その来歴をルイ14世による“王立音楽アカデミー”の創設までさかのぼる、オペラ・バレエをはじめとした世界的舞台芸術の殿堂、パリ・オペラ座(Opéra de Paris)。

中でも今年150周年を迎えた劇場は、設計した建築家シャルル・ガルニエの名前から、ガルニエ宮(Palais Garnier)と呼ばれ、ネオ・バロック様式の壮麗な建築に、シャガールの天井画や観客を美しく彩るバルコニー、大理石の大階段など、歴史と伝統に彩られた空間です。ミュージカル『オペラ座の怪人』で登場する340個もの電球が輝くクリスタルの巨大なシャンデリアなど、バロック形式の華麗な内装は、この“ガルニエ宮”を舞台にしています。

コンサート_1
150周年を迎えるパリ・オペラ座ガルニエ宮。パリ国立オペラとして、モダンな作品の多いバスティーユと対をなし、伝統的な演目を主に担う。

ロレックスは、パリ国立オペラのエクスクルーシブタイムピースとして2014年からパートナーシップを結んでいます。ガルニエ宮の150周年を祝して、今回は世界から才能が集結。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がオペラ座の舞台で演奏するのは史上初のこと。また、メットガラでも知られるニューヨークメトロポリタン歌劇場の音楽監督を務めるヤニック・ネゼ=セガンが指揮をつとめました。

ピアノは、パッション溢れるステージングと確かなテクニックで知られるユジャ・ワン。

テノールにファン・ディエゴ・フローレス、バス・バリトンのサー・ブリン・ターフェル、リリックテノールとして知られるローランド・ビリャソン、ソプラノのソーニャ・ヨンチェヴァが登場。

コンサート_2
“ロレックス テスティモニー”の指揮者、ヤニック・ネゼ=セガン
コンサート_3
同、バリトン・バスのサー・ブリン・ターフェル
コンサート_4
同、テノールのファン・ディエゴ・フローレス
コンサート_5
“ロレックス テスティモニー”のソプラノのソーニャ・ヨンチェヴァ
コンサート_6
同、テノールのローランド・ビリャソン
コンサート_7
同、ピアニストのユジャ・ワン

ロレックスはスポーツや芸術などの様々な分野で卓越した才能に溢れ、情熱と向上心をもつ人々を“ロレックス テスティモニー”と称し、支援していますが、今回は芸術分野の“ロレックス テスティモニー”として世界で活躍するクラシック界の才能が集結。ロレックスの芸術支援への取り組み、パーペチュアル アート イニシアチヴを通しての長年にわたる支援のもとに、ロレックス ファミリー(テスティモニー、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、パリ国立オペラ)のスピリットを讃える機会となりました。

フランスのみならず、ヨーロッパ、そして世界から…セレブリティと芸術を愛する世界中の人々が、たった一夜の奇跡を体感するべくガラに参加。才能、伝統、芸術を讃えあいながら、ロレックスを通じた唯一無二のラグジュアリーな時を過ごしました。

■ガラコンサートはウィーン・フィルによるチャイコフスキーから

ベル・エポック期に、パリの社交と文化の中心地として華やかな歴史を築いてきた、壮麗なランドマークであるガルニエ宮。その曲目もガラコンサートに相応しいバリエーションに富んだ華やかなものに。主な曲目と当夜の模様をご紹介します。

・歌劇 エフゲイオネーギンより ポロネーズ/チャイコフスキー|Tchaikovsky, Pytr Il'ich: Eugene Onegin, Op. 24, Act III: Polonaise

コンサート_8,パリ_1,オペラ_1
演奏するウィーンフィルハーモニー管弦楽団。

記念すべきコンサートの1曲目は、プーシキン戯曲のチャイコフスキーのオペラ曲。この“ポロネーズ”は第3幕の冒頭に、舞踏会の始まりを告げる音楽として登場します。スタートを告げる金管楽器の華麗なファンファーレに、華やかな正装の観客たちのさざめき…。ウィーン・フィルの精緻な演奏に、世界的なオペラ巧者といえるヤニック・ネゼ=セガンが情熱を灯す瞬間…まさに観客も今夜の音楽の集いに誘われます。

・ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23/チャイコフスキー|Tchaikovsky, Pytr Il'ich : Concerto for piano and orchestra No. 1 b-moll Op.23

中国出身のピアニスト、ユジャ・ワンによるチャイコフスキーの代表的協奏曲。20歳にしてアルゲリッチの代演を務めグラミー賞も受賞した若き天才と、ウィーン・フィルによる競演は、華やかで情熱的なものに。

この日は、エレガントな赤のロングドレスに、代名詞ともいえるハイヒールで登場。圧倒的な技巧と正確な技術による、ダイナミックで生き生きとしたコンチェルトに、指揮棒を振るヤニック・ネゼ=セガンもよりアクティブに。オペラ座という空間に、フレッシュさと力強さで息吹を与える演奏でした。

