの目標に向けたクルマの電動化や、生産から販売に至るCO2削減に対する取り組み、そしてボルボのそれは自動車業界において依然として先進的であることに加え、サステイナブルな取り組みはレジリエンス(回復力)を含む新たな成長を追求するものと提言しました。

ボルボ「EX30」
ボルボの最新コンパクト電気自動車SUV「EX30」。ボディカラーは、クラウドブルー。

それらの取り組みの一例としてデザイン性の高さでも注目を集める最新のコンパクト電気自動車SUV「EX30」を紹介。ガソリン車の同クラス(XC40など)と比べ、生涯CO2排出量が約25%低いこと、また最新のボルボであるEX30に使用される鋼やプラスチック、アルミ、バンパー(樹脂)などのリサイクル率の高さ、インテリアの再生可能/リサイクル素材の幅広い使用などを紹介しました。

近年のクルマはリサイクルパーツの採用が進んでいますが、目に見えるところや触れるところにそうしたマテリアルを使用する自動車メーカーはまだ多くはありません。

ボルボ「EX30」の内装
再生可能な素材やリサイクル素材を使用し、ディテールまで美しく仕上げられた「EX30」の内装イメージ。1年草の亜麻の繊維を使用した個性的な装飾。シートはリサイクル・ポリエステル70%とウール30%の混紡素材が使用されて、 モダンなテイストを演出。

ボルボは電気自動車のレザーフリー化をすすめており、ペットボトルなどのリサイクル素材とスウェーデンやフィンランドの持続可能な森林から採取された松の油などからつくられた「ノルディコ」を開発。本革のようなしなやかな素材の開発を実現させました。

ボルボの車の内装に用いられる素材サンプル
パーティクルデコレーションは、廃棄された塩ビ製の窓枠など廃プラスチックを粉砕して作られるため、ひとつとして同じ模様はないユニークな表情を持つ。“スカンジナビアの冬の星空にインスパイアされた模様”と言われている。

さらにEX30は“責任を持って生産された”ウール30%/リサイクル・ポリエステル70%を使用した「テイラード・ウールブレンド」シート生地や、ダッシュボードの装飾ボードに廃棄窓枠などを粉砕したペレットを使用した樹脂や一年草の亜麻織物、アップサイクルデニム織物などをモデルによって用いています。

そこで感心させられるのは、少しもサステイナブルを主張せずボルボの新しいデザインテイストを心地良く楽しめるところです。廃棄された漁網から再生されたフロアマットも言われなければリサイクル素材だとは気づかないでしょう。

マーティンさんが言う「サステイナブルな取り組みはレジリエンス(回復力)を含む新たな成長を追求するもの」を、デザインで理解できるのがボルボらしいと言えるのではないでしょうか。

ボルボのHEAD of APEC(アジア・太平洋地域の代表)であるマーティン・パーソン氏。
ボルボのHEAD of APEC(中国を除くアジア・太平洋地域の代表)であるマーティン・パーソン氏。

スウェーデン生まれのマーティンさんは本国(本社)はもちろん、中国やロシアでカスタマーサービス部門の責任者、日本やロシアで社長も務められたこともあり、さまざまな国のカーライフや文化も見て来られたのだとか。そんなマーティンさんから見た日本や諸外国のサステイナブルへの関心度をうかがいました。

「私たちの国では自然へのリスペクトが何よりも大きい。子供の頃からリサイクルの概念がごく身近なものでした。近年はエコのモノ、エコではないモノの区別、エコなものの方が値段は高いけれどそれにお金を払うマインドが育たなければグリーンビジネス文化も発展しません。欧州はだいぶ進んでいるように感じますが、日本をはじめアジア圏のサステイナブルへの感心や価値感は成長段階にあると感じています。例えばレザー内装=高級=高価なクルマという感覚も変わっていくでしょう。サステイナブルで質感の高いマテリアル=高機能に価値を見い出す感覚はファッションの世界ではすでに当たり前ではないでしょうか。クルマも同じです。日本でも身近なモノからサステイナブルな価値への理解が進むことを願っています。」


サステイナブルなクルマは地味でデザインや質感に妥協が必要でしょうか。静寂な電気自動車を走らせる車内で進むボルボのサステイナブル×スカンジナビアンデザインに、今後ますます注目が集まりそうです。

問い合わせ先

ボルボ・カー・ジャパン

TEL:0120-55-8500

EDIT&WRITING :
飯田裕子(モータージャーナリスト)