連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、韓国・ソウルの人気観光地、北村(プクチョン)韓屋村(ハノクマウル)に位置する、韓国伝統酒の魅力を国内外に発信する「伝統酒ギャラリー」で館長を務めるナム・ソンヒさんにインタビュー!

「韓国伝統酒の魅力を発信して、若い世代へ文化をつなぎたい」と、国内外への広報活動だけでなく、若手醸造家への支援にも取り組んでいるナム・ソンヒさんに、取り組みや今後の展望についてお話しをうかがいました。

ナム・ソンヒさん
伝統酒ギャラリー 館長
(Nam Seon Hee)韓国伝統飲食研究所で学び、’03年より韓国の伝統的な家屋である「韓屋」が並ぶ人気観光地・北村韓屋村の北村文化センターで、伝統酒の講師として活動を開始する。’08年に北村伝統酒文化研究院を設立し、現在にいたるまで研究と普及に尽力。’18〜’19年と、’21年より、伝統酒ギャラリーの館長を務めている。

【Seoul】韓国伝統酒の魅力を発信。若い世代へ文化をつなぎたい

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「伝統酒ギャラリー」館長のナム・ソンヒさん

’25年に開館10周年を迎える伝統酒ギャラリーは、まだあまり知られていない韓国伝統酒の魅力を国内外に発信する重要な拠点だ。ここは、単なるお酒の展示施設ではない。つくり手と飲み手、そして行政とを結ぶ「ハブ」として、韓国の酒文化と産業の両面を包括的に支える役割を担っている。3年前、ソウルの人気観光地である北村(プクチョン)韓屋村(ハノクマウル)への移転オープンを果たしてからは、伝統的な街並みに溶け込みながら、観光客からも注目を集める。

館長のソンヒさんは、趣味で酒づくりを始めてから、伝統酒の講師となり、現在のギャラリー運営にいたるまで、25年以上にわたり韓国の酒文化と共に歩んできた。

「韓国では、三国時代から朝鮮末期にかけて、多様な伝統酒が発展してきました。マッコリとして知られる濁酒、焼酎、清酒、薬酒など、用途や製法に応じた種類が存在します。もともと、この国では各家庭で酒をつくって常備する文化があり、『家醸酒(カヤンジュ)』という言葉もあるんですよ。韓国の人にとって、お酒は、祭祀にも、日常にも、そして人とのつながりにも欠かせない存在なのです」

国内外への広報活動に加え、在韓外国人向け試飲会、マッコリづくり体験、韓国料理とのペアリング提案と、多岐にわたる活動に尽力するソンヒさん。特に、若手醸造家への支援には熱心で、「最近の若い醸造家たちは、本当におもしろい酒をつくっている」と目を輝かせる。免許制度の緩和と国産原料使用の義務化が、自由で創造的な酒づくりを後押ししているのだという。豊かな伝統は新たな息吹を取り込み、次世代へと受け継がれている。

「バジルなどハーブを加えたり、焙煎した米でこれまでにない香ばしい風味を生み出したりと、斬新な発想に驚かされるばかり」

お気に入りの伝統酒は?と尋ねると、「どれも大切すぎて選べません」と微笑む。「それぞれに土地の味があり、物語がある。それを丁寧に伝えていくのが私の務めです」

◇ソンヒさんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
本当は瞑想したり本を読んだりしたいのですが、実際は目をこすって顔を洗って、朝ごはんをつくることから一日が始まります。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「本当に頑張ったね」「よくやったね」
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
静かなカフェで、好みのコーヒーを飲みながら音楽を聴いてのんびり過ごしたい。でも、じっとしていられなくて、結局何かを始めてしまうかも。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
やっぱり仕事。私にとって仕事は仕事ではなく、ただただ楽しい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
それまでの知識や資料を若い世代と共有できる場をつくっていきたい。
Q. 自分を動物に例えると?
猿。好奇心旺盛なところが似ている。

PHOTO :
Zhi Xiang
EDIT&WRITING :
剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)
取材 :
大瀬留美子