年収を上げるために、がむしゃらに働いている。それなのに、希望が叶わない。だからこそ、さらに体を酷使して仕事に打ち込む……。そんな堂々巡りに、参っていませんか? 実はその頑張り方、間違っているのかもしれません。

年収アップに重要なのは「伝達力の有無」。そう説くのがスピーチコンサルタント・鴨頭嘉人さん。鴨頭さんは、2013年に「話し方の学校」を設立し、現在、4,000人以上に伝達力の大切さを伝えている、スピーチのスペシャリスト。そんな鴨頭さんに、「年収が上がる話し方」について教えていただきました。

■なぜ「伝達力を高めること」が年収アップにつながるのか

伝達力はビジネスや人間関係で成功するために必要なスキル
伝達力はビジネスや人間関係で成功するために必要なスキル

出世街道への出遅れ、売上減少、従業員のモチベーション不足、交渉力の貧困さ……。ビジネスにおけるこういった問題の原因について、鴨頭さんは「すべてスピーチ力にある」と指摘します。

スピーチ力、すなわち伝達力が低いということは、そのまま「仕事ができない人」という評価につながります。それは、伝達力には、その人の全体評価に影響するという特徴があるから。自分の想いや考え方、扱っているサービスの魅力を他人に伝えるには、言葉を使うしか方法がありません。だからこそ、その言葉を伝える能力が低いということが、その人自身の評価に結びついてしまうのです。

とはいえ、自分の想いが100%伝わる状況は、めったにありません。そこは他人同士、受け取り方の違いもあれば、ちょっとしたニュアンスによって、言葉の意味がズレてしまうことだってあるでしょう。

そこで重要なのが、コミュニケーションを図るということ。一方的にこちらの意見を押し付けるのではなく、相手の話にも耳を傾ける。それが鴨頭さんのいう”伝達力の向上”なのです。

「ビジネス現場でのコミュニケーションにおいて、最も大切なことは相手の求めていることを汲み取り、その期待に応えられることです。ついつい自分の主張を通すことに注力しがちですが、ビジネスの世界では“目的を達成すること”を、最優先にすべき。そのために、相手の求めていることを想像しながら話す必要があります。

上司への報告の場面なら『上司はどんな情報を求めているか?』を想像し、簡潔に上司の時間をできるだけ奪わない配慮をしながら話す。営業マンなら『お客様がこの商品を手にしたとき、どんなメリットを感じるだろうか?』を想像し、商品説明をするのではなく、商品を手に入れた後の未来をありありと表現するプレゼンを行う。

このように、相手の求めていることを先に満たし、結果として自分が手に入れたい目的を達成するスピーチを心がけてほしいですね」(鴨頭さん)

ビジネスや人間関係で成功するためには、伝達力が必要不可欠。この伝達力を高めることで、相手の求めることを満たし続けることができます。すると評価が上がり、おのずと年収は上がっていくのです。

■伝達力は「パブリックスピーキング」によって高められる

あまり知られていないパブリックスピーキングの学び方
あまり知られていないパブリックスピーキングの学び方

伝達力の大切さについて理解したら、次は実践的にそれを高める方法について学びましょう。そこで参考になるのが「パブリックスピーキング」です。

「パブリックスピーキング」とは、簡単にいうと「人前で話すこと」。日本ではまだ馴染みの薄い言葉ですが、アメリカでは学校の授業にも取り入れられているそう。このパブリックスピーキングについてしっかり理解することができれば、職場や取引先で、自分の考えを正確に伝えることができるようになります。

パブリックスピーキングは「コンテンツ」と「デリバリー」という、2つの要素を持っています。コンテンツとは、話の内容のこと。それに対し、デリバリーとは表現のこと。声の大きさや話し方、身振り手振りなども含まれます。

そして、これらを支えるのが「マインド」。これは考え方や心の矢印のことです。

パブリックスピーキングを学ぶ上では、マインド、コンテンツ、デリバリーの順番で勉強していくことが肝心だといわれています。では、どうしてこのマインドが、コンテンツやデリバリーよりも重要なのでしょうか。それは、コミュニケーションの失敗の原因が、ほぼマインド=考え方にあるからです。

■「マインド」と「コンテンツ」がかけ離れていると伝わらない

伝達力向上の鍵はマインド・コンテンツ・デリバリー
伝達力向上の鍵はマインド・コンテンツ・デリバリー

とげのある言い方をして、相手を怒らせてしまった。はっきり断言できなくて、誤解を生んでしまった。こういったとき、人はデリバリー=表現に問題があったと考えがちです。

けれども、大事なのは表現ではなく、考え方。逆にいえば、相手のことをきちんと考えられていれば、多少表現が下手でも、真意は伝わるのです。鴨頭さんが話し方について生徒さんに指導するときも、絶対にマインドだけは譲らないそう。

すぐにでも伝達力を高めたい人は、会話の際に「自分が相手のことを考えているか、思いやっているのか」を意識するのが近道かもしれませんね。

「自分の思いが伝わらないとき、ほとんどの場合はマインドとコンテンツがかけ離れているのが原因です。言い換えるとマインドとは、日常的にいつも考えていること。だから、人前で話す時だけ『いい話をしよう!』といくら力んでも、かえって聞き手には『本当はそんなこと、思ってないでしょ……』と受け止めてもらえないものです。

つまり、人前で話すときは普段から考えていることを、何も足さず、何も引かず、そのまま言葉にする、それが一番伝わるスピーチなのです。

すぐにはできないかもしれませんが、だからこそ普段から、自分の考えを言葉にするというトレーニングを、面倒くさがらずに繰り返すことが必要。

自分の考え方を明確にしたり、思いを正確に言葉にしたりする行為は、非常にエネルギーが必要で、一言でいえば面倒くさい行為なんです。だからサボりたくなりますが、それを日常的にトレーニングすることでしか、ビジネスの現場で成果を上げる道はありません」(鴨頭さん)

よくある話し方のアドバイスでは、コンテンツやデリバリーを重視されがち。しかし、本当に重要なのはマインド。まずマインドを固めるために、普段から考えていることを、そのまま言葉にすることを習慣にしていくことが大切なんですね。

普段、あまり意識することがない伝達力。ほんの少し改善するだけでも、仕事や人間関係における問題が劇的に解決されるかもしれません。ぜひ参考にしてみましょう。

鴨頭嘉人さん
スピーチコンサルタント
(かもがしら・よしひと)19歳で日本マクドナルド株式会社にアルバイトとして入社し、30歳で店長に昇進。32歳のときにはマクドナルド3,300店舗中、お客様満足度・従業員満足度・セールス伸び率全国1位を達成。2010年に独立、2013年には「話し方の学校」を設立。現在、4,000名以上に「目的が達成できる伝達力」について指導している。
『あなたのスピーチレベルがあなたの年収を決めている』鴨頭嘉人・著 サンクチュアリ出版刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
五十嵐 大
TAGS: