東京・世田谷の静嘉堂文庫(せいかどうぶんこ)美術館。閑静な住宅街にあるこの美術館では、三菱第二代社長・岩﨑彌之助、第四代社長・小彌太父子のコレクションを収蔵しています。日本・東洋古美術の名品がそろう同館には、重要文化財が84件、国宝はなんと7件も! なかでも、偶然の産物により生まれた美しい模様が特徴の茶碗『曜変天目』は、現存する3つのうちのひとつという大変貴重なもの。美術史家の山下裕二さんによる解説とともに、知る人ぞ知る美術館・静嘉堂文庫美術館の魅力をご紹介していきます。

都会の森の中にたたずむ、日本・東洋古美術の粋を集めた美術館

美術館は、和漢の古典籍を保存する静嘉堂文庫の新館として開館。奥には広大な庭園が広がっており、開館時間中は自由に散策できる。

三菱第二代社長・岩﨑彌之助(やのすけ)、第四代社長・小彌太(こやた)父子のコレクションを収蔵する静嘉堂文庫美術館は、世田谷の閑静な住宅街、都内とは思えないうっそうとした森の中にあります。まずは、このロケーションが素晴らしい。最寄り駅から歩いて20分ほど、バスなら「静嘉堂文庫」バス停を降りてすぐのところに正門があるのですが、そこからさらに美術館までは木立の間を通って、なだらかな坂を5分ほど上っていきます。途中には小さな川もあり、木立の切れ目からは東京の町並みも。自然と、心が静かになります。

重要文化財 『羅漢図』牧谿(もっけい)筆/絹本墨画 一幅 南宋時代(13世紀)※今年度は展示予定なし

そうして、いざ向き合う静嘉堂コレクションは、国宝7件、重要文化財84件を含む東洋古美術の名品ぞろい。例えば、重要文化財の『羅漢図』は、中国南宋絵画の最高レベルの作品。羅漢の存在感が印象的なこちらの作品は、6,500件に及ぶ静嘉堂コレクションのなかでも『曜変天目』と並ぶ双璧だと思います。

『色絵牡丹文水注(いろえぼたんもんすいちゅう)』/鍋島藩窯(17〜18世紀)

また、多彩な酒器の世界を紹介する開催中の展覧会「酒器の美に酔う」で気になるのが、この鍋島焼の水注。8代将軍徳川吉宗が特注した可能性もあるとか。贅沢な特別仕様の一点ものです。

国宝『曜変天目』は名品中の名品!

 国宝 『曜変天目』/建窯 南宋時代(12〜13世紀)

なかでも、国宝『曜変天目(ようへんてんもく)』は、ぜひ一度観ていただきたい名品中の名品。現存するのは世界に3碗という曜変天目のなかでも、特に華やかな逸品です。淀藩主・稲葉家の所蔵だったことから通称『稲葉天目』と呼ばれています。

ご紹介した、鍋島焼の水注や曜変天目が展示される展覧会「酒器の美に酔う」は、6月17日(日)まで開催中。国宝を間近に目にすることができる希少な機会を、ぜひお見逃しなく!

山下裕二さん
美術史家、明治学院大学教授
(やました ゆうじ)『週刊ニッポンの国宝100』(小学館)の監修も務める。
 

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EDIT&WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
RECONSTRUCT :
難波寛彦