コンサート_9,パリ_2
力強い精緻な演奏で魅了するユジャ・ワン。

コンサート翌日のランチでのインタビューでは、一転リラクシーなニットで現れたユジャ・ワン。「だって衣装のビジュアルは最初のインパクトでしょ。色も柄も形も選んで。まさに私にとってアーマーなの」と語るキュートな姿が対照的。そのダイナミックな演奏に反して、細くて可憐な素顔が印象に残ります。

・カルメン ハバネラ/ビゼー|Bizet, Georges : Habanera "Carmen" Act I

オペラ_2,パリ_3,コンサート_10
まさに魅惑的な“ソーニア・カルメン”。その“誘惑”に、指揮者のヤニックも応える。

ビゼーのオペラ「カルメン」の第1幕、奔放な女性カルメンが、セクシーに男性たちを誘惑する“恋は野の鳥”の名でも知られる名曲中の名曲。ソーニャ・ヨンチェヴァが魅惑的なヒロインを円熟のソプラノで歌いあげます。

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でも、指揮のヤニック・ネゼ=セガンと共演のソーニア。ウィーン・フィルのオーケストラと共におくる演奏会形式でありながら、確かな演技力で、そこはもうまるでスペイン・セビリアの情熱の世界。魔性の女カルメンとして投げた花を、指揮棒を振りながら“背面キャッチ”する指揮者・ヤニックのサプライズにも、客席は沸きます。気心の知れた“ロレックス テスティモニー”同士のやりとりに、思わず拍手が。

・ボレロ/ラベル|Joseph Maurice Ravel:Boléro

クライマックスに選曲されたのは、ラベルのボレロ。1928年に発表されたフランスの作曲家のこの曲は、初演はまさにこのパリ・オペラ座。曲間を通じて演奏されるスネアドラム(小太鼓)のリズムに、フルートを皮切りにクラリネット、ハープ、ファゴットから、オーボエ・ダモーレ、ホルン、トランペットに、サキソフォーンのジャジーな揺れから、可愛らしいチェレスタにピッコロ…と、単一のメロディが代わる代わる重層的に重なる有名曲です。

初演の地で、体感するボレロ…赤とゴールドに彩られた豪奢なバルコニー形式の客席とマルク・シャガールの天井絵。ガルニエ宮と共に、リズムとメロディーのうねりが一体となってクライマックスを迎えました。

パリ_4,コンサート_11,オペラ_3
ヤニック・ネゼ=セガンとリズムを刻むウィーン・フィル。

コンサートの前に行われた、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団事務局長のミヒャエル・ブラーデラー氏とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団楽団長のダニエル・フロシャウアー氏の対談では、曲目についての話題に。

今回初めて、ウィーン・フィルが、パリ・オペラ座の舞台に歴史上はじめて上がる…ということで、それぞれの伝統の違いを改めて感じたそう。「例えば楽器ひとつとっても、オーボエにはウィーン式とフランス式があり、それぞれが途絶えさせないように楽曲に応じて歴史をつないでいかないといけません。美しい音色は平和とコミュニケーションのために必要なのです」とダニエル氏は語ります。

ラベルのボレロは、オーボエ奏者にとっては、イングリッシュ・ホルン、オーボエ・ダモーレ、オーボエと、3種にも。ロレックスの元に集った一夜限りのコラボレーションの裏側には、各国の文化と歴史に敬意を示しつつ、再発見の場があったようです。

■ガラディナーはオペラ座の舞台上という贅沢な演出が

コンサート_12,オペラ_4,パリ_5

ガラコンサートの後には、ホワイエで出演者との語らいの場も。シャンパーニュが供される会場に佇むのは、設計者シャルル・ガルニエの胸像です。一夜限りのコンサートのために、劇場は花でデコレーションされ、ブラックタイとロングドレスの観客を彩ります。

オペラ_6,コンサート_14,パリ_7

コンサートの前に、パリ・オペラ座の総監督、アレクサンダー・ニーフ氏が“サプライズを楽しみに”と話していたように、観客はホワイエから細い通路を通ってディナー会場へ。乾杯と共に、するすると開く幕はなんと舞台の緞帳。そう、ここはオペラ座の舞台の上。数々の名ダンサーが踊り、ディーバが歌ったこの場所。オペラ座の舞台は客席から見やすいように傾斜が。入団したてのダンサーの苦労はかくや…と感じつつ、ハイヒールの夜は更けていきます。
一夜限りの演出に、ニーフ氏は「オペラ座では毎回オペラやバレエが上演されますが、二度と同じものはありません。様々なことが起こります。とても壊れやすいもので残らないもの。それが舞台芸術であり、それがラグジュアリーというものではないでしょうか」とインタビューでコメントを寄せています。

 

ロレックスのサポートの元、芸術を保存することの重要性、そしてテスティモニーたちのアートへのたゆみない努力と研鑽、さらにはウィーン・フィルとパリ・オペラ座の唯一無二の関係性が生んだ時間と芸術を通じ、まさにプレシャスかつ贅沢な一夜となりました。

問い合わせ先

ロレックス

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
PHOTO :
Rolex
EDIT&WRITING :
能 聡子(Precious.jp)