ルノワールとセザンヌ、どう違う? どう似てる?2大巨匠の名画を比べて楽しむ世界巡回展が日本へ

印象派の巨匠・ルノワールと、近代絵画の父と呼ばれるセザンヌ。それぞれどんなイメージですか? そしてどちらが好きですか? 質の高いコレクションでふたりの作品を比較してみましょう。

展覧会の見どころについて、美術ライターの浦島茂世さんにご案内いただきました。

Navigator:浦島茂世さん
美術ライター
All About「美術館」ガイド。古今東西のアートに幅広い見識をもつ。最新刊は街角アートの歴史と魅力を紹介した『パブリックアート入門 タダで観られるけど、タダならぬアートの世界』(イースト・プレス)。

【今月のオススメ】オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより『ルノワール×セザンヌ——モダンを拓いた2人の巨匠』

ルノワールの代表作《ピアノの前の少女たち》やセザンヌの代表作《画家の息子の肖像》などの名画が来日。印象派・ポスト印象派の代名詞的存在であるふたりの巨匠による肖像画、静物画、風景画、さらにふたりから影響を受けたピカソを加えた52点の作品を展示中。

セザンヌはルノワールより2歳年長だが、画家としてのキャリアのスタートはルノワールのほうが早い。セザンヌが世の中に認められるようになった頃、ルノワールがその展示を見て非常に喜んだというエピソードも残っている。家族ぐるみの付き合いがあった。

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ポール・セザンヌ 《セザンヌ夫人の肖像》1885-1895年 油彩・カンヴァス オランジュリー美術館 (C)GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ルノワールとセザンヌ。それぞれ単独でも人を呼べる巨匠ふたりに同時にフォーカスするという、ありそうでなかった展覧会です。しかも、パリのオランジュリー美術館が企画・監修、オルセー美術館の協力での世界巡回展。これは観ないわけにはいきません。 

展示は、肖像、風景、裸婦、静物と、同じテーマで、それぞれの作品が並ぶ構成です。これまでもさまざまな機会でふたりの作品は観てきましたが、比べてみていちばん興味深かったのは、人物の描き方の違い。セザンヌ、全然人間に興味がありません(笑)。その人を素敵に見せてあげようとか、内面を描きだそうとか、そういう気持ちがまったくなく、ただ、形としてとらえている。例えば上の《セザンヌ夫人の肖像》。そう、これ奥さんなんです。でもむっつりと無表情で、なぜか椅子にも斜めに座っている。一方、自身の次男と、妻の従姉妹を描いたルノワール《ガブリエルとジャン》は、かわいい! 優しそう! 家族への深い愛が感じられます。セザンヌも奥さんを愛していなかったわけではないと思うのですが、それよりもパーツでとらえることに気持ちがいってしまっている。その対比が、すごくおもしろい。 

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ピエール=オーギュスト・ルノワール《ガブリエルとジャン》1895-1896年頃 油彩・カンヴァスオランジュリー美術館 (C)GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

実際、ルノワールは社交的で、セザンヌは人付き合いをあまり好まないタイプだったとか。ところがこのふたり、実は仲よしで、アトリエを訪ねてきたルノワールが体調を崩したときには、セザンヌとその母が献身的に看病したエピソードも。共にリスペクトしていたのでしょうか。作品も人物像も楽しめる満足度の高い展覧会です。(談)


◇Information:オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより『ルノワール×セザンヌ——モダンを拓いた2人の巨匠』

ミラノ、マルティニ(スイス)、香港を経て来日中の世界巡回展。三菱一号館美術館が日本唯一の会場となる。一部を除き、ほぼすべての作品の写真撮影が可能。

展覧会公式サイトhttps://mimt.jp/ex/renoir-cezanne/
開催期間:開催中〜2025年9月7日(日)まで
会場:三菱一号館美術館

問い合わせ先

三菱一号館美術館

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

EDIT :
剣持亜弥、喜多容子(Precious)
